日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
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43 巻, 3 号
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  • 工藤 博, 大木 与志雄
    1981 年43 巻3 号 p. 299-305
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    著者らの研究室で繁殖した80匹の成熟ハタネズミを3種類の飼料, (A)ジャガイモ単独, (B)ヘイキューブ単独, (C)ヘイキューブおよび草食動物用ペレットのいずれかで飼養し, 食道のう内細菌そうをHungateの嫌気培養法で, in vitroでの発酵をワールブルク検圧計で, VFAおよびその他の有機酸の産生をガスクロマトグラフィーを用いて検索した. その結果は次の様に要約される. 本動物の胃における発酵は第一胃, すなわち食道のうで行なわれる. 2種類の高線維含有飼料給与区(B, C)のin vitro試験では, セルロースおよびキシランが利用されたが, デンプン多給区(A)のものでは利用されなかった. ヘイキューブおよび草食動物用ペレット給与の食道のう内容物が最も高いpH値, 総VFA, 発酵能を示した. 細菌そう, pH値, 総VFAおよび乳酸濃度の大きな変化は, 給与飼料の相違であると考えられた. (A)区では, pH値および総VFAの低下, 好気性菌および乳酸の増加が見られた. どの飼料給与群でも, 腺胃と幽門胃におけるPH値と総VFAは, 常に食道のうより低かった. 食道のうにおける主要発酵生産物は酢酸であり, プロピオン酸は, わずかしか産生されていなかった. 以上の様に, ハタネズミの食道のう内には106個/gの好・嫌気性菌が生息し, 発酵が行なわれ, その結果VFA産生が行なわれる.
  • 高鳥 浩介, 一条 茂, 小西 辰雄, 田中 一郎
    1981 年43 巻3 号 p. 307-311,313
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    本邦における馬の皮膚真菌症の最近の発生状況については十分検討されていない. そこでわれわれは, 1978年に本邦でも馬の生産地として知られる北海道内での発生状況について, 臨床的ならびに真菌学的検索を行なった. 対象地域は北海道内上川, 日高, 十勝および北見の4支庁管内で, 軽種馬育成牧場と競走用輓馬を繋留している競馬場であった. 7軽種馬育成牧場での発病率は, 21.9~100%であり, 対象牧場すべてに馬の皮膚真菌症発生を認めた. また, 3競馬場での発病率をみたところ, 8.6~18.8%であり, いずれの競馬場でも本症の発生を認めた. 発病の時期をみると, 軽種馬では7~9月の放牧期に多く, 輓馬では7~10月の競馬開催時に多く, いずれも感染馬や原因菌で汚染された馬具との接触が発病に関係深いものと考えられた. 皮膚病巣の発生部位は, 育成馬では全身各所にわたることが多く, 輓馬ではゼッケンの装着部位である胸部から病巣が始まる例が多かった. すべての発病馬の病巣から共通してTrichophyton equinumが分離され, 本菌が発病の主な原因と考えられた. また一部の発病馬からは, Microsporum canisが分離された. M. canisの本症発生における原因菌としての役割については, 今後の検討すべき問題と思われた. 以上の成績から, 北海道おける馬の皮膚真菌症は定着した疾患となっており, また本病が全国的に認められるものと考えられた. したがって, 今後本病に対する適切な予防と治療対策が重要な衛生上の課題であると思われた.
  • 佐伯 百合夫, 石谷 類造, 宮本 譲
    1981 年43 巻3 号 p. 315-323,328
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬の急性の致死的気胸症について, 剖検15例, 治癒1例を報告した. 患犬の多くは著明な呼吸困難を示して死亡するか, あるいは死体となって発見された. 全例に犬糸状虫が寄生し, 内8例はかって成虫駆除療法を受けていた. 16例中15例においては, 右肺の背側肺底区に発生した空洞が破れて, 気管胸腔瘻を形成しており, 残りの1例では, 左肺の同一部位に同様な病変が認められた. これらの病変は病理組織学的に, 化膿性空洞・非薄壁空洞, 胸膜下瘢痕性気腫の3つに分けられたが, その相互には移行が認められた. 病変の周囲の肺動脈枝には, 犬糸状虫死骸による栓塞・血栓・閉塞性の結合組織増生等が多発していた.
