1989 年 51 巻 4 号 p. 733-739
組織電気泳動法により100頭の健常牛と肝疾患をもつ牛の肝組織乳酸脱水素酵素(LDH)アイソエンザイムを分析した. 健常牛の肝LDHアイソエンザイムはLDH1:31.7%, LDH2:24.8%, LDH3:27.3%, LDH4:12.8%, LDH5:3.3%であった. 水腫性変性を伴う肝では健常牛よりLDH1とLDH2が増加した. 脂肪肝ではLDH1の減少とLDH2の増加が認められた. 欝血肝ではLDH1の減少とLDH3・4・5の増加が, 壊死性病変ではLDH1・2の減少とLDH3・4・5の増加が認められた. 肝細胞の酸素欠乏による機能障害は, LDHアイソエンザイムパターンを変化させる要因のひとつであると推察された. 肝病変の各分画について, 正常値からの逸脱の程度を分画毎に, 増, 減, 変化なし, の3段階に分類してコンピューターを用いて条件付抽出をした. 水腫性病変では診断感度は53%(53例中28例を抽出), 陽性反応適央率は100%であった. 欝血肝や壊死性病変の診断感度は41%(22例中9例を抽出), 陽性反応適中率は69%(抽出された13例中9例を診断適中した)であった.