日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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51 巻, 4 号
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  • 佐々木 稔, 新井 敏郎, 町田 由美, 大木 与志雄
    1989 年 51 巻 4 号 p. 669-675
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    MSAを新生仔および成熟ハタネズミに皮下投与すると, 投与後3~5時間で視床下部弓状核に核濃縮を伴った神経細胞の変性像が観察された. 新生仔では視床下部腹内側核の一部や大脳皮質, 手網内側核にも同様な変化を認めた. 一方, MSA投与した新生仔ハタネズミを離乳後, 通常に給与している草食動物用ペレットとヘイキューブで飼育すると, 56.7%の動物に高濃度の尿糖が認められた. 軽度糖尿病ハタネズミにおいては, 血糖値は正常値(72.5mg/d)の約2.5倍(180.6mg/dlに, インスリン値は正常値(21.5μU/ml)の約5倍(112.0μU/m)の上昇を示した. 一方, 重度糖尿病動物においては, 血糖値は正常の約4倍(272.6mg/dl)を示したが, インスリン値は正常の約1/2以下(8.0μU/ml)に減少し, 著明なインスリン欠乏状態に陥っていた. 病理組織検索により, 軽度症例では膵島B細胞においてインスリンの盛んな生合成と分泌を示唆する像がみられたが, 重度症例では核の濃縮や消失を伴う細胞質の空胞化が顕著で, インスリン分泌の著しい低下を示す所見が認められた.
  • 筒井 敏彦, 酒井 康宏, 松井 安弘, 佐藤 政範, 山根 一真, 村尾 育子, Stabenfeldt George H.
    1989 年 51 巻 4 号 p. 677-683
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    猫の非繁殖期にFSH製剤(FSH-P)で発情誘起を行い, この場合の交配によって受精および妊娠の成立の可能性を検討した. また, 胚移植を前提として, 下行性子宮灌流法によって, 卵回収の可能性も検討した. 実験猫は19頭で, 発情誘起はFSH-Pを初日2mg, 翌日から発情の認められるまで1mgを投与して行った. その結果, 発情は初回投与から3~8日に15/19頭, 89.5%に認められた. また排卵数は17頭のうち16頭に平均7.3±1.3個(S. E.)認められた.交配後6~8日の9頭について, 卵回収を行ったところ, 8頭から1~15個, 平均3.6個回収され, その率は18.2~100%, 平均44.2%であった. 回収卵は5頭が拡張胚盤胞, 3頭が変性卵であった. 残り7頭について, 交配後15~20日に妊娠成立の有無を観察した結果, 2頭に妊娠が認められた. しかし, 各々妊娠24, 27日に流産した. これらのうち5頭について測定した末梢血中progesterone値は, 妊娠の有無にかかわらず早期に急下降し, 黄体の退行が示唆された. 以上のことから, 非繁殖期の猫にFSH-Pで, 発情誘起が可能で, この場合の交配で受精, 受胎することが明らかとなった. しかし, 黄体の退行が早期に起こることから妊娠維持は困難であった.
  • 杉井 俊二
    1989 年 51 巻 4 号 p. 685-691
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    百日咳毒素(PT)の糖特異性を調べるため, PTおよびヒト赤血球を用いて凝集, 凝集阻止反応および結合阻止反応を行った. PTの凝集活性, 結合能は赤血球のノイラミニダーゼ処理により末端のシアル酸を除去することによって著しく低下したが, 未処理赤血球にシアル酸を添加した場合これら両活性の阻止は認められなかった. 単糖, 二糖, N-アセチルラクトサミンではPTの凝集, 結合能を阻止することはできなかったが, 糖蛋白によりこれら両活性は阻止することができた. 糖特異性の明らかなレクチンを阻止物質として用いた場合, PTの赤血球に対する結合を阻止することはできなかった. 一方, PTと糖特異性が類似であると報告されているRicinus communis agglutinin (RCA-1)の凝集, 結合能を検討すると, シアル酸の除去による凝集能の変化は認められず, また凝集, 結合活性は単糖, 二糖, N-アセチルラクトサミン, 糖蛋白で阻止された. これらの成績から, PTは既知のレクチンが認識しえないような細胞表面上のシアル酸を含む糖側鎖構造を認識しうる可能性が示唆された.
