1979 年 41 巻 3 号 p. 235-243
H地方のT村では牛白血病がしばしば同定されている. この村に飼育される望診上健康な黒毛和種178頭について, 血清学的検査と血液学的検査を3~6ケ月間隔で平行して経時的に実施した. その結果, 血清学的陽性率は, 免疫拡散法(ID)と補体結合法との総合判定で60.7%であった. IDの陽性率は, 放牧前より放牧終了後に有意に高率であった. 黒毛和種の基準による血液学的検査の結果, 193頭は3群に分類され, 陰性(Group 1) 83.4%, 疑陽性(Group 2) 13.0%および持続的リンパ球増多症(Group 3) 3.6%であった. 1回又は3回の検査による血液学的陽性率は, 血清学的陽性率より一般にかなり低率であった. しかし, 経時的な検査で血液学的に分類された3群間の血清学的陽性率には, 低い相関が認められた. ID陽転牛のリンパ球数は, それらが陰性の時より有意に多かった. 26ケ月の観察期間において牛白血病の発病率は, 血清学的陽性牛では3.0%, また, 血液学的陽性牛Group 3からの発病率は28.6%であった.