日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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北海道の日本脳炎の地方病的流行地域における蚊採集成績
高島 郁夫橋本 信夫渡辺 卓俊Rosen Leon
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1989 年 51 巻 5 号 p. 947-953

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抄録

北海道における日本脳炎(JE)ウイルスの媒介蚊を推定するために1985年と1986年に蚊の採集調査を行った. コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)の採集数はJEの異常産の発生した4養豚場のいずれでも極めて少なかった. 札幌近郊の1養豚場では, 1985年の7月から10月の採集期間に510匹の蚊が採集されたが, コガタアカイエカはわずか1匹のみであった. 上磯町の1養豚場では, 流産の発生している期間に987匹の蚊が採集されたが, コガタアカイエカは全く認められなかった. アカイエカ(Culex pipiens pallens), ハマダラカ種(Anopheles species), キンイロヤブカ(Aedes vexans nippoii), とヤマトヤブカ(Ae japonicus)がコガタアカイエカより優勢な蚊種であった. コガタアカイエカは, 日本において主なJE媒介蚊とざれているが, 北海道においては多分JE媒介蚊ではないと考えられた. 採集蚊(1985年の2,332匹と1986年の1,403匹)からウイルス分離を試みたが, JEウイルスを分離できなかった. JEウイルス分布の北限地域である北海道におけるJEウイルスの媒介蚊種を明らかにするためには, 今後より広範な疫学調査が必要とされる.

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