  • 猪股 智夫, 江口 保暢, 中村 経紀
    1989 年 51 巻 4 号 p. 693-701
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    妊娠14日目に雌雄ラット胎仔に初めて中腎傍管が観察された. 中腎傍管は中腎管のすぐ側に位置しており, 発生の途中においてその尾側端は常に中腎管と融合していた. その後中腎傍管は中腎管から完全に分離独立していた. このことから, 中腎傍管の主体は中腎管から分化するものと考えられた. 妊娠16日目になると, 雄胎仔では雌のそれとは異なり, 中腎傍管の消失, 中腎管の発達, 肝門生殖結節間距離の増加が認められた. 妊娠19日目に胎仔精巣を除去すると, その後の胎仔の雄性化は妨げられた. これらのことから, 胎仔精巣は尿生殖道の雄性化に必要不可欠な器官であることがわかった.
  • 北川 均, 佐々木 栄英, 石原 勝也
    1989 年 51 巻 4 号 p. 703-710
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    健康ビーグル43頭(対照群)と犬糸状虫性血色素尿症自然例40頭(血色素尿症群)について血清浸透圧を測定するとともに算出浸透圧と浸透圧ギャップを算定した. 対照群では, 血清の実測浸透圧は296±5 mOsm/kg, 算出浸透圧は293±6 mOsm/kg, 浸透圧ギャップは10 mOsm/kg以下であった. 血色素尿症群の実測浸透圧は272から370 mOsm/kgの広い範囲に分布していた. しかし, かなりの例数が激しい血管内溶血にもかかわらず正常範囲内の血清浸透圧を示し, 血清浸透圧の変化は溶血の直接的原因ではなかった. 犬糸状虫摘出手術後死亡した11例の実測浸透圧(331±28 mOsm/kg)は, 回復した29例(302±17 mOsm/kg)より高値であった. 算出浸透圧は回復24例では296±16 mOsm/kg, 死亡18例では304±22 mOsm/kgであった. 摘出後回復した例の浸透圧ギャップは, 正常範囲内に分布する傾向を認めた(5.4±5.9 mOsm/kg)が, 死亡例では正常範囲より高い値を示し(22.7±8.9 mOsm/kg), 浸透圧ギャップは予後を示唆した. 実測浸透圧は, 浸透圧ギャップ, ナトリウム, カリウム, BUN, GOT, GPT, クレアチニン, ビリルビンおよび血漿ヘモグロビン濃度等と有意に相関した. Osmolar gapは, カリウム, BUN, GOT, GPT, クレアチニンおよびビリルビン濃度と有意に相関した. 犬糸状虫摘出20時間後, 血漿ヘモグロビン濃度は著しく下降したが, 血清浸透圧には明瞭な変化がなかった.
  • 佐々木 栄英, 北川 均, 石原 勝也, 柴田 昌利
    1989 年 51 巻 4 号 p. 711-715
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ミクロフィラリア(mf)陽性犬では1mg/kgのmilbemy-cin D (Milbe)の投与で有害反応が発生する場合がある. この反応を抑制する目的で, mf陽性犬41頭にprednisolone (PD, 1mg/kg), 16頭にchlorophenilamine maleate (CM, 1mg/kg), 9頭にindomethacin (ID, 2.5mg/kg)をそれぞれMilbe (1mg/kg)と同時に投与し, 臨床観察をした. その結果, CMまたはIMの併用群では有害反応の抑制効果は認められなかった. しかし, PDの併用群ではcaval syndromeなどの散発を認めたが, ショック様反応は発生しなかった. 以上の結果からpredonisoloneの併用はMilbe投薬によるショック様反応の抑制効果があると思われる.
  • 岩田 祐之, 井上 武, 小野 憲一郎, 長谷川 篤彦, 友田 勇
    1989 年 51 巻 4 号 p. 717-721
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛血清α1酸性糖蛋白の多形成についてコンカナバリンA (ConA)親和電気泳動法により検索した. 健常牛の血中α1酸性糖蛋白濃度は0.31±0.09g/l(平均±SD)で, 不法により親和性の高い2分画(分画1及び2)が認められ, その構成比は分画1は67%また分画2は33%であった. 白血病症例では8例中5例で血中α1酸性糖蛋白濃度が0.7g/l以上の高値を示した. またConA親和性電気泳動像では, 分画1, 2以外に, ConA親和性の低い分画3ならびに親和性のない分画4を含めた4分画が5例で観察され, その構成比は分画1が17.8~28.5%, 分画2が35.5~46.0%, 分画3が17.9~24.4%, 分画が12.0~17.2%であった. なお, 白血病ウイルス陽性で無症状の群では血中濃度ならびにCon A親和性に健常牛と差を認めなかった.
