日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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フレキシブル・アリゲーター鉗子による肺動脈内犬糸状虫摘出後の臨床効果
石原 勝也佐々木 栄英北川 均葉山 みどり
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1988 年 50 巻 3 号 p. 723-730

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抄録

一般病型の犬糸状虫症36例について, フレキシブル・アリゲーター鉗子を用いて肺動脈から犬糸状虫を摘出し, 臨床効果を検討した. 摘出操作による死亡例はなく, 最終的に剖検した18例の平均摘出率は約90%であった. 軽症例(23例)では, 摘出後速やかに発咳, 貧血などの症状が消失した. 重症例(13例)は腹水例(9例)および喀血例(4例)より成り, いずれの症例にも元気, 食欲の消失, 発咳, 呼吸困難および貧血などがあり, 腹水例では皮下浮腫, 胸水, 黄疸あるいは低体温なども散見された. 犬糸状虫摘出後, 全例とも一般状態は4週後までにかなり回復し, 多くの症状も4週後までに消失した. その後の経過は, 喀血例では全例, 腹水例では9例中7例が良好であったが, 腹水例2例は重度の弁膜症あるいは腎不全により3.5ヵ月と4ヵ月後に死亡した. 血液生化学的所見では, 多くの軽症例および重症例で貧血, 白血球増多症, 低アルブミン血症などが摘出後1週または4週までに回復し, また, LDH及びCK活性値上昇例では, 摘出後1週ないし4週までに著しく低下した. この鉗子による虫体摘出法は, 犬糸状虫症の重症例にも適用できる原因療法として推奨できる.

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