1養豚場内のサルモネラの分布及びその伝播様式について, 2年間観察を行ってきた. 分離サルモネラの血清型とネズミチフス菌の生物型別の面から, 新たな汚染源の導入及び交差感染に関して, 疫学的検討も加えた. 観察期間中, 豚糞便材料及び環境材料の総検索数3,374中745(22.0%)試料からサルモネラが分離された. 分離サルモネラの血清型は, 以下のとおりである. S.typhimurium 582株, S. anatum 153株, S. senftenberg 65株, S. livingstone 7株およびS. infantis 6株であった. 5血清型の内, S. typhimuriumは, 2年間の観察中, 終始分離された. これらネズミチフス菌は, Duguidの生物型別の一次分類とBrandisの型別法によりそれぞれ, 3と19, それに1と2の2生物型に大別された. さらにこれら2種の生物型は, Duguidの二次分類により, 11種の亜生物型に型別された. 異なった生物型の出現や生物型の変化は, 外部からの汚染源の導入を強く示唆した. 糞便, 汚水及び出荷豚の直腸糞便試料等よりサルモネラの分離された事は, 本養豚場でのサルモネラの濃厚汚染を意味している. 糞便由来317株と環境材料由来163株について, 薬剤感受性試験を行った結果, 5血清型の内, S. typhimuriumの50%以上の株と, S. anatum, S. senftenbergそれぞれ1株ずつが, TC, SM, SA 3剤に耐性であった. しかし, 本研究においては, 上記薬剤耐性型は疫学マーカーとしての有効性はみとめられなかった.
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