  • 森松 正美, 酒井 博史, 吉松 組子, 美野輪 治, 山本 静雄, 弥富 恭子, 藤木 徹, 内貴 正治
    1989 年 51 巻 4 号 p. 723-732
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ヒトおよび多くの動物種で急性相反応物質として知られている, C-反応性タンパク質(CRP)および血清アミロイドPタンパク質(SAP)を牛血清より分離精製した. HEアガロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより, 多量の血清から最も効率よく両タンパク質を含む粗画分をえた. さらにCRPとSAPの分離は, DEAE-セルロース, TSK-G3000SWによるゲル浸透HPLCまたはフォスフォリルコリン基-ウシ血清アルブミン複合体結合Toyopearl HW 65を用いたアフィニティクロマトグラフィーでなされた. 精製されたウシCRPおよびSAPは各々ヒ卜のCRPおよびSAPに対する抗体と交差反応性を示し, アミノ酸組成も相同性を示した. アガロースゲル電気泳動で, SAPはβ位に, CRPはβよりやや遅れて泳動された. 濃度勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動で両者とも単一のバンドを与え, 各々の分子量は沈降平衡法によりCRPが100,600およびSAPが109,500と推定された. SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動でCRPは23,000, SAPは28,000と32,000のサブユニットに解離することから, ともに五量体であると推測された. 実際, ネガティブ染色した結果, 電子顕微鏡で円柱状の五量体構造が観察された. また, SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離されたSAPの二種のサブユニットはともに糖タンパク質で, アミノ酸組成は完全に一致したところから, 分子量の違いは糖鎖構造の差と考えられた.
  • 安田 準, 首藤 文栄, 戸尾 明彦, 大藤 進
    1989 年 51 巻 4 号 p. 733-739
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    組織電気泳動法により100頭の健常牛と肝疾患をもつ牛の肝組織乳酸脱水素酵素(LDH)アイソエンザイムを分析した. 健常牛の肝LDHアイソエンザイムはLDH1:31.7%, LDH2:24.8%, LDH3:27.3%, LDH4:12.8%, LDH5:3.3%であった. 水腫性変性を伴う肝では健常牛よりLDH1とLDH2が増加した. 脂肪肝ではLDH1の減少とLDH2の増加が認められた. 欝血肝ではLDH1の減少とLDH3・4・5の増加が, 壊死性病変ではLDH1・2の減少とLDH3・4・5の増加が認められた. 肝細胞の酸素欠乏による機能障害は, LDHアイソエンザイムパターンを変化させる要因のひとつであると推察された. 肝病変の各分画について, 正常値からの逸脱の程度を分画毎に, 増, 減, 変化なし, の3段階に分類してコンピューターを用いて条件付抽出をした. 水腫性病変では診断感度は53%(53例中28例を抽出), 陽性反応適央率は100%であった. 欝血肝や壊死性病変の診断感度は41%(22例中9例を抽出), 陽性反応適中率は69%(抽出された13例中9例を診断適中した)であった.
  • 星野 順彦, 一条 茂, 納 敏, 高橋 英二
    1989 年 51 巻 4 号 p. 741-748
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    子牛白筋症10例とその母牛9例について, とくに血清トコフェロール(Toc) ,セレニウム(Se)値並びに血液グルタチオンペルオキシダーゼ(GSH-Px)活性値の検討を行った. 子牛白筋症の主な臨床症状では, いずれも起立困難または歩行困難などの運動障害が認められた. 血清酵素活性値(GOT, GPT, CPK, LDH)は全例が著しい上昇を示し, さらに母牛においても活性値の上昇を示す例が認められた. 発病子牛の血清Toc値は低値であり, とくに70%の例では70μg/100ml以下の欠乏値を示した. 血清Se値は全例が35ppb以下の欠乏値を示し, かつ血液GSH-Px活性値も低値であった. さらに臓器中のα-TocとSe濃度においても著しい低値が認められた. 白筋症子牛の母牛の血清Toc値は低値を示し, 22%が150μg/100mZ以下の欠乏値であった. 血清Se値では全例が20ppb以下の極端な欠乏値を示し, 血液GSH-Px活性値も同様に著しい低値であった. 発生農家における給与飼料中のα-Toc含量は, ほとんどが3mg/100g DM以下の著しい低値であり, Se含量も50ppb DM以下の極端な欠乏値であった. 以上の成績から, 白筋症子牛はいずれも母牛へのTocとSeの給与不足による栄養性筋変性症と考えられた.
