日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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ウワバインの腸管平滑筋における収縮反応の動物種差について
清水 一政黒須 幸雄中条 真二郎浦川 紀元
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1979 年 41 巻 2 号 p. 139-149

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抄録
強心配糖体の各種動物に対する毒性, あるいはNa, K-ATPase標本の活性の抑制には著明な動物種差があることが知られている. 本実験では, 強心配糖体の1つであるウワバインを用いて各種動物(イヌ, ネコ, ウサギ, モルモット, ラット, ハタネズミ, マウス, ニワトリ, ハト, カエル, ガマ)の回腸の収縮反応の種差についてマグヌス法によって検討した. 一部の動物の回腸はウワバインにより持続性に収縮し, 他のものは収縮後弛緩した. 回腸標本による各種動物のウワバイン感受性は, 濃度作用曲線より求めた50%有効濃度(ED50)から4つのグループに分けられた. すなわち, 感受性の高い動物: カエル(9.0×10-8M), ネコ(9.3×10-8M), ハト(3.5×10-7), ニワトリ (5.1×10-7), イヌ(ED50なし), 中等度の感受性の動物: ウサギ(1.1×10-6M), ハタネズミ(2.3×10-6M), モルモット(2.7×l0-6M), 感受性の低い動物: マウス(1.7×10-5M), ラット(9.7×10-5M), ほとんど感受性のない動物: ガマ(1×10-3M以上), の4群であった. また各種動物のアセチルコリン収縮のED50は5×10-9Mから5×10-8Mの範囲にあり, 感受性には種差がなかった. 以上の成績より, ウワバインは各種動物の回腸を収縮させ, その収縮反応のED50はNa, K-ATPase標本の50%抑制濃度と同じ序列に従った動物種差が見られた. これらの結果はウワバインがelectrogenic Na pump (Na, K-ATPase)の抑制を介する脱分極により収縮が発生するという考えを支持するものと思われる.
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© 社団法人 日本獣医学会
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