抄録
In situのラット小腸循環系を用いて, 銅吸収におよぼすフェノバルビタール(20, 40, 80 mg/kg/dayを実験前5日間連続腹腔内投与)の影響を検討した. フェノバルビタール無処置群の銅吸収率は灌流流開始90分後に45.7%に達した. 処置群の銅吸収率は無処置群に比較し有意に大きく, 90分後には20mg/kg群, 40mg/kg群, 80mg/kg群でそれぞれ56.7%, 62.7%, 70.0%の吸収率を示した. 十二指腸, 空腸, 回腸, それぞれの部位における銅吸収量には著明な差異が認められ, 十二指腸からの吸収量が最も多く, ついで空腸・回腸の順であった. また, フェノバルビタール前処置によって肝臓・腎臓・十二指腸・空腸の銅濃度に著明な増加が認められた. 以上の結果から, フェノバルビタールによる銅吸収の増加は, 輸送担体としての蛋白の合成促進によるものと推察された.