抄録
各群56匹のSprague-Dawley系SPFラット雌雄に塩化メチル水銀(MMC) 0, 0.4, 2および10ppm含有飼料を130週間投与し, 13および26週時に各群10匹ずつ, 52および78週時に各群6匹ずつ, 130週時に生存動物全例を殺処分し, 臨床検査および組織内水銀の分析を実施した. 10ppm群では, 雌雄に体重増加抑制が認められ, 雄は投与119週までに全例死亡した. MMC中毒に起因する後肢の屈曲交差および歩行失調などの神経症状は, 雄で22週以後10例に, 雌で46週以後7例に発現した. 雄では, 各検査時に貧血が見られた. 血液生化学検査では, 腎機能障害を示唆するコレステロールおよび尿素窒素の増加が認められた. 組織内水銀分析では, 10ppm群において被毛での水銀濃度が顕著に高く, 以下腎・血液・肝・神経組織の順であった. 被毛および血液への水銀蓄積は, 78週でほぼ最高値に達した. 大脳・小脳・脊髄および坐骨神経における水銀濃度は26週以後ほぼ一定の値で推移し, 26~78週の大脳における平均水銀濃度は, 雄で5.3ppm, 雌で6.7ppmであった.