  • 萩原 敏且, 勝部 泰次, 武藤 健, 今泉 清, 醍醐 康雄
    1981 年43 巻3 号 p. 329-336
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    猫におけるトキソプラズマ症を解明するための基礎的研究として, トキソプラズマシストおよびオーシストを用いて感染実験を行った. 本原虫の猫に対する病原性はシストとオーシストでは異なり, また, 接種経路によっても異なった. シストを経口投与されて猫は6例全例が無症状感染し, 感染初期(5~12日)にオーシストを排泄したが, オーシストを経口投与された例では, 3例中1例のみが投与5週後(38, 40日)にオーシストを排泄する感染を起すにとどまった. これらの猫はいずれも剖検時, 病変を示さなかったが, 原虫は, 肺, 筋肉などから分離された. 一方, シストを腹腔内接種した猫は, 3例全例が発熱, 食欲廃絶, 元気消失, 呼吸困難などの症状を示す致死的感染を起した. 剖検時には, 大量の胸水や腹水の潴溜がみられ, 肝の溷腫脹, 肺の炎性水腫もみられた. また, GOT, GPT値の著しい増加がみられた. 原虫は全身から検出されたが, オーシストの排泄は認められなかった. シスト経口投与猫3例に, オーシスト排泄終了後(感染後28日)にコーチゾンを5 mg/kg, 7日間連続投与したが, いずれの猫にも感染の顕性化やオーシストの再排泄は認められなかった.
  • 萩原 敏且, 勝部 泰次, 今泉 清
    1981 年43 巻3 号 p. 337-343
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    経口投与されたトキソプラズマは, 最初に小腸間膜リンパ節に侵入した. 侵入した原虫は2~7日にわたって各部組織・臓器に拡がり, 10~14日でほぼ全身に分布した. この時期には大便内にオーシストが排泄された. このことから, 本原虫の猫体内における推移には2通り(腸管内の有性生殖を伴なう過程と腸管外の無性生殖の過程)あり, これらは原虫の腸管侵入後同時に進行するものと推察された. 後者の場合, 増殖した原虫はリンパ流や血流によって各部へ伝播されるものと思われた. 腸管に寄生している原虫は侵入後10日頃までは, トリプシン消化により感染力を失なうことがわかり, 本原虫の新しい性質として注目された. シストの経口投与によって惹起される不顕性感染では, 感染後10~14日は1つの起点であると考えられた. 即ち, この期間に抗体が上昇し始め, オーシストの排泄が終了し, さらに腸管からトリプシン抵抗性の虫体が検体されるようになる. またこの時期は症状は出さないが, 原虫が全身に拡がる時期に相当した.
  • 萩原 敏且, 勝部 泰次, 今泉 清
    1981 年43 巻3 号 p. 345-349
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    9例の猫にトキソプラズマ感染マウス脳を1個または3個腹腔内接種した. このうち4例は急性感染をおこし, 死亡したが, 5例(3個接種, 1例; 1個接種, 4例)は耐過生残し, 回復期にオーシストを排泄した. オーシスト形成期間は19-24日で, 排泄日数は5-7日であった. オーシスト形成期間は経口投与の場合と比べて著しくながかった. 生残した猫は全て色素試験抗体が陽性となった. 抗体の上昇はオーシスト形成期間にみられ, 排泄期には, 抗体価はピークに達した. 従って, 色素試験抗体価はオーシストの産生に直接影響を及ぼすとは考えられなかった.
