日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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29 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 森田 千春, 伊沢 久夫, 添川 正夫
    1967 年 29 巻 4 号 p. 171-175_2
    発行日: 1967/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    近来,諸外国においてバラワクチニア・サブグループに属するボックス・ウイルスが牛から分離報告されているが我国においては未だその例を見ない。本報告は,昭和41年夏,千葉県において牛からバラワクチニア・サブグループに属すると思われる1株のウイルスを分離したので,その分離状況,ならびに同定成績について記載するものである。ウイルスの分離千葉県の1農場において導入して間もない1頭の牛の乳頭および乳房に多数の赤色の発痘を認め,その陣旧なものはすてに痴皮を形成していた.この痴皮および膿庖を採取,処理し牛皐丸単層培養細胞に接種したところ,21日目に細胞変性を認めた.この細胞変性は細胞の円形化とフォーカス形成を主徴とし,しだいに細胞シート全域に拡がった。また感染細胞原形質内には好酸性の封入体を認めた.ウイルスの同定分離ウイルスは発育鶏卵の漿尿膜上にポックを形成せず,またワクチニア・ウイルスの免疫血清で中和されなかったが,熱不活化したワクチニア・ウイルスを再活性化した.本ウイルスは平均孔径220mμのMi111porcfilterを通過したが,100mμのものは通過しなかった.ネガティブ染色試料の電子顕微鏡観察により,ウイルス粒子の大きさは129~133×243~287mμと推定され,またウィルスの構造はバラワクチニア・サブグループに属する既知ウイルスの記載と極めて良く一致した.以上の成績から今回の分離ウイルスをバラワクチニア・ウイルスと同定した.
  • 大越 伸, 村田 義彦
    1967 年 29 巻 4 号 p. 177-184_1
    発行日: 1967/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    わが国の猫に寄生した鉤虫には, AnclostomatubaeformeとA.caninumの2種があることを,すでに報告した.今回は, この両種鉤虫について,各種の培養温度下における虫卵の解化率およびRhabditirormlarvaからFilarirormlarvaへの発育率の変動を検索した.A.lubaeformeの虫卵を37°Cから15°Cまでの間の各種温度下で培養した場合に,20°Cでは,1日目から解化が始まり,その後の4日間に供試虫卵の99%が岬化したが,300Cでは95%,37・Cでは69%が解化したに過ぎなかった.また解化したRhabditiformIarvaは,20°Cの培養温度下で85%がFilarirormlarvaに発育をとげたが,30°Cでは68%,37°Cでは41%が発育したのみで,残余のlarvaは死滅した.次にA-caninumの虫卵を,前記と同一の方法で培養した場合には,30°Cの温度下で,1日目から3日間に,供試虫卵の94%が解化したが,200Cでは86%,15°Cでは55%しか解化しなかった.また解化したRhabditiformlarvaは,30°Cの培養温度下で,97%がFilarirormlarvaに発育したが,温度の低下に件って死滅するlarvaの数が増加し,200Cでは71%,15°Cでは11%が発育したに過ぎなかった.以上のように,A.tubaeformeの虫卵貯化とlarva発育の両条件に最適の培養温度は200Cであった.A.Ca7llnumの場合では,30°Cを最適温度と認めた.人体に寄生する各種鉤虫卵の培養に関する従来の文献によれば,A.duodenaleとNecatoramericanusを比較試験した結果,前者の低温度下で抵抗力が強く,後者は高温度下で抵抗力が強いことが報告されている.然し同一のGcnusに属するA.tubaefor7neとA.caninumの虫卵1arvaの最適培養温度の間に,10°Cの差が認められたことは興味あることである.
  • 大越 伸, 薄井 万平
    1967 年 29 巻 4 号 p. 185-194_2
    発行日: 1967/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ToxascarisleoninaLINSTOW,1902は肉食獣の腸内に寄生する回虫の一種で,諸外国では犬猫に広く分布している.わが国では,動物園のライオン,虎および輸入犬の感染が報告されたのみで,一般には余り知られていなかった.内国産大への寄生は,1930年ごろに東京でまれに認められたと記載されている.その後最近まで,その姿は全く認められなかった.また猫への寄生は,従来わが国で,全然報告がなかった.著者らは.かねてから東京における犬猫について,T.leonina感染状況の詳細な調査を行なっていた.その結果,内国産犬では,1958年以降にその寄生を認め,また猫については,1965年に初めて本虫の寄生を発見した.その後,次第に犬猫へ蔓延の徴があることを知り得た.わが国の犬猫に寄生する回虫には,Toxocaracanis,ToxocaracatiおよびT.leoninaの3種がある.それらの外形は,たがいに酷似していて,区別が容易でない.そこで,3種回虫の虫体および虫卵の形態について,まずT.leoninaとの相違点を明らかにした.次いで東京大学付属家畜病院に来診した犬猫を材料として,前記の各種回虫に関する感染実態を,9年間にわたって追究した.1.内国産大においては,1958年にT.leoninaの寄生を認めるに至り,今日までの9年間の感染率は1.27%(総検査数3140頭,陽性40頭)であった.なお,この期間中のT.cqnisの感染率は9.62%であった.犬へのT.leonina感染源は,.主として輸入犬である・ど推定された.年令別に!よ,幼犬にも,成犬にも,同様に感染を認めた.2.猫については,1965年に初めてT.leoninaの感染を認めた.その後今日までの2年間における感染率は5.0%(総検査数100頭,陽性5頭)であった.猫への感染源は,いずれも輸入猫か,または明らかに,それからの感染が確認されたものであって,T.leonina感染犬との関係は,全く認められなかった.なお,同じ調査期間中における猫のT.cati感染率は17.0%であった.
