日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
41 巻, 3 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 吉原 忍, 鈴木 恭, 須藤 恒二, 藤田 潯吉
    1979 年 41 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    肝蛭の成虫から抽出した粗抗原とそれで免疫した家兎血清を用い, ゲル内沈降反応を実施したところ, 2本の沈降線が形成された. 2つの抗原物質(沈降線)のそれぞれに対するmono-specific antiseraを作製するために, 平板寒天より個々に沈降線を切り出し家兎を免疫した. この技法により作製された免疫血清は, 平板寒天内で粗抗原と反応したとき, 元来の沈降線に一致した1本の沈降線を形成した. これらのmono-specific antiseraを用い間接蛍光抗体法をおこなった. その結果, 2つの抗原物質のうちの1つは, 主に肝蛭成虫の角皮下筋層と角皮下細胞に, また他の1つは排泄管に局在していることが明らかとなった.
  • 石原 勝也, 橋本 晃, 小沼 操, 見上 彪, 大谷 健
    1979 年 41 巻 3 号 p. 235-243
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    H地方のT村では牛白血病がしばしば同定されている. この村に飼育される望診上健康な黒毛和種178頭について, 血清学的検査と血液学的検査を3~6ケ月間隔で平行して経時的に実施した. その結果, 血清学的陽性率は, 免疫拡散法(ID)と補体結合法との総合判定で60.7%であった. IDの陽性率は, 放牧前より放牧終了後に有意に高率であった. 黒毛和種の基準による血液学的検査の結果, 193頭は3群に分類され, 陰性(Group 1) 83.4%, 疑陽性(Group 2) 13.0%および持続的リンパ球増多症(Group 3) 3.6%であった. 1回又は3回の検査による血液学的陽性率は, 血清学的陽性率より一般にかなり低率であった. しかし, 経時的な検査で血液学的に分類された3群間の血清学的陽性率には, 低い相関が認められた. ID陽転牛のリンパ球数は, それらが陰性の時より有意に多かった. 26ケ月の観察期間において牛白血病の発病率は, 血清学的陽性牛では3.0%, また, 血液学的陽性牛Group 3からの発病率は28.6%であった.
  • 吉村 堅太郎, 合場 広子, 平山 中巳, 吉田 俊秀
    1979 年 41 巻 3 号 p. 245-257,259
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    8系統(ACI/N, Buffalo, Lewis, NIG III, Tokyo, Wistar-King-A, Wistar-King-S, Wistar/Mishima)の近交系ラットに広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)を感染させ, 10週後に攻撃感染を行ない, 攻撃感染防御能, ならびにレアギン抗体と間接血球凝集(IHA)抗体の産生能を比較した. その結果, BuffaloとACI/Nでは他の系統より攻撃感染防御能が低く, これに対してTokyoとNIG IIIでは防御能の高いことがわかった. 残りの4系統も多かれ少かれ獲得免疫を産生したが, その程度は前述の4系統の中間的なものであった. 本虫の感染に対するレアギン抗体の産生パターンには系統間で著しい差異が認められた. すなわち, Tokyoはレアギン抗体のhigh responderであり, ACI/Nはlow responderであった. 一方, IHA抗体の産生パターンは系統間で酷似していた. しかし, TokyoやNIG IIIでは一般に他の系統よりIHA抗体価が高かった. ACI/NとNIG IIIについて肺の病変を比較したところ, ACI/Nでは肺の虫卵結節周囲に線維化がほとんど認められず, このことはNIC IIIとの著しい相違点であった. 以上の成績は, 広東住血線虫感染に対するラットの攻撃感染防御能やレアギン抗体産生能は遺伝的支配を受けていることを示唆するものと思われる.
  • 石黒 直隆, 佐藤 儀平, 竹内 孔二, 中山 明
    1979 年 41 巻 3 号 p. 261-272
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1養豚場内のサルモネラの分布及びその伝播様式について, 2年間観察を行ってきた. 分離サルモネラの血清型とネズミチフス菌の生物型別の面から, 新たな汚染源の導入及び交差感染に関して, 疫学的検討も加えた. 観察期間中, 豚糞便材料及び環境材料の総検索数3,374中745(22.0%)試料からサルモネラが分離された. 分離サルモネラの血清型は, 以下のとおりである. S.typhimurium 582株, S. anatum 153株, S. senftenberg 65株, S. livingstone 7株およびS. infantis 6株であった. 5血清型の内, S. typhimuriumは, 2年間の観察中, 終始分離された. これらネズミチフス菌は, Duguidの生物型別の一次分類とBrandisの型別法によりそれぞれ, 3と19, それに1と2の2生物型に大別された. さらにこれら2種の生物型は, Duguidの二次分類により, 11種の亜生物型に型別された. 異なった生物型の出現や生物型の変化は, 外部からの汚染源の導入を強く示唆した. 糞便, 汚水及び出荷豚の直腸糞便試料等よりサルモネラの分離された事は, 本養豚場でのサルモネラの濃厚汚染を意味している. 糞便由来317株と環境材料由来163株について, 薬剤感受性試験を行った結果, 5血清型の内, S. typhimuriumの50%以上の株と, S. anatum, S. senftenbergそれぞれ1株ずつが, TC, SM, SA 3剤に耐性であった. しかし, 本研究においては, 上記薬剤耐性型は疫学マーカーとしての有効性はみとめられなかった.