  • 上嶋 俊彦, 上原 正人
    1981 年43 巻3 号 p. 351-355,357
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    島根県産の子牛に, これまで報告されていないtrue polymeliaおよびintraindividual ipsilateral dimeliaに分類される, 極めて稀な尺骨性二股症が発見された. 二股症を示す左側前肢の尺骨は, 肘突起を向き合わせた前後位の鏡像的位置をとっていた. 橈骨はsymmeliaおよびhemimeliaを示して近位部と遠位部に分かれる. 近位部は小骨片として両尺骨の間に存し, 遠位部は両尺骨と癒合し, 骨体相当部を欠き, 近位部と遠位部は腱様構造により結合していた. 重複した手根骨では, 肘関節の重度の屈曲に伴う形態異常と, それぞれの近位列の橈側手根骨および副手根骨の欠除が見られた. 中手骨は内側に向き合わせる重複を示し, 指骨は多指症様であった. 筋系には, 骨格の異常に伴う二次的な起始, 終止および重複せる筋相互間の配列に異常が見られだ.
  • 今井 壮一, 安倍 正史, 扇元 敬司(
    1981 年43 巻3 号 p. 359-367
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ニホンカモシカCapricornis crispus 31頭より得たルーメン内容に見出される繊毛虫を検索した. その結果, ルーメン内容1 mlあたりの平均繊毛虫数は1.4×105であり, 反芻家畜のそれとほぼ同様の数値が得られた. 出現繊毛虫種は11種が同定され, 1種は毛口類に属するもの, 他の10種はエントディニオモルファ類に属するものであった. これらのうち, 10種は本邦の反芻家畜からも認められているものであったが, 1種はカモシカ特有のものであり, 詳細な形態学的検討の結果, Epidinium ecaudatumの新型として, Epidinium ecaudatum forma capricornisiと命名した. 本種は二叉, 又は三叉に分岐した尾棟をもつが, 現在まで三分岐した尾棟をもつルーメン内繊毛虫はOphryoscolex属に限られており, EpidiniumとOphryoscolexとの系統学的な関係を示唆する特徴の一つとして興味深いものと思われる.
  • 石井 博, 大木 与志雄
    1981 年43 巻3 号 p. 369-374
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    鶏のリンパ性白血病の血清中に出現する低分子(LMW) IgMを塩析法とカラムクロマトグラフィーにより精製した. 精製したLMW IgMは, 寒天ゲル内沈降反応において, 19S-IgMから精製した7S-IgMと同一の抗原性を示した. 免疫電気泳動法においては, LMW IgMに易動度の異なる2型(M1型, M2型)の存在が認められた. リンパ性白血病鶏の血清中のLMW IgMを単円および復円免疫拡散法により定量した結果, 3.1~9.8mg/mlの範囲であった. 健康鶏および他の疾患の鶏の血清中には, LMW IgMは認められなかった. 以上の結果から, この免疫化学的分析により, 鶏のリンパ性白血病の診断が可能であることが示された.
  • 高橋 清志, Young B. A.
    1981 年43 巻3 号 p. 375-383,385
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛蹄葉炎の発病機序を明らかにする目的で圧扁麦の過食とヒスタミンの肢動脈内注射による蹄葉炎の発症試験を実施した. I: 実験圧扁大麦を飽食させた4頭の実験牛は, 12~24時間後から食欲廃絶, 強度の水様性下痢が発現し, 約24時間後から全例蹄に疼痛を示した. しかしこれらの変化は, 一過性であり72時間後には回復した. 実験II: 4頭の実験牛に一側前肢の肢動脈内へ燐酸ヒスタミン30μg/kg注入した. 投与後数分間頸動脈圧の下降およびHt値の上昇がみられたがただちに回復した. ヒスタミン注入前肢では, 肢動脈圧の急激な上昇および肢静脈血Ht値の著明な上昇と同時に疼痛を示し, 浮腫が発現した. しかしこれらは24時間後に全例消失した. 実験III: 4頭の実験牛に実験Iの方法で圧扁麦を飽食させ, 24時間後にヒスタミンを実験IIの方法で投与した. その結果実験IIに比較して蹄の疼痛および浮腫が強く29~101日間跛行が持続した. 疼痛は蹄に限局し, 対照蹄に比べ熱感, 肢静脈の怒張および肢動脈の拍動が増強して明らかに急性蹄葉炎の症状を呈した. 以上の成績から圧扁麦の過食が蹄に軽度の障害を与え, その結果ヒスタミンに対する感受性が増強したものと推察され, ルーメンアシドージスおよびヒスタミンは蹄葉炎の発病に関与する重要な因子であると考えられた.