  • 石野 清之, 松田 泉, 山本 春弥, 吉野 知男, 泉対 博, 水野 喜夫, 甲野 雄次
    1989 年 51 巻 4 号 p. 749-756
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛白血病ウイルスを接種された羊の経過観察中に2頭が発症し, それぞれ異なった腫瘍病変を示した. 第1例はリンパ節病変を欠き, 巨脾と高度の白血性変化を示し, 第2例はリンパ節と他の組織に高度なリンパ肉腫性病変を示した. 両例の腫瘍細胞はB細胞のマーカーを有し, 第2例では少数の細胞の細胞質内に1gMが見られた. いずれの腫瘍細胞もBリンパ球の分化過程で腫瘍化したものと考えられ, 第2例では一部の細胞が免疫グロブリン産生能力を獲得したと類推された.
  • 板垣 匡, 太田 伸生, 保阪 幸男, 磯 日出夫, 小西 正人, 茅根 士郎, 板垣 博
    1989 年 51 巻 4 号 p. 757-764
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛肝蛭症の診断に, 肝蛭成虫抽出液を抗原としたELISA法の応用が可能かについて, 肝蛭(Fasciola sp.)実験感染牛38頭の経時血清及び乳牛165頭の血清を用いて検討した. また, 同実験牛についてゲル内二重拡散法(Ouchterlony 法)及び虫卵検査を実施し, ELISA法と比較した. 実験感染牛におけるELISA値は, 感染後2週より上昇し, 21週まで高い値を持続した. また, 実験感染牛のELISA陽性率は, 感染後4週で94.7%, 6~21週で100%であった. Ouchterlony法による陽性率は, 感染後2週で91.4%であったが, 10週では77.8%に低下した. また, 虫卵検査での肝蛭卵検出陽性率は, 感染後2~10週で0%, 12週で77.8%, 14~21週で100%であった. 一方, 乳牛においては, 肝蛭卵検出及びOuchterlony法がともに陽性であった24例は, ELISA法でもすべて陽性値を示した. また肝蛭卵検出陽性, Ouchterlony法陰性の6例中5例及び肝蛭卵検出陰性, Ouchterlony法陽性の27例中24例は, いずれもELISA法で陽性反応を示した. さらに, 肝蛭卵検出, Ouchterlony法ともに陰性の108例において, ELISA法で90例は陰性, 18例が陽性であった. 以上の結果から, 牛肝蛭症の診断にELISA法はきわめて有効な方法であることが明らかになった.
  • 二宮 博義, 中村 経紀, 新妻 勲夫, 土屋 新男
    1989 年 51 巻 4 号 p. 765-773
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    イヌの陰茎の血管系をアクリル樹脂鋳型法で立体的に観察した. さらに, 鋳型標本で特微的な部位について, 連続切片により組織学的観察も行った. 注入樹脂の刺激作用により, 坐骨海綿体筋と球海綿体筋が収縮し, 陰茎脚と尿道球が圧縮されており, これらの筋が勃起時に海綿体内圧を維持するためのポンプ効果を持つことが示唆された. さらに, 尿道球の遠部位が外肝門括約筋の圧縮を受けており, 尿道海綿体中の血液が尿道球ヘ逆流しないように作用することが示唆された. 陰茎背静脈も坐骨尿道筋により圧迫され狭窄していた. 陰茎背静脈と尿道球静脈を集める内陰部静脈も肝門挙筋, 尾骨筋および内閉鎖筋により圧迫され狭窄していた. また, 陰茎深静脈, 尿道球静脈および浅亀頭静脈が海綿体から出る部分は極端に細く, "堰 sluice channel"を構成していた. こうした筋の収縮作用や排出静脈の堰構造は, 陰茎勃起時の海綿体洞への血液充満に重要な働きをするものと考えられた.
