若齢泌乳羊4頭を用い, 冬季型飼料(10日間)から春の青刈牧草(9日間)へ転換したときの無機質の出納と第一胃内性状, 血漿PTH濃度, 血液酸-塩基平衡の変化を調べた. 1. 冬季型飼料に比べ春の牧草中のKは倍増し, Mg, Ca, P, Naは1/2以下に減少した. 第一胃内VFA濃度は変らなかったが, NH
3-N濃度は有意に上昇し, pHは一過的に上昇した. 2. 牧草への転換により, MgとPの吸収率は, 4頭中3頭でやや上昇したが, 1頭で著明に低下した. Caの吸収率は, 4頭とも著明に低下した. Mg, Ca, Pの乳中分泌量はやや減少し, 尿中排泄量はMgで著減し, Caで変らず, Pで微増した. その結果, Mg, Ca, Pの出納はいずれも著減し, CaとPでは負に転じた. 血清MgとPi濃度はやや低下し, 血清Ca濃度はほとんど変らなかった. 3. NaとKの吸収率は, 牧草期に著明に上昇し, 乳中分泌量はNaでやや増加し, Kで減少した. 尿中排泄量は, Naで著減し, Kで著増したが, 出納は, Naで負の程度が小さくなり, Kで著増した. 血清NaとK濃度は, 変化しなかった. 4. 実験期間を通じ, Mgの出納および血清濃度相互に正の相関があり, とくに, 血清濃度と尿中排泄量との間に指数函数関係が成立した. また, 血清MgとCaの間に正の相関が, 血清MgとNa, CaとKとの間に負の相関があった. 5. 血漿PTH濃度は, 牧草期に1つのピークを示す上昇があり, 血清Ca, Mg濃度の変化と近似したパターンを示した. 血中酸-塩基平衡は, ほとんど変化しなかった. 謝辞 : 稿を終えるにあたり, 本研究の遂行に終始御協力をいただいた岩手大学家畜生理学研究室 高野徹氏(現福島県庁), 山本敏弘氏(現茨城県庁)ならびに有益なる御助言を賜った菅原伯教授に深謝する. さらに, PTH測定用抗血清を御提供下さった農林水産省家畜衛生試験場 林光昭博士ならびに佐伯隆清博士に深謝する.
抄録全体を表示