日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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鶏の消化管のアセチルコリンによる収縮反応性に及ぼすコクシジウム感染の影響 : 1. Eimeria tenella および E. acervulina 感染
及川 弘川口 陽資
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1974 年 36 巻 5 号 p. 433-440

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抄録
コクシジウムに感染したヒナの摘出消化管を用い, Magnus 法によるアセチルコリン反応性を検討した. すなわち, Eimeria tenella および E. acervulina をそれぞれ経口的に一回感染させ, 臨床症状の極期と回復期について, 消化管各部位における原虫の寄生状態との関連において, 消化管の収縮反応を調べた. E. tenella 感染により, 宿主の盲腸の収縮反応は著しく低下し, 一部では弛緩する例もみられた. これは原虫が, 盲腸の粘膜筋板に至る粘膜下組織の層に寄生することと深い関係があるものと考えられる. しかし, 収縮反応は寄生部位でない小腸下部でも低下し, 回復期の小腸上部では逆に亢進した. E. acervulina 感染では, 原虫は十二指腸から小腸中部にかけて, 絨毛上皮細胞内に寄生する. 小腸上部の収縮反応は, 症状の極期には亢進し, 回復期には低下する傾向にあった. 感染部位でない盲腸や直腸では影響がみられなかったが, 小腸下部では低下した. このように, 消化管各部位の収縮反応性は, 原虫の寄生によって直接的な影響を受けた. また, E. tenella 感染と E. acervulina 感染では, 影響の受けかたに相違がみられた. 症状の軽重(感染量の多少)と収縮反応との関連性は, E. tenella 感染の回復期の小腸以外では認められなかった. 両種の寄生部位でない小腸下部で, 収縮反応が著しく低下したこと, E. tenella 感染により, その寄生部位でない小腸上部にも影響が認められたことは, 感染の影響が決して局部的でなく, 消化管全体の運動能にも及ぶことを示唆しているものと考えられる.
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