  • 本間 惣太, 東 量三
    1981 年43 巻3 号 p. 387-398
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    正常性周期を示す31頭のラットの子宮頸管を結紮して79~88日後に剖検し, 13頭の17子宮角にHydrometraの発生を認めた. これらの症例は, 子宮腔に混濁ないし軽度混濁液, または透明液を貯留しており, 前者では子宮内膜炎の併発例が多く, 後者ではそれが少なかった. 子宮内膜炎併発例の子宮腔液からは1例を除いてStreptococcus sp.(Str.), P. pneumotropica (P.P.), Proteus sp.のうち1~2種の細菌が107/ml以上検出され, その他の症例の子宮腔液は細菌数106/ml以下, または無菌であった. いっぽう, 正常性周期の発情前期子宮腔液は無菌例が多いが, 細菌汚染例では103~105/ml程度のStr.やP.P.がみられた. 次に, 予め子宮腔内細菌の有無を調べた14頭のラット(細菌陽性子宮角14例, 陰性10例)において, 子宮結紮, 卵巣除去後estradiol 0.2μg/日の20日間皮下注射によりHydrometraの発生は認められず, 子宮内膜炎もほとんどの例に陰性で, わずかに細菌陽性群の3例に認められた. 以上の結果から, Hydrometraの子宮腔液は子宮内細菌の増殖を誘発し, その結果として惹起される子宮内膜の炎症により, Hydrometraは種々の修飾像を呈するものと解された. したがって, Hydrometraを含めてこれらの異常子宮をHydrometra-endometritis complexとして統括するのが妥当と思われる.
  • 三浦 克洋, 藤崎 優次郎, 中島 靖之, 村上 洋介, 柏崎 守, 後藤 信男
    1981 年43 巻3 号 p. 399-409
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1977年3月から4月に, 系統を維持しているマウスコロニーに呼吸器病が流行し, その臨床観察, 分離ウイルスの性状, 肺の病理組織学的変化, 細菌学的および血清疫学的調査からHVJの単独感染によることが明らかになった. 流行時, 多数の成熟マウスが発病・死亡し, 系統間に死亡率の差異が認められた. 実験室保存血清の抗体調査結果から, 当コロニーでは少なくとも1973年までさかぼのぼる限りHVJの汚染は起きていなかった. いっぽう, 別棟の購入マウスおよび今回の流行が起きた同一棟内のラットコロニーにおいては, すでにHVJによる汚染が生じていた. 流行マウスコロニーでは, 感染と同時に抗体が出現し生残マウスのほとんどは高い抗体価を示した. 流行終息後の1代産仔においては若齢時には抗体が検出されたが成熟時には検出されなかった. 1代産仔およびその後約2年間に生産された6-8世代のマウスには発病も抗体出現も全く認められなかった. このことから, 当コロニーでは流行時の発病マウスの淘汰, 約2か月間の繁殖停止および流行後の生残マウスの免疫獲得により, ウイルスの存続を防止できたものと考えられる. 謝辞: 本研究の遂行にあたって, 家畜衛生試験場国安主税博士, 今村憲吉技官, 日本医科大学鈴木博博士ならびに国立予防衛生研究所中川雅郎, 鈴木映子両博士に御協力いただいたのでここに深謝いたします.
