抄録
犬の急性の致死的気胸症について, 剖検15例, 治癒1例を報告した. 患犬の多くは著明な呼吸困難を示して死亡するか, あるいは死体となって発見された. 全例に犬糸状虫が寄生し, 内8例はかって成虫駆除療法を受けていた. 16例中15例においては, 右肺の背側肺底区に発生した空洞が破れて, 気管胸腔瘻を形成しており, 残りの1例では, 左肺の同一部位に同様な病変が認められた. これらの病変は病理組織学的に, 化膿性空洞・非薄壁空洞, 胸膜下瘢痕性気腫の3つに分けられたが, その相互には移行が認められた. 病変の周囲の肺動脈枝には, 犬糸状虫死骸による栓塞・血栓・閉塞性の結合組織増生等が多発していた.