  • 阿部 光雄, 竹花 一成, 岩佐 憲二, 平賀 武夫
    1989 年 51 巻 4 号 p. 775-791
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ミンクの脾臓を十分灌流固定し, 赤脾髄の割面を走査電子顕微鏡で観察した. ミンクの脾洞壁は杆状細胞とその細胞突起からなる孔あき格子構造であった. 杆状細胞の核は洞腔に突出していた. 隣接する杆状細胞は, 側突起からなる細胞間橋で結合され, この間橋を横切る低い稜状の高まりがあったが, これは細胞境界と思われる. 脾洞と脾髄静脈の間には, 移行静脈洞の分化はなかった. 脾索の細網細胞は脾洞の壁に突起をのばし, 細胞質をやや広げて固着していた. ミンクにはよく発達した莢動脈がみられた. 莢動脈の末梢の動脈性毛細血管は, すべて脾索に開放していて, その型は, 管状および嚢状の二型がみとめられた. ミンクの赤脾髄中の中間微小循環には開放説があてはまるように思われる.
  • 升永 博明, 上田 正次, 沢井 忠則, 川西 悟生
    1989 年 51 巻 4 号 p. 783-788
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    腎性貧血ラットを用いエリスロポエチン(EPO)の投与間隔と投与経路による造血効果の違いについて検討した. すなわちラットに体重1kg当たり300ユニットのEPOを全量1回で投与する群, 4回に分けて4日毎に投与する群, 7回に分けて2日毎に投与する群の3投与スケジュールで, 静脈内, 筋肉内, 皮下投与の3投与経路からそれぞれ投与し, 2週間後の貧血改善効果を比較した. 各投与経路とも単回より4回, 7回と低用量高頻度になるに従い強い造血を示したが, 7回投与において静脈内投与群は, 筋肉内, 皮下投与群に比べ効果が弱かった. 血清鉄濃度と網状赤血球数の所見から連続投与群では, 2週間目の時点で未だ造血機能の亢進が維持されていたが, 単回投与群では既に停止していることが示唆された. EPOの造血作用は最高血中濃度より有効血中濃度の持続時間に依存することが推察され, 臨床応用に際し, 一時的に大量のEPOを静脈内に投与するより, 適正な用量を繰り返し投与し有効血中濃度を長期間維持することが腎性貧血の治療に効果的であると考えられた.
  • 小林 晴男, 湯山 章, 塩谷 圭子, 佐藤 久美
    1989 年 51 巻 4 号 p. 789-795
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    カーバメイト剤, BPMCをマウスに100mg/kgを1回(急性投与)または50mg/kgを毎日1回10日間(反復投与)皮下投与し, 行動ならびに前脳のコリン作動性ニューロン活性指標を測定した. 急性投与によって自発運動, 直腸温およびロタロッドは一過性に低下し, コリンアセチルトランスフェラーゼ活性以外のコリン作動性ニューロン活性指標もほほ平行して変化した. 反復投与した場合, 自発運動とロタロッドの低下が投与停止前後にみられ, アセチルコリン(ACh)含量ならびにアセチルコリンエステラーゼ活性の変化を伴わないで高親和性コリン取り込みおよび[3H] QNB結合能の低下が認められた.
  • 筒井 敏彦, 嶋田 公洋, 西 康男, 久保 奈方美, 村尾 育子, 清水 敏光, 小笠 晃
    1989 年 51 巻 4 号 p. 797-800
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    排卵日のずれが±1日以内の実験犬6頭((donor 3頭, recipient 3頭)を用いて, 推定排卵後9~12日に肝移植を試みた. 回収胚数は1頭あたり7~10個, 回収率は78~100%で, その胚の発育段階は, 排卵後9日でmorula, 11日でblastocyst, 12日でexpanded blastocystであった. これらを3頭のrecipientの排卵数の多い側の子宮角先端部に5~8個移植した. その結果, molura 8個を移植した1頭が妊娠し, 54日後に2頭の子犬を分娩した. このことから, 犬でも胚移植が可能であることが分った.
