1970年, 健康なシチメンチョウ105羽中6羽の血液から, アヒル胎児線維芽細胞を用いて, ヘルペス型ウイルスを分離した. これらのウイルスでは, マレック病ウイルスと異なり, 細胞遊離ウイルスを容易に得ることができた. 特にO1株において, その傾向は明瞭であった. 感染培養細胞には, プラークが認められ, プラークは, 多数の多核巨細胞より成っていた. 感染細胞のヘマトキシリン・エオシン染色において, ヘルペス型の核内封入体の形成が認められた. この封入体は, Feulgen 反応およびアクリジン・オレンジ染色により, DNA 陽性を示し,
3H-thymidine のオートラジオグラフィーにおいて, その中にヘルペス型配列の銀粒子が認められた. また DNA 合成阻害剤に対し感受性を示した. さらに感染細胞の超薄切片を電子顕微鏡で観察すると, ヘルペス型ウイルスの構造をもつ粒子が, 核内に多数認められた. これら二重膜粒子の直径は約140mμ, カプシドの直径は, 約100mμであった. しかし, マレック病ウイルス Biken C2 株感染細胞の場合と異なり, カプシドの内部が十字紋様を呈するものが多数認められた. また, 感染材料を燐タングステン酸によりネガティブ染色して, 電子顕微鏡で観察すると, 中空のカプソメア(推定162個)より成るヘルペス型カプシド構造が認められた. これらのウイルスは, 分離当初よリアヒルおよびウズラ胎児線維芽細胞上におけるプラーク形成が明瞭であり, 培養には多核巨細胞も出現した. アヒル, ウズラおよびニワトリ胎児線維芽細胞は, このウイルスに対して, ほぼ同一の感受性を示した. 螢光抗体法により, マレック病ウイルスと交差反応を呈したが, 同一反応ではなかった. 以上の研究により, 本ウイルスは, マレック病ウイルスと異なり, Witter らの報告したシチメンチョウ・ヘルペスウイルスと性格がほぼ一致するものと考えられる. 本研究の要旨は, 第71回(1971年4月)および第72回(1971年10月)日本獣医学会において報告した. 終わりに臨み, 電子顕微鏡による研究について, 御指導御協力下さった当研究室新居志郎助教授, 大阪医科大学内藤継也氏, ならびに本研究に際し, 種々御協力を賜わった兵庫県経済連藤田重夫部長, 小馬栄猛氏, 岸田満須夫氏, および柏原農協永井明男氏に深謝する.
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