日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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42 巻, 5 号
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  • 前出 吉光, 村田 英雄
    1980 年 42 巻 5 号 p. 531-537,541
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    2歳の雄ネコが脾腫と, 末梢血液中への多数の赤芽球および未熟細胞の出現を伴う高度の貧血を示した. このネコは, 臨床的, 血液学的ならびに病理学的所見, 特に末梢血液中の未熟細胞の形態から, 赤白血病と診断された. 末梢血液中の未熟細胞の大部分は電顕観察の結果, 異常な前赤芽球と判定された. これらの未熟細胞は, 大型の核小体を有する円形あるいは楕円形の核と, 多数のリボソーム, 明るい基質を持った大型のミトコンドリア, および細長い粗面小胞体を含む細胞質が特徴的で, 細胞膜表面の陥入がしばしば認められた. また, これらの細胞のうちには, 細胞質内に赤血球を含むものが観察された. 一方, 赤芽球系細胞以外の未熟細胞も少数ながら末梢血中に出現していた.
  • 寺門 誠致, 大宅 辰夫, 上田 久, 伊佐山 康郎, 大前 憲一
    1980 年 42 巻 5 号 p. 543-550
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1976年度中に全国各地から分離採集された家畜由来サルモネラ, 合計217株(牛由来78株, 豚由来74株, 鶏由来65株)の薬剤耐性とRプラスミドの分布状況を調べた. 今回の調査で同定された20種類の血清型のうち, S. typhimuriumとS. enteritidisの検出率が最も高かった. 分離株の薬剤耐性状況をみると, 供試菌217株中164株(76%)が供試薬剤のいずれかに耐性であった. なかでも牛由来株における多剤耐性化が著明であり, 供試株の70%以上がクロラムフェニコールを始め, テトラサイクリン, ストレプトマイシンおよびサルファ剤に多剤耐性を示した. いっぽう, 供試性性菌164株中104株(63%)から伝達性Rプラスミドが検出された. これら検出されたRプラスミドのうち64株(62%)は牛株に由来しており, さらに該Rプラスミドの多くはクロラムフェニコール耐性を含む多剤耐性マーカーを有していた. また, 本調査から, 家畜由来でも特に牛由来サルモネラの間には, 不和合群でH1またはIαに属するRプラスミドが広く分布していることも明らかとなった.
  • 中沢 宗生
    1980 年 42 巻 5 号 p. 551-555
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    寒天ゲル内拡散法を用いて, C. equiに自然感染した子馬の血清抗体を証明した. 濃縮した液体培養上清と超音波菌体破壊物の上清を抗原として用いた. 沈降線は両抗原とも感染子馬血清4例に対して1本あるいは2本形成されたが, 健康子馬血清13例には全く認められなかった. 感染子馬血清をSephadex G-200で分画すると, 濃縮した培養上清に対する沈降線は7S分画に, 超音波菌体破壊物の上清のそれは7S分画だけにあるものと, 7Sおよび19Sの両分画にあるものとが認められた.
  • 竹内 正太郎, 中島 靖之, 勝屋 茂実, 須藤 恒二
    1980 年 42 巻 5 号 p. 557-563,565
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌の生菌で免疫したマウスの皮下に鶏由来のCH-19株を攻撃し, 攻撃菌の行動と感染防御を調べた. この実験には, CH-19株のプロテアーゼによって起こる皮膚融解を感染の指標として用いた. その結果, 感染防御効果がCH-19株および異類株で免疫したマウスで認められた. これらの免疫マウスにおいては, 攻撃菌は浸潤白血球によって容易に貧食され, 菌の増殖および菌体外活性物質の産生が制限された. また, これらの免疫マウスにおいて, 菌体およびα溶血毒に対する抗体が証明された. 一方, このような防御効果は菌体およびα溶血毒に対する家兎抗血清で免疫したマウスにおいても認められた. 特に, 抗α溶血毒血清で免疫したマウスでの菌の行動および組織変化は, 生菌マウスでの成績と類似していた. このことから, α溶血毒に対する抗体が感染防御に重要な役割を演じていると考えられた.
