日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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硼素中性子捕捉療法による犬の骨肉腫治療の可能性に関する検討
竹内 啓
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1985 年 47 巻 6 号 p. 869-878

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抄録
犬の骨肉腫が硼素中性子捕捉療法(BNCT)で治癒する可能性を, 硼素化合物の取り込み試験ならびに1例の治療実験の結果から示唆することができた. 取り込み試験では, Na2B12H11SHを50mgB/kgの割合で静注し, 腫瘍・血液・骨のB濃度の経時的変化を調べた. 各症例ごとに個体差があり, 必ずしも均一な傾向は得られなかったが, 注入12時間後には, 硼素の腫瘍中濃度が, 有効なBNCTに十分なレベルであり, かつ血液および骨中の濃度が明らかに低い傾向が認められた. これらの検討結果に基づいて, 1例の骨肉腫例に対してBNCTを実施した. 10Bを用いて合成した上記化合物を, 50mg10B/kgの割合で静注し, 12時間後に1.4×1013n/cm2の中性子照射を武蔵工大原子炉で実施した. 腫瘍表面の受けた合計線量は約3800ラドと考えられるが, 照射後は臨床所見およびX線所見の改善が目覚ましく, 20日後のX線写真上には, 腫瘍塊がほぼ認められなかった. 30日後に安楽死させ, 病理組織学的検索を行った. 腫瘍原発部位およびその周辺には腫瘍細胞は検出されず, また正常骨組織の著明な変性も認められなかった.
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