抄録
牛由来大腸菌から耐熱性腸管毒素産生プラスミド (STプラスミド) およびRプラスミドの検出を試みた.接合伝達および形質転換実験により, 分離株のひとつ AHI-308 では分子量64メガダルトン (Md) のSTプラスミド (pTE500) と2剤 (テトラサイクリン・クロラムコェニコール) 耐性Rプラスミド (pTE308, 44Md) の存在が明らかにされた. また, 別の分離株 AHI-455 からは, 分子量 64Md のSTプラスミド (pTE501) と6剤 (テトラサイクリン・クロラムフェニコール・ストレプトマイシン・カナマイシン・アンピシリン・スルファジメトキシン) 耐性Rプラスミド (pTE455, 54Md) がそれぞれ検出された. これらのプラスミドのうちSTプラスミド (pTE500, TE501) は, 制限酵素による切断パターンがまったく同一であり, さらに, self-annealing した DNA の電顕像では, 同じ大きさの stem-loop 構造が1個観察された. 他方, Rプラスミド (pTE308, pTE455) はいずれも同一不和合群FIIに属し, 制限酵素で切断すると両者間に共通な断片が複数個検出された. また, 電顕下における stem-loop 構造が pTE308 で1個, pTE455では2個それぞれ観察された. 以上の成績から, 今回検出されたSTプラスミド (pTE500, pTE501) は,由来が異なるにもかかわらず, 塩基配列がほとんど同一であること, また宿主菌において伝達性プラミドと共存していること, などが明らかにされだ.