抄録
腹部から尾部に至る交感神経幹およびこれに伴なう主な自律神経節,神経叢の形態,配置などを5頭の牛を用いて肉眼解剖学的にしらべた報告である.結果は2葉の模式図に要約されているが,なお次のように捕捉される.大内臓神経は最後位胸椎と第1腰椎の間で交感神経幹を離れ,小内臓神経は第1,第2腰椎の高さから起こる.腰および仙骨神経節の配置は分節的であるが,時に癒合する傾向がある.腰椎の前位5ケの部分には,斜走する交通技があるが,これらの出方には変異が多い.腰内臓神経は頭側と尾側の2群に分れる.脹部および骨盤部の節間枝の一部は分離し,複数の神経束から成る.仙骨部の各分節の大部分には普通横枝がみられる.腹部および骨盤部の交通技も複数の神経束から成る場合が多い.下下腹神経叢は主に第3,第4仙椎部からの線維によるが,更に仙骨の第2あるいは第5の何れか一方,またはこの両者からの線維がこれに加わる場合がある.不対尾神経節の位置には変異が多《一定しない.