  • 志賀 瓏郎, 小湊 昭, 篠崎 謙一
    1981 年43 巻3 号 p. 411-419
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    若齢泌乳羊4頭を用い, 冬季型飼料(10日間)から春の青刈牧草(9日間)へ転換したときの無機質の出納と第一胃内性状, 血漿PTH濃度, 血液酸-塩基平衡の変化を調べた. 1. 冬季型飼料に比べ春の牧草中のKは倍増し, Mg, Ca, P, Naは1/2以下に減少した. 第一胃内VFA濃度は変らなかったが, NH3-N濃度は有意に上昇し, pHは一過的に上昇した. 2. 牧草への転換により, MgとPの吸収率は, 4頭中3頭でやや上昇したが, 1頭で著明に低下した. Caの吸収率は, 4頭とも著明に低下した. Mg, Ca, Pの乳中分泌量はやや減少し, 尿中排泄量はMgで著減し, Caで変らず, Pで微増した. その結果, Mg, Ca, Pの出納はいずれも著減し, CaとPでは負に転じた. 血清MgとPi濃度はやや低下し, 血清Ca濃度はほとんど変らなかった. 3. NaとKの吸収率は, 牧草期に著明に上昇し, 乳中分泌量はNaでやや増加し, Kで減少した. 尿中排泄量は, Naで著減し, Kで著増したが, 出納は, Naで負の程度が小さくなり, Kで著増した. 血清NaとK濃度は, 変化しなかった. 4. 実験期間を通じ, Mgの出納および血清濃度相互に正の相関があり, とくに, 血清濃度と尿中排泄量との間に指数函数関係が成立した. また, 血清MgとCaの間に正の相関が, 血清MgとNa, CaとKとの間に負の相関があった. 5. 血漿PTH濃度は, 牧草期に1つのピークを示す上昇があり, 血清Ca, Mg濃度の変化と近似したパターンを示した. 血中酸-塩基平衡は, ほとんど変化しなかった. 謝辞 : 稿を終えるにあたり, 本研究の遂行に終始御協力をいただいた岩手大学家畜生理学研究室 高野徹氏(現福島県庁), 山本敏弘氏(現茨城県庁)ならびに有益なる御助言を賜った菅原伯教授に深謝する. さらに, PTH測定用抗血清を御提供下さった農林水産省家畜衛生試験場 林光昭博士ならびに佐伯隆清博士に深謝する.
  • 工藤 忠明, 小池 寿男, 大友 勘十郎, 酒井 保
    1981 年43 巻3 号 p. 421-428
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    著者らが犬の可移植性性器肉腫を1967年以来同種移植により継代し, 「犬の可移植性肉腫」として確立した腫瘍株を未交配のビーグル成大に移植し, 腫瘤を形成した肉腫の生長・退縮の経過を観察した. 皮下移植された肉腫は触診により移植後4日目にその形成が確認された. 肉腫形成後肉腫体積は対数的な生長をなし, ついで比較的増減の少ない定常状態を経て, 急速な退縮を示し, 腫瘤として触知不能となり, 消失した. この肉腫形成から消失までの期間はビーグル短期退縮群では73.00±9.78日, 長期退縮群では100.83±9.70日であり, 雑種群では77.00±13.17日であった. 肉腫形成時から消失時まで5日毎に測定した肉腫体積を基に最小二乗法により各係数を決定した. この肉腫の生長・退縮の経過を辿る生長・退縮関数式はビーグル短期退縮群がVt=0.1・exp{-e-5.71(t-36.52)2+5.15}, 長期退縮群がVt=0.1・exp{-e-6.12(t-45.56)2+5.37}, であり, 雑種群がVt=0.1・exp{-e-5.88(t-39.84)2+4.95}となる指数関数式であった. この関数式にもとずく肉腫消失日は短期群で肉腫形成後75.95日目, 長期群で94.98日目, 雑種群で81.93日目であった. この消失日は肉腫形成から消失までの全経過を観察することなく, 短期群では肉腫形成後35日目までの, 長期群では50日目までの, 雑種群では45日目までの肉腫体積の測定により予測可能であった.
