抄録
ウマの筋肉抽出液から炭酸脱水酵素(CA-III)とは等電点の異なるCA-IIIaを精製しその性状を明らかにした. CA-IIIaはCA-IIIとは電気的易動度, 等電点(8.1)が異なり, 比活性はCA-IIIの39.2%と低値であった. CA-IIIaの分子量(26,500), アミノ酸組成(258残基)はCA-IIIの値に類似し, 免疫化学的にも類似性を示した. CA-IIIaおよびCA-IIIは少なくとも4システィン残基を含み, S-S結合することなく, 2個の残基は分子表面に存在し反応性に富み, 残りの残基は分子内に埋もれた状態で存在していることが示唆された. 精製されたCA-IIIaからグルタチオンが検出されたが, アルキル化されたCA-IIIに還元型グルタチオンを加えてもCA-IIIの電気的易動度は変化しなかった. このことから, CA-IIIは生体内でグルタチオンと結合することによりCA-IIIaに変化することが示唆された.