抄録
反芻動物の低Mg血症性テタニーの発現に及ぼすCaの影響を調べるため, 4頭の泌乳羊(年齢2歳)を2頭づつ2群(A群とB群)に分け, 両群に低Mg(8.4mg/kg 体重/日)・正常Ca(154mg/kg 体重/日)と低Mg・低ca(26.1mg/kg 体重/日)の2種類の低Mg飼料を順序を違えて交互に切りかえ給与した. 実験期間を通じて毎日, 血清MgおよびCa濃度ならびにテタニー発現の指標として心拍数を測定した. 血清Mg濃度は, 低Mg飼料の給与により, 低Mg・低Ca飼料時および低Mg・正常Ca飼料時とも著明に低下した. 血清Ca濃度は, 低Mg・低Ca飼料時には低下し, 低いレベルを持続したが, 低Mg・正常Ca飼料時には一時低下したのち, ほぼ対照期のレベルまで上昇した. 血清Ca/Mg濃度比は, 低Mg飼料の給与により上昇したが, 上昇の程度は低Mg・低Ca飼料時に大きかった. 心拍数は, 血清Ca/Mg濃度比の上昇があったあとに増加したが, とくに低Mg・正常Ca飼料時には心拍数の著しい増加とともに呼吸促迫, 眼球突出などの一連のテタニー症状が認められた. 以上の成績から, 羊の泌乳時においては, MgとCaの要求量が著しく異なり, Mg欠乏は非泌乳時に比べ低Mg血症をより顕著にすること, 飼料中Ca含有率がMgのそれに比べ著しく高いときには, 体内でのMgとCaの不均衡を増大させ, 低Mg血症性テタニーが誘発されやすいことが示唆された.