  • 大越 伸, 長谷川 篤彦
    1967 年 29 巻 4 号 p. 195-199_2
    発行日: 1967/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    MicrosPorumg労seumに起因するRingwormについては,これまで多くの報告が行なわれてきた.本菌による感染は人・犬・馬・猫などに認められている.しかし猫におけるM.茨増seumによるRing一wormの報告例は極めて少ない.STOCKDALEはこれまでM.gypseumと同定された菌は3種の完全菌,すなわちNannizziaincurvata,N.g))pSeaおよびN.fulvaに分類されることを報告した.しかしながらRingworm病変部から分離したM.g)pSeumの菌株については,多くの場合に,完全菌の検討まで行なわれていない.著者らは先般から東大附属家畜病院の患畜についてRingwormの検索を行なってきた.今回東京都内で飼育の猫3例のRingwormからM.gyPseumを検出することができた.これらの猫のRingworm病変部から分離したM.gyl)seumの菌株を,単独に,または3種のM.gyP一seum(N.incurvata,N.gyl)seaおよびN.fulva)のそれぞれ相対応する2種の単一子嚢胞子菌株とおのおの交叉して,土壌培養を行なった.その結果,今回の猫のRingwormから分離した菌株はNannizziaincurvataSTOCKDALE,1961およびNannizziagyPsea(NANNIZZI)STOCKDALE,1963であると同定された.なお同一猫のRingwormからN.incurvataの交叉によってClcistothcciaを形成する相対応する2種の菌株を分離することができたことは興味あることである.
  • 藺守 龍雄
    1967 年 29 巻 4 号 p. 201-208
    発行日: 1967/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    StcroidHormoncの分泌率を推定する一手段として,静脈内に注入した微量の外性ホルモンが血中から消失する率を測定する方法,すなわちBiologicalHalfLirC測定法が,近時唱えられ出した.筆者は, 4-14C-Progcsteroncの20~25μCi(125~171Pgに相当)をウシの静脈内に注入し,注射後47~80分の間に8~9回の静脈血(各115ml)を採取,約半量の血漿を分離してから,これをエーテルで抽出,アルミナ・カラムで部分的精製を行なったのち,Tri-Carb11quidscintillationspcctrometerにかけて,血中からの放射能量の消失率を測定し,放射性Progcstcroncのb1010gicalhalrlifc(172T.O.time)を算出した.その結果,ウシでは172T.O.timeはきわめて短いことがわかった.従ってProgcstcronc分泌は盛んであることが推定される.とくに黄体開花期と妊娠中のもの(初,中期)では,biologicalhalf11rcの値に有意差はみられなかった.注射されたProgcstcroncの血中からの消失は,二相性を示した.これは主として20β-OH-Progcstcroncをきわめて早く代謝物として作り出す結果と考える.その第1相における1/2T.O.timcは,黄体開花期のもの3例(No.18の第17日目は退行期にはいろうとする時期と考えられた)と妊娠の2例(第65と154日目)では,2.2~3.4分というきわめて短い値を示した.第2相に至って,これらは10.0~27.4分となった.黄体退行期の一例(No.18の第19日目)では,第1相で11.1分,第2相では22.4分を示した.ウシの静脈血中Progesteroncの量自体は低い.と見なされてはいるが,分泌率および代謝速度については,実験値は分泌が盛んで代謝率も速いことを示したものといえる.
  • 井上 勇
    1967 年 29 巻 4 号 p. 209-215_3
    発行日: 1967/08/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1964年の9月に,埼玉県幸手町にあるあひる飼育場で,あひるのコクシジウム症に遭遇した.-1)分離オーシストは,無色,卵円形で,micropyleを有し,大きさは17~21(m18,62±1.44)×13~15(m13.21±0.47)μである.25゜C,3口で胞子の形成が認められた.また,再生口数は4日であった.2)人工感染を行ない, Hcidcnhainironhcma-toxy11n染色を施して発育環の観察を行なった.3時間後には,放出されたsporozoitcが,また12時間後には,宿主細胞に侵入した像がみられた.24時間後には,若幼のschizontが,36時間後には,ほぼ完成された楕円形で,中に弓状大型のmcrozoitcをいれているschizontが認められた.48時間後には,残体を中心に,小型のmcrozoitcが放射状に付着している,ことなるschizontが出現した.60時間後には.第2代のschizontが認められ,72時間後にはmacrogamctocytcが,96時間後にはmicro一gamctocytcが,それぞれ観察された.3)寄生部位は,十二指腸より盲腸におよんでいた.ことに小腸遊離部の中央部より下部にわたり,濃厚感染していた.また.大部分は粘膜上皮細胞に寄生していたが, 一部は粘膜固有層にも認められた.4)鵞鳥と鶏の雛とに人工感染を試みたが,感染力を有していなかった.5)分離オーシストを既知のオーシストと比較したが,いずれにも属さない新しい種類であった.そこでEimeriasaitamaeと命名した.
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