日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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大型ピロプラズマ(Babesia ovata)実験感染牛における臨床および臨床病理学的研究
藤永 徹
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1981 年 43 巻 6 号 p. 803-813

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抄録
日本の牛から分離され, 新種のバベシアとして報告されたBabesia ovata(和名: 大型ピロプラズマ)の病原性を検討するため, 摘脾牛および非摘脾牛を用いて実験感染を行い, 臨床および臨床病理学的に観察した結果, 次の成績を得た. 摘脾牛6頭では, 接種後原虫は流血中で著明に増殖し, 発熱, 食欲および元気消失, 貧血, 黄疸および赤色尿の排出が認められ, 2頭が死亡した. 尿検査では, 血色素尿, ウロビリン尿および蛋白尿の排出が認められた. 血液学的には, 原虫寄生率の上昇につれ, 赤血球数, HtおよびHb値の低下, 白血球および血小板数の著明な減少が認められた. 貧血極期には, 赤血球浸透圧抵抗の著明な減弱が認められた. 血液生化学的には, 直接および間接ビリルビン, GOT, BUNおよび尿酸値の著増と血清蛋白質量および血糖値の低下が認められた. このような変化は原虫寄生率の上昇程度と密接な関連があり, 最高寄生率の高いものほど重度であった. いっぽう, 非摘脾牛6頭では, 原虫の最高寄生率は低く, 貧血は軽度であり, 臨床, 血液および血液生化学的所見の変化も軽度であった. 以上のことから, B. ovataは牛に対して貧血, 黄疸および血色素尿の排出だけではなく, 摘脾あるいはその他の免疫抑制作用によって, 流血中で原虫が著明に増殖した場合, 肝・腎機能に障害を及ぼす病原性を有するものと考えられた.
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