  • 吉村 堅太郎, 佐藤 桂子, 大家 裕, 中川 雅郎
    1980 年 42 巻 5 号 p. 567-572
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットをマストミスやマウスの赤血球, 血清蛋白, 脾細胞等の抗原で免疫し, 抗マストミス・ラット, 抗マウス・ラットを作製した. これらのラットの肺動脈へ, ラット, マストミス, マウスの脳クモ膜下から回収された21~23日齢の広東住血線虫幼若成虫を頸静脈経由で外科的に移植した. その結果, これらの免疫ラットはマストミスやマウスの赤血球, 血清蛋白, 脾細胞に対してそれぞれ赤血球凝集抗体, 沈降抗体, ならびに細胞障害性抗体を産生しているにもかかわらず, 移植されたラット虫体, マストミス虫体, マウス虫体のいずれをも, 全く拒絶しなかった. これらのことから, 本虫の脳クモ膜下虫体に関する限り, 従来, マンソン住血吸虫や日本住血吸虫でみとめられているような, いわゆる"宿主抗原"効果は検出できないことがわかる.
  • 朴 駿〓, 西村 昌数
    1980 年 42 巻 5 号 p. 573-580
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウレタン麻酔下のニワトリに人工呼吸を施し, 両側迷走神経を切断し, 生理食塩水の点滴を行ないながら, その腺胃内腔を5×10-4 Nまたは1×10-3 Nの苛性ソーダで灌流し, 流出液のpHを灌流型電極で連続測定し, 相対的な酸分泌に対するヒスタミン(Hist)の作用と, これにおよぼす抗ヒスタミン薬の影響を検討した. 腺胃通過後の灌流液のpHが5~7の範囲でも, 9~10の範囲でも, Hist (10μg/kg, i.v.)は, 一過性および持続性の2相から成る酸分泌促進作用を示した. H1-遮断薬であるジフェンヒドラミン(0.5mg/kg, i.v.)は, Histの持続性作用をわずかに抑制し, H2-遮断薬のメチアマイド(0.4mg/kg, i.v.)は, Histの持続性作用をほぼ完全に抑制したが, 両者とも, Histの一過性酸分泌促進作用にほとんど影響しなかった. したがって, ニワトリにおけるHistの酸分泌促進作用には, 従来より報告されているH2-遮断薬により抑制されるものと, H1-およびH2-遮断薬に対して抵抗性を有する部分があることを見出した. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 本研究に終始御指導と御校閲を賜った, 本学農学部家畜薬理学教室浦川紀元教授に深甚の謝意を表します. また実験にあたり, スミスクライン・藤沢株式会社よりメチアマイドの提供を受けたので記して謝意を表します.
  • 森下 芳行
    1980 年 42 巻 5 号 p. 581-586
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    妊娠ラットの分娩前から分娩・離乳後に至るまで, その糞便細菌叢を毎週1度検査し, また2度目の分娩においては哺乳ラットの大腸細菌叢も検査した. 授乳期間中において全母ラットの糞便のEscherichia coliおよびEnterococcusの菌数増加が認められ, とくに前者において顕著な増加が認められた. また数例においてはProteus mirabilisの増加も見られた. E. coliおよびEnterococcusは2度目の分娩直前において1度目の分娩前および離乳直後よりも大きい菌数を示した. 哺乳ラットの腸内菌叢の検査成績から, 授乳中の母ラットの糞便E. coliの菌数増加は母ラットによる哺乳ラットの排泄物の摂食に基づくことが示唆された. 嫌気性細菌のうち嫌気性グラム陽性球菌, Fusiform, Catenabacterium (Eubacteriumおよび嫌気性Lactobacillus), Clostridiumおよびcurved rodは分娩後授乳期2週目および離乳後において, それ以前よりも菌数あるいは検出率が大であった. 一方Bifidobacteriumは分娩後その菌数の減少を示した. Staphylococcus, Lactobacillus, total Streptococcus, BacteroidaceaeおよびVeillonellaは授乳期間中に著変を示さなかった. 授乳中の母ラットの糞便細菌叢の変化に関与する要因およびその変化の意義について考察した.