  • 池 博敏, 佐々木 修, 山田 明, 今西 二郎
    1989 年 51 巻 4 号 p. 801-803
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウシ胎児脾臓(BESp)細胞をヒトインターフェロン(HuIFN)-αあるいはHuIFN-βで処理し, ウシ白血病ウイルス(BLV)を感染させた時, BLVによるBESp細胞でのsyncytium形成は抑制された. HuIFN-αの方がHuIFN-βよりも抑制効果は強かった. HuIFN-γでは抑制効果は全くみられなかった. HuIFN-αでBESp細胞を処理した時, BLVの増殖抑制がみられた.
  • 金内 長司, 柴田 正志, 川崎 貴子, 狩生 武彦, 神崎 政子, 九山 務
    1989 年 51 巻 4 号 p. 805-808
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    カモ, カモメおよびイワツバメの糞便822検体におけるYersinia Spp.の検出率はそれぞれ55.2, 30.5, 17.2%であった. Y. enterocoliticaの検出率はそれぞれ29.8, 12.4, 2.5%であり, 病原性の血清型は05, 27 (カルガモから3株, 検出率1.2%)のみであった. カモメから Y. pseudotuberculosis (3株, 検出率1.3%)が分離され, 血清型はすべて1bであった.
  • 筒井 敏彦, 河上 栄一, 織間 博光, 小笠 晃
    1989 年 51 巻 4 号 p. 809-811
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    犬の黄体期にPGF-analogueを投与した場合の性周期の短縮効果および繁殖成績について検討した. 実験犬はビーグル種で, 1~5才の30頭41例を投与時期によって4群に区別し, PGF-analogueを筋肉内に1回投与した. その結果, 排卵後25, 35および50日投与群では60日投与群および投与前(コントロール)に比較して約40日短縮し(P<0.01), この発情期における繁殖期成績は正常であることが分った.
  • 井上 勇
    1989 年 51 巻 4 号 p. 813-814
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    5羽の L. caulleryi自然感染越夏鶏を用い, schizontの体内分布を調べるため臓器乳剤を作製して鏡検した. その結果, 4羽から検出することができた. すなわち, 2羽の脳からそれぞれ3個, 15個, および肝臓から1羽は14個他の1羽からは2個検出できた. 従来から報告されている肝臓, 脾臓のうち脾臓からは検出できなかったが, 今回新たに脳から検出することができた.
  • 今井 優子, 井上 勇, 山田 政治
    1989 年 51 巻 4 号 p. 815-817
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    サルコシスチスの検査を, 新潟県18頭, 群馬県15頭および埼玉県3頭の合計36頭について実施した. その結果, 新潟県2/18頭群馬県14/15頭が陽性であったが埼玉県の材料はすべて陰性であった. 群馬県の材料から得られたcystを, 犬, 猫に投与したところ8日目に犬からsporocystの排池が認められた. Cystは長楕円形, 壁は薄く柵状構造を呈し大きさは520.60±55.07×57.72±4.45μmであった. Gametogonyは, 主として十二指腸から回腸の上皮組織にみられ一部は粘膜固有層でも認められた. 羊より報告されている既知の4種と比較した結果, Sarcocystis tenella (Railliet, 1886) Moule, 1886と同定された.
  • 柴田 勲, 浜野 厚, 深見 直
    1989 年 51 巻 4 号 p. 819-821
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    中和試験を用いて, 豚における豚ロタウイルスに対する抗体調査を実施した. S80, OSUおよびZ株に対してそれぞれ70.1%, 90.3%および92.0%の豚に抗体が認められ, 82.4%の豚は3株すべてに対する抗体を保有していた. 野外ではこれら3株が広く浸潤していることが示された.
  • 新井 敏郎, 富岡 玲子, 大木 与志雄
    1989 年 51 巻 4 号 p. 823-826
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    MSA投与により誘発された肥満性糖尿病KKマウスを若齢, 老齢の2群に分けエストロジェン投与の治療効果を調べた. エストロジェン投与により血中遊離脂肪酸が減少するのに伴い, 血糖値が低下し尿糖が消失した. 若齢雄マウスでは投与中止後, 尿糖が再び出現したが, エストロジェン再投与により尿糖は直ちに消失した. KKマウスの肥満性糖尿病の治療にエストロジェンが有効であることが明らかとなった.
