イバラキウイルスの赤血球凝集(HA)素は高張希釈液(0.6M NaCl, pH7.5)中で37°, 22°および4℃において牛赤血球に容易に吸着した. 吸着したHA素は等張PBSに再浮遊しても, 37°または50℃に加温しても, ノイラミニダーゼ処理しても, 赤血球から解離しなかった. 種々の塩類の0.2Mと0.6Mの溶液中でHA反応を行ったところ, NaClその他の塩類では0.6MにおけるHA価は0.2Mのそれより2~4倍高かったが, クエン酸ナトリウム溶液ではHA価に差がなかった. 0.2M, 0.6Mいずれの溶液においても, これら塩類の間でHA価に差はなかった. 牛赤血球のHA素のレセプターはノイラミニダーゼで不活化されたが, トリプシン, リパーゼ, ホルマリン, 過ヨウ素酸カリウム, 2ーメルカプトエタノールでは不活化されなかった. HA素はトリプシン, プロテアーゼ, α-アミラーゼ, 過ヨウ素酸カリウムで不活化されたが, リパーゼ, リボヌクレアーゼ, エチルエーテル, クロロホルムでは不活化されず, HA素の活性成分に糖蛋白質の関与が示唆された. このことは, Con-A Sepharose 4Bでのクロマトグラフイの結果からも支持された. HA素は37℃以下の温度で安定で, 紫外線照射, 超音波に抵抗した. 塩化セシウム密度勾配平衡遠心によりHA活性は密度1.34g/mlの分画に明瞭なピークを示し, 低密度側の分画にも広く認められた. ピーク分画のHA活性はウイルス粒子と結びついていると思われた. HA素はDEAE Sepharose CL 6BおよびCon-A Sepharose 4Bでのクロマトグラフィにより部分精製された.
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