1988 年 50 巻 3 号 p. 731-738
フレキシブル・アリゲーター鉗子により肺動脈に寄生する犬糸状虫を摘出し, 摘出後のX線像, 心電図, 右心系循環動態などの変化を観察・測定した. 犬糸状虫摘出後, 肺動脈, 右心室及び右心房の拡張は縮少し、肺動脈の屈曲及び末梢肺動脈の切り詰め像は改善された. 心電図では, 平均電気軸における右軸変位の改善と各波の電位低下が認められた. 肺動脈圧及び右心室圧は低下し, 右心拍出量, 心拍数及び総肺血管抵抗も減少した. これらの結果から, 肺の血管抵抗の低下と血流量の減少, 心臓負担の軽減が示唆された. 摘出後各パラメーターが短期日に改善された所見から, 右心系循環動態の異常発現には, 肺血管病変のみならず, 犬糸状虫そのものも重要な役割を果たしていると考えられた.