  • 平原 正, 山中 盛正, 安原 寿雄, 松井 修, 児玉 和夫, 中井 正久, 佐々木 文存, 松本 稔
    1989 年 51 巻 4 号 p. 827-830
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    呼吸器症状を呈する豚の気道から分離された豚血球凝集性脳脊髄炎ウイルスNPTr 32株を脳内接種した10日齢の初乳未摂取子豚は少数例に軽微な脳炎像を認めたが, 経鼻接種した場合は呼吸器症状を呈し病理組織学的にも病変を認めた. 50~70日齢の肥育豚にウイルスを皮下接種しても無症状で経過したが, 経口や経鼻接種した場合, 軽度の呼吸器症状を呈し, 鼻甲介, 気管, 肺, 肺リンパ節お上び扁桃から2~10日間ウイルスが回収された.
  • 白方 壮一, 小沼 操, 桐沢 力雄, 高橋 清志, 川上 善三
    1989 年 51 巻 4 号 p. 831-833
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Theileria sergentiメロゾイトの分子量32,000と23,000のポリペプタイドに対するモノクローナル抗体を用い, 両ペプタイドの存在部位を知るためプロテインA・金コロイド法による免疫電子顕微鏡観察を行った. その結果両ペプタイドに対する抗体はメロゾイト表面にほぼ均一に結合した.
  • 斎藤 康秀, 板垣 博
    1989 年 51 巻 4 号 p. 835-837
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    E. tenellaの野外株3株および研究室株2株のプレパテント・ピリオドには平均122.0~142.8時間の株間の差がみられ最短期間と最長期間の間には統計的に有意差がみられた. 野外株の1株を, パテント・ピリオドの前半期および後半期にオーシスト回収を繰り返すことにより2系(6日系および13日系)に分け, それぞれを継代したところ13日系では6継代目でプリパテント・ピリオドに7.6時間の有意な延長がみられたが, 6日系では変化がみられなかった.
  • 及川 正明, 吉原 豊彦, 兼子 樹広
    1989 年 51 巻 4 号 p. 839-842
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    サラブレッド種における第III中手骨遠位の関節軟骨厚の加齢的推移を検討した. その結果, 関節軟骨厚は部位にかかわらず, 出生時に最大値を示し, 12力月齢頃まで急減した後, 24カ月齢頃まで漸減を続けたが, 以後ほほ一定の推移を示した.
  • 竹村 直行, 小山 秀一, 左向 敏紀, 安藤 研司, 内野 富弥, 本好 茂一, 丸茂 文昭
    1989 年 51 巻 4 号 p. 843-845
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ヒトANP測定用に開発されたRIAをウシ血漿及び尿中ANP測定用に応用したところ, 満足できる測定結果が得られた. 血漿中ANP濃度は, 妊娠も泌乳もしていない雌ウシや去勢雄牛と比較して, 泌乳牛や妊娠牛で顕著に高値を示した. 血漿及び尿中ANPの存在様式はαANPで, βないしはγANPは認められなかった.
  • 安里 章
    1989 年 51 巻 4 号 p. 847-848
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    大腸菌性乳房炎罹患牛23頭(甚急性14:急性9)の発症時の感染乳汁中のエンドトキシンの検出を Limulus coagulation test (LCT)により実施した. その結果, 甚急性乳房炎では7頭が陽性でこれらの症例はすべて死亡したが, 痕跡と陰性を示した症例に死亡例はなかった. 急性乳房炎では陽性牛はなく, 死亡例もなかった. 以上のことから, LCTは牛甚急性大腸菌性乳房炎の早期予後診断に応用可能であると考えられた.
  • 大滝 与三郎, 布谷 鉄夫, 田島 正典, 斎藤 和子, 野村 吉利
    1989 年 51 巻 4 号 p. 849-852
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    鶏貧血因子(CAA)の病原性が伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)の感染によって増強され, 14日齢または21日齢にCAAとIBDVを同時接種したひなでは, 七面鳥ヘルペスウイルスのマレック病(MD)防御能が顕著に抑制された. これらの事実と野外の鶏群で起こっているMDワクチン接種失効との関連について考察した.
  • 板垣 匡, 内田 明彦, 板垣 博
    1989 年 51 巻 4 号 p. 853-854
    発行日: 1989/08/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ナイジェリア産巨大肝蛭のミラシジウムに暴露したヒメモノアラガイは100%の感染率を示し, 多数のセルカリアを産出した. これはこの巨大肝蛭に対するヒメモノアラガイの感受性が非常に高いことを示唆している.
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