  • 清水 高正, 沼野 和彦, 内田 幸治
    1979 年 41 巻 3 号 p. 273-282
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1968年から1977年にかけて, 13目40種に属する850羽の家禽・愛玩鳥・野鳥を対象に, マイコプラズマの生態学的研究を行なった. 同時に死ごもり卵2,848例, 鶏の病的材料275例及び正常精液285例についてもマイコプラズマの検査を実施した. その結果, キジ目及びハト目に属する鳥類が高率にマイコプラズマを保有することが判明した. 総計440株の血清学的同定を行ない, 宿主域を調べたところ, M. gallisepticumは例外的に2羽のスズメから分離された他は, M. synoviae同様すべて鶏由来であった. M. gallinarumの宿主域は既知の鳥類マイコプラズマのいずれよりも広く, またM. inersや血清群C, D, I-J-K-N-Q-Rなどは, キジ目に属する家禽や野鳥に限定して検出された. 先に新種として提案したM. columbinumとM. columboraleは, ハトからのみ分離され, 逆にハト由来株93株中91株はこれらのいずれかに同定されたことから, これら2種マイコプラズマは, ハトを本来の宿主とすることが証明された.
  • 松橋 肇
    1979 年 41 巻 3 号 p. 283-289,298
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    断水飼育したマウスの旁糸球体細胞(JGC)に生ずる微細形態学的変化を経時的に調べた. 実験3日目のJGCにはゴルジ装置の発達が顕著であり, ゴルジ野には紡錘形, 時に円形の小型顆粒, protogranuleが認められた. Protogranulesには格子幅約90Åの結晶格子構造がみられた. このprotogranulesは単独, あるいは数個融合して成熟した旁糸球体顆粒(JGG)となった. 実験7日目には数個のJGCが融合して出来た不整形, 大型顆粒が認められた. これらの顆粒の中には電子密度の下っているものもみられ, 顆粒の内容物が漏出分泌により分泌される可能性が推定された. しかしJGGの破壊産物と考えられる構造が細胞質内および細胞間隙にも認められたので, 顆粒内容物はexocytosisなどを含む何らかの様式で細胞外に分泌される可能性も示唆された. 旁糸球体細胞の顆粒指数(JGI)値は実験3日目で一旦下ったのち7日目に再び上昇する. JGI値の変動とJGCの微細構造の変化とからJGI値の低下はJGCが主として合成期にあることを示唆し, またJGI値の再上昇は脱水状態下でレニンアン-ギオテンシン-アルドステロン系が働き, レニンの分泌, 合成が共に賦活化された結果, JGGの分泌/合成の比が一定のレベルに落ちついたことを意味するものと考えられた.
  • 白井 弥, 呉 守一, 鹿嶋 傅, 佐藤 常男, 斉藤 隆行, 山田 史, 中林 大, 桜井 克己
    1979 年 41 巻 3 号 p. 299-306
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    屠畜場で採取した牛の正常子宮15例, 慢性カタル性子宮内膜炎21例, 慢性化膿性子宮内膜炎9例(比較的炎症の軽度なもの4例・重度なもの5例)および壊疽性子宮内膜炎7例, 計52例の子宮について光輝細胞の分布, および形態について検討を行ない, 次のような結果を得た. 1. 光輝細胞は, 正常子宮および子宮内膜炎の子宮とも血管層に最も多く, 基底層, 筋層の順に減少し, 機能層と奨膜にはほとんど認められなかった. 2. 正常子宮と子宮内膜炎の子宮における光輝細胞を比較すると, 量的に変化が認められた. すなわち, 慢性カタル性子宮内膜炎に最も多く, 重度の慢性化膿性子宮内膜炎と壊疽性子宮内膜炎では減少していた. 3. 光輝細胞は直接および間接分裂によって増生することが認められた. 4. 一部の光輝細胞は, Rileyおよび中島らの第I型肥満細胞と類似した染色性を示すことが認められた.
