1985 年 47 巻 6 号 p. 889-893
奈良県宇陀地方産サワガニ寄生のメタセルカリアをネコに感染させて得た30匹の肺吸虫成虫につき, 核型分析を行いつぎの成績を得た. 1) 検索虫体の染色体数はすべて2n=22(n=11)であった. 2) 11対の相同染色体は, 大形のもの1対(中部動原体型), 中形のもの4対(次端部動原体型3対, 次中部動原体型1対), および小形のもの6対(中部あるいは次中部動原体型3対, 次中部動原体型3対)の3群に分類することができた. 3) 精巣内にはさまざまの精子形成過程にある性細胞が多数観察され, 精子の形成は正常であった. 以上から, 調査した地区のサワガニに寄生しているのは, ウエステルマン肺吸虫のメタセルカリアで, ベルツ肺吸虫メタセルカリアの混在はないことが確認された.