抄録
1985年9月から1988年3月の間に,三重県伊賀地方の4河川(西谷川,子延川,東谷川及び滝川)でカワニナ3,000個を採集し,これらを対象として肺吸虫幼虫の寄生状況に関する調査を行った.その結果,西谷川,子延川,及び東谷川で採集した80個の貝からウェステルマン肺吸虫のセルカリア並びにレジアを検出することができた.調査地区別の寄生率は,サワガニにおける肺吸虫メタセルカリアの寄生の濃厚な西谷川が最も高く6.08%(756個中46個),次いで,子延川14.63%(712個中33個),東谷川10.13%(756個中1個)の順位であった.一方,サワガニにおける肺吸虫メタセルカリアの寄生の希薄な滝川では,検査した貝776個中に陽性のものは見られなかった.カワニナの大きさと肺吸虫幼虫の寄生率との間には相関関係が認められ,大きい貝ほど高い寄生率を示し,40mm以上のものの寄生率は24.1%に達した.陽性貝80個中,29個は肺吸虫幼虫だけの単感染であったが,43個は他種吸虫幼虫1種との混合感染, りの8個は他種吸虫幼虫2種との混合感染であった.検出された幼虫の形態,特に排他系統を精査した結果,日本産ウェステルマン肺吸虫セルカリアの終末細胞式は2[(3+3+3+3+3)+(3+3+3+3+3)]=60であることが明らかとなった.