抄録
肉の血清学的鑑別には沈降反応が常用され,抗血清・血清,抗ヘモグロビン・血清,抗生肉浸出液・血清が使用されている.本方法により,一応,生肉は鑑別し得るが,動物分類学上近縁のものの間には交叉反応が示されることがある.一方,加工肉,特に缶詰のごとく,高度に加熱された肉を沈降反応により鑑別することは不可能とされている.著者らは,生肉および加工肉の血清学的鑑別方法を確立する目的で,馬,牛,緬羊,山羊,豚,犬,猫,および鯨の生肉浸出液,および強加熱肉浸出液(煮沸1時間後オートクレープ(110°C)1時間),ならびに非動化血清,煮沸血清(30分)および強加熱血清(前記と同様)の抗原性について検討した.I)生肉浸出液,非動化血清,煮沸血清,強加熱血清は抗原性を有していたが,強加熱肉浸出液は抗原性を示さなかった.2)生肉浸出液と血清との間に共通抗原が存在することが認められた.しかし生肉浸出液とヘモグロビンの血清学的関係は証明されなかった.3)生肉浸出液に対して最も種属特異性を示した免疫血清は抗煮沸血清・血清(カリミョーパン処理)であった.4)生抗原に対する免疫血清は生抗原のみと反応し,強加熱血清に対するものは加熱血清とのみ反応した.5)生肉の混合比が25%)以上の場合は本方法で検出可能であった.しかし,16%以下の場合は,検出可能な場合と不可能な場合とがあることが認められた.