日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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子馬の白筋症における血清セレニウムとトコフェロール値について
樋口 徹一条 茂納 敏大石 秀夫
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1989 年 51 巻 1 号 p. 52-59

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抄録
子馬白筋症の原因を明らかにするため,北海道日高地方における白筋症子馬,同居子馬並びに非発病厩舎の子馬のほか,それらの母馬,その他対照として福岡県と北海道十勝地方の重種の成馬について,血清のトコフェロールとセレニウム,血液グルタチオンペルオキシターゼ活性値を測定した.血清トコフェロールでは,白筋症子馬はすべて正常値で,初乳摂取による上昇が示唆されたが,白筋症子馬の母馬は他の母馬に比べて有意(P<0.01)な低値であった.血清セレニウム値では,白筋症子馬はすべて65ppb以下の低値であり,また白筋症子馬の母馬は他の母馬に比べ有意(P<0.01)な低値を示した.血液グルタチオンペルオキシダーゼ活性値と血清セレニウム値の間には強い正の相関(r=0.81)が認められた.また,白筋症子馬の肝臓のセレニウム含量は他の疾患例と比べ明らかな低値であった.白筋症の発病厩舎で給与された飼料(乾草,エンバク)のセレニウム含量はすべて0.1ppm以下であり,乾草の約半数とエンバクのすべてのα-トコフェロール含量は2mg/100g D.M.以下の低値であった.以上の所見から,日本の子馬の白筋症の原因は,特に妊娠母馬の飼料からのトコフェロールとセレニウムの摂取不足に起因した栄養性筋変性症であることが初めて明らかにされた.
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