  • 藤崎 幸蔵, 竹内 正太郎, 北岡 茂男
    1980 年 42 巻 5 号 p. 587-593
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    フタトゲチマダニ(単性系, 岡山株)の雌ダニの頻回吸血に伴って生ずるマダニ飽血体重の低下を指標とした宿主の吸血抵抗性の発現の様相と, 沈降抗体と補体結合抗体の産生との関連性について調べた. 吸血抵抗性の発現と抗体が検出されるまでの期間の長さは吸血に用いたマダニの数や頻回吸血の間隔と関連性が低く, 初回寄生日からほぼ一定日数を経た後に観察される点で共通していた. すなわち, 初回寄生から約2週間後に第2~3回目に寄生させたマダニの飽血体重が低下し, また宿主における沈降・補体結合反応の出現は1~2週目から認められた. ほとんどの寄生例において抗体価とマダニの飽血体重の間には負の相関が認められ, これは宿主におけるマダニ吸血に対する抵抗性の発現に液性免疫の占める役割が小さくないことを示すものと思われた. なお, 抗体が流血中に認められても抵抗性の発現しない家免も少数認められたが, マダニに吸血された宿主においては沈降・補体結合の両抗体が常に出現し, 宿主のマダニ寄生経験を知るためのパラメーターとしてこれらの抗体の存否を利用しうる可能性が示された. 謝辞: 終始御指導を頂いた大阪府立大学農学部教授野田亮二博士, 家畜衛生試験場研究第1部長角田 清博士, 同部寄生虫第2研究室鈴木 恭博士, 麻布獣医科大学獣医学部教授藤田潯吉博士に深謝します. また, 原稿の一部の校閲を賜ったマレーシア国獣医学研究所Dr. C.S. Shantaに感謝します.
  • 吉村 治郎, 中村 政幸, 小技 鉄雄, 佐藤 静夫
    1980 年 42 巻 5 号 p. 595-597
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    サルモネラの各種抗生物質に対する感受性を, 動物性飼料原料から分離した111株について調べた. 耐性菌の検出率は低く(1.8%), ミートミールおよびミートボーンミールに由来する1株ずつにテトラサイクリン耐性が認められただけであった. これら2株の血清型はSalmonella stanleyとS. worthingtonで, Rプラスミッドは前者だけから検出された. その他の菌株は, 供試した10薬剤のいずれにも感受性を示した.
  • 高瀬 公三, 上川 慎一, 山田 進二
    1980 年 42 巻 5 号 p. 599-601
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    0日齢で伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)に感染した鶏ひなに, 7あるいは21日齢でニューカッスル病不活化ワクチンを接種したところ, 赤血球凝集抑制(HI)抗体の産生が抑制された. しかし同様にIBDVの感染を受けた鶏ひなに, 7および21日齢の2回ワクチンを接種したところ, 各日齢での1回接種群より明らかに高いHI抗体の上昇, すなわちブースター効果が認められ, しかもIBDV非感染群との間に有意差はなかった.
  • 中沢 宗生, 根本 久
    1980 年 42 巻 5 号 p. 603-605,607
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    羊血液寒天平板上におけるL. monocytogenesの弱い溶血活性を増強させ, 不明瞭な溶血をはっきりと識別するために, L. monocytogenesとC. equiの相乗溶血現象を調べた. その結果, C. equi 41株中26株は溶血性L. monocytogenes L1株の溶血活性を増強させた. また, 溶血性L. monocytogenes 25株全株の溶血活性がC. equi C39株によって増強された. ここに記載した方法により, L. monocytogenesの不明瞭な溶血をはっきり識別することができた. 一方, C. equi 41株中22株に卵黄反応陽性の結果が得られたが, この性状とL. monocytogenesに対する相乗溶血活性との間に関連がありそうである.
  • 井上 忠恕, 三宅 陽一, 金川 弘司, 石川 恒
    1980 年 42 巻 5 号 p. 609-613
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    5頭の雌牛(donor)の黄体期にPMSGおよびPGFの併用投与を行い, 過剰排卵および発情誘起を行った. 誘発された発情時に12時間間隔で人工授精を3回行った. 発情から7日目に改良したFoleyの風船付カテーテルを使用して頚管経由で非手術的に卵回収を試みた. その結果合計29個の推定黄体数から22個(75.9%)の卵が回収された. そのうち12個を発情期がdonorと±1日以内に同調した12頭の雌牛(recipient)に〓部切開手術による方法で移植し, 4頭が受胎した. 妊娠したrecipientはそれぞれ健康な雌の子牛を分娩した.
  • 平井 克哉, 沢 英之, 山下 照夫, 島倉 省吾, 橋本 晃
    1980 年 42 巻 5 号 p. 615-617
    発行日: 1980/10/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    セキセイインコ4~6,000羽を飼育する愛知県の某愛玩鳥業者において, 羽毛の逆立, 飲思・食欲の減退, 削痩および下痢の症状を呈し死亡する疾病の発生が観察された. 斃死あるいは殺処理されたセキセイインコの腸内容の新鮮生標本から, ジアルディア原虫が25~58%の率で検出された. 下痢を主徴とするこの疾病の主原因はジアルディア原虫と考えられた. 原虫の治療には飲水からのジメトリダゾールが効果的であった.
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