  • 志賀 瓏郎, 篠崎 謙一
    1979 年 41 巻 3 号 p. 307-318
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    低Mg状態下の反芻動物におけるMgとCa代謝およびそれらの代謝に及ぼす年令の影響を調べるため, 年令の異なる(2~7歳)成雌羊5頭(若令(Y)群と老令(O)群)を用い, 舎飼飼料と低Mg飼料による6段階のMg給与量(日量約56~2.9mg/kg B.W.)によって出納試験を行い, 以下の成績を得た. 1) Mgの摂取量の減少に伴い, 糞・尿中排泄量は直線的に減少し, みかけの吸収量, 体内残留量は, Mg摂取量が日量10mg/kg B.W.以下では, 負の値で平行状態を示し, 血清Mg濃度はほぼ直線的に低下した. 2) Mgの出納から, Y群, O群のMg最少必要量は日量11.78mgと14.50mg/kg B.W., 真の吸収率は41.7%と39.8%, 内因性糞中Mg量は日量3.11mgと3.46mg/kg B.W.であった. また, Mgの血清濃度と尿中排泄量の間には, Y, O群ともに有意の指数函数式が得られた. 3) 低Mg状態下のMgとCaの相関関係は, Y, O群ともに尿中排泄量と血清濃度に有意の正の相関が成立し, 低Mg血症に低Ca血症が伴った. 4) 低Mg状態下のMgの体内動員量は, Y, O群ともに日量約1.1mg/kg B.W.で, 年令による差は認められず, Y群に比べO群の血清Mg濃度が著しく低下した原因は, 老令動物の吸収および排泄機能の低下によるものであった. 5) 老令動物の1頭は, Mg摂取量が日量約2.9mg/kg B.W.の時, テタニー症状を示したが, その発現は血清Ca濃度の相対的上昇による血清Ca/Mg比の上昇とほぼ一致した. 10日目の血清Ca/Mg比は16.7であった.
  • 春田 耕一, 佐々木 真敬, 宮園 裕子, 稲田 七郎, 渡辺 茂
    1979 年 41 巻 3 号 p. 319-323
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Halothane麻酔下で, 大腿神経の電気刺激で大腿四頭筋に誘発されるM波について, L4・L5・L6の切断による神経除去後に起こる早期変化を観察した. 誘発されたM波の指標中では, 最大振幅が実測値及び相対値(神経除去側/対照側)とも, 最も顕著かつ有意な変化を示した. なお, 神経除去筋にはfibrillation potentialの発現を認めなかった. 従って, 臨床応用に際して, M波(最大振幅の変化)が最も有効な方法であると結論される.
  • 安部 勝人, 小野 浩臣
    1979 年 41 巻 3 号 p. 325-329,331
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1977年2月より翌4月に至る犬の老年性白内障12例に, 合成甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン酒石酸塩水溶液(TRH, 0.01%)の1日5回以上の点眼を連日試みた. 4ヵ月以上の連続投与を行った3例ではすべて, 混〓した水晶体皮質部の透明化と, 核の混〓の若干の透明化がみられた. 未熟型白内障よりも成熟型に達した時期の方が本剤に対する反応が早かった. 副作用は何らみられなかった. 他の9例では投与を約1力月で中止しているが, 一部に改善効果がみられた. なお, これらの作用に先行して, ある程度の視力の改善がみられた.
  • 藤田 正一郎, 小久江 栄一, 吐山 豊秋
    1979 年 41 巻 3 号 p. 333-335,337
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    以下の技術的な改良を加えることによって, 2ケ月以上供試可能なブタのハイデンハイン小胃の作製に成功した. (1)主胃の切断端はtransverse縫合する. (2)体液平衡保持のため, 流出する小胃からの胃液は可能なかぎり採取してブタに飲ませる. (3)カニューレの脱落を防ぐため: 後肢の蹄先端を鈍にする. 腹帯を装着する. カニューレ開口部の皮膚のerosionを治療する.
  • 和田 俊雄, 半田 純雄, 毛利 資郎
    1979 年 41 巻 3 号 p. 339-341
    発行日: 1979/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    九州各県の合計1739頭の抑留犬および飼犬について, Brucella canisに対する凝集素の保有状況を調査した. 陽性率は1.6%(抑留犬2.0%, 飼犬0.7%)であった. 福岡県の陽性率(2.8%)はそれ以外の県(0.8%)に比べて有意に高かった(P<0.05). それとは逆に, 鹿児島県では全例が凝集素価80倍以下の低い水準にとどまっていた.
feedback
Top