日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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豚痘封入体に関する電子顕微鏡学的所見
中松 正雄五藤 精知森田 迪夫
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1968 年 30 巻 5 号 p. 296-297_3

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抄録
豚痘感染と見なされる豚皮膚細胞内に,2種の封入体が見いだされた.一つはマトリックス型封入体で,すてに豚痘において述べられているものである.中等度の電子密度をもつ顆粒状ないし微細な線維性の領域と,発育型および成熟型ウイルス粒子より形成されている.他の一つは古典的封入体で,電子密度の高い無構造・均質性の物質よりなる限界明瞭な種々の大きさの領域より形成されている.後者は,豚痘においては報告されていないが,これは牛痘またはエクトロメリア痘に見られる古典的封入体に一致するものである.これら封入体は,光学顕微鏡的に,豚痘皮膚に認められる封入体に一致する.後者の封入体は,ヘマトキシリンおよびエオジン染色において,強く好放性を呈する均質性封入体に該当する.前者封入体は,弱好酸性または好中性で原形質との境界不明瞭な不整形封入体に合致するものである.これら均質性封入体は,ワクシニア・ウイルスによってはまれにしか形成されないといわれている.この事から,豚痘において均質性封入体が見いだされる場合には,それは豚固有のボックス・ウイルスによって引き起こされた疾患と考えてよいであろう.
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