日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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豚の伝染性萎縮性鼻炎の病原学的研究 : III. 野外例における萎縮性鼻炎豚の B.bronchiseptica に対する抗体と菌分離および病変の関係について
康 炳奎輿水 馨尾形 学
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1971 年 33 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

前報において, 豚の Bordetella 感染による萎縮性鼻炎(AR)が, 凝集反応によって特異的に診断されることを明らかにした. 本報においては, この方法を用い, 野外感染豚の抗体調査を行ない, 一部の豚については, 菌分離および病変との関連を検討した. その結果を要約すると, 次のとおりである. 1. 凝集反応を実施した総計400頭の豚のうち, 218頭(54.5%)が B. bronchiseptica に対する抗体価陽性(20倍以上)を示した. このうち89頭の養豚場飼育豚を対象として, 凝集抗体の分布調査を行なったところ, 37頭(41.6%)が20~2560倍の抗体価を示した. その感染の疫学的様相は, 養豚場または豚舎が感染の単位として存在していることがうかがわれた. 2. 野外例における AR 豚鼻腔内の B. bronchiseptica は, 感染初期(生後1~3カ月)において検出率が高いが, 感染後期(6カ月以降)は検出率が低下した. 一方, 本菌に対する血中凝集抗体価は, 生後3カ月以降に初めて陽転する傾向が認められた. 3. 菌分離, 病変の有無と凝集抗体との関係は, 豚の月令, 病気の消長などにより著しく影響を受け, 必ずしも相関した成積は得られなかった. しかしながら, 菌分離, 病変および凝集抗体を同時に検査した135頭の豚で, 血清反応が陽性であった93頭のうち, 85頭(91.4%)が病変陽性であり, また病変が認められた110頭のうち, 85頭(77.3%)が凝集抗体陽性であった. このことから, わが国の豚の AR に, B. bronchiseptica が重要な役割をもって関与していることが, 血清学的にも確かめられた. このようにして, AR の診断に凝集反応が利用されることが明らかにされた.

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