  • 池本 卯典, 吉田 治弘, 福井 正信, 江島 博康, 黒川 和雄
    1981 年43 巻3 号 p. 429-431
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬のC式血型液は, 著者らの発見した新血液型であり, クサギ(Clerodendron)の種子の生理的食塩水抽出液中に含有される植物性凝集素によって分類される血液型である. この植物性凝集素(抗C)によって凝集される血液をC型, 凝集されない血液をc型と分類し, 19家系について遺伝学的調査を実施した結果, この血液型は常染色体性の優性遺伝子によって支配されることが明らかにされた. その遺伝子頻度は, Cが0.127, cが0.873であった. なお126例のビーグル犬について, 表現型出現頻度を調査したところ, C型は23.8%(30例), c型は76.2%(96例)であった.
  • 池本 卯典, 桜井 幸男, 福井 正信
    1981 年43 巻3 号 p. 433-435
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    日本産の猫の血清と赤血球との交差試験により, IgMクラスの同種血球凝集素(抗Ca)を見出した. この血液型系を仮にCa式血液型と呼称することにし, 凝集される血球をCa型, 凝集されない血球をca型とした. 207例の主として日本産雑種猫について調査した抗Ca凝集素の検出頻度は5.80%(12例)であった. また, 表現型の出現頻度は, Ca型9.7%(20例), ca型90.3%(187例)であった. なお, 常染色体性優性遺伝子に支配されると仮定して求めた遺伝子頻度は, Caが0.05, caが0.95であった.
  • 加藤 寿次, 小野 浩臣
    1981 年43 巻3 号 p. 437-442
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1979年5月より10月に至る, 乳牛の創傷性角膜炎2例及び伝染性角膜結膜炎6例に対して, 合成甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン酒石酸塩水溶液(TRH 0.01%)の1日2回11~55日間連続点眼を試みた. 1) 両症による角膜炎に対するTRHの透明化効果が臨床的に認められた. 2) とくに, 従来の治療法によっても, 中等度以上の伝染性角膜結膜炎の後遺症状と考えられる角膜の白斑が, TRHによって殆んど完全に除かれ, 角膜の透明度が増加したことは注目に値する. 3) 伝染性角膜結膜炎の進行期の流涙, 羞明, 結膜炎, 角膜中央部の潰瘍化などの症状の進行は抑制できなかった. 初期において原因菌に対する抗菌剤の併用が必要かも知れない. 4) TRH酒石酸塩の長期点眼治療は, 牛体に何ら副作用を示さなかった. 5) 治療中止6力月後再発はみられなかった.
  • 金 徳煥, 一条 茂, 松本 知之, 小西 辰雄
    1981 年43 巻3 号 p. 443-448
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    臨床的および臨床病理学的にアミロイド症牛と診断し, 病理組織学的にもアミロイドネフローゼと全身諸臓器のアミイド沈着を認めた3例の腎について電子顕微鏡的検索を行った結果, 糸球体基底膜の肥厚と上皮細胞足突起の消失, 短縮および融合変化が本症における高度の蛋白尿の発現に密接な関連のあることが考えられた.
  • 竹内 実, 桜井 博子, 鈴木 伊豆美, 櫛田 秀雄, 柴田 浩
    1981 年43 巻3 号 p. 449-452
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウス総白血球, 好中球, リンパ球に対する軟X線照射の影響について, 軟X線発生装置としてSOFRONを用い, Filterを使用した場合(+)と使用しない場合(-)につき種々の線量を背部より全身照射して検討した結果, 照射により総白血球, 好中球, リンパ球の減少が見られること, これらの減少の程度, 回復時間は照射線量に比例し, Filter(+)と(-)では異なること, リンパ球と好中球では減少の程度, 回復に差があることがわかった.
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