1980 年 42 巻 5 号 p. 567-572
ラットをマストミスやマウスの赤血球, 血清蛋白, 脾細胞等の抗原で免疫し, 抗マストミス・ラット, 抗マウス・ラットを作製した. これらのラットの肺動脈へ, ラット, マストミス, マウスの脳クモ膜下から回収された21~23日齢の広東住血線虫幼若成虫を頸静脈経由で外科的に移植した. その結果, これらの免疫ラットはマストミスやマウスの赤血球, 血清蛋白, 脾細胞に対してそれぞれ赤血球凝集抗体, 沈降抗体, ならびに細胞障害性抗体を産生しているにもかかわらず, 移植されたラット虫体, マストミス虫体, マウス虫体のいずれをも, 全く拒絶しなかった. これらのことから, 本虫の脳クモ膜下虫体に関する限り, 従来, マンソン住血吸虫や日本住血吸虫でみとめられているような, いわゆる"宿主抗原"効果は検出できないことがわかる.