日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
Online ISSN : 1881-1442
Print ISSN : 0021-5295
ISSN-L : 0021-5295
51 巻, 5 号
選択された号の論文の42件中1~42を表示しています
  • 椚山 巌, 伊藤 伸彦, 古川 義宣
    1989 年 51 巻 5 号 p. 855-860
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    野外実験に使用可能な非放射性の安定同位体50Crを赤血球標識のマーカーとして用い, 中性子放射化分析法を利用して犬の血液量の測定に必要な諸条件および手技を検討した. 犬血液を標識する場合, 今回の実験で得られた結果から, 血液1mlあたり50Crを5μg添加し, 60分間インキュベーションした. 50Crで標識した血液を体内に注入し, 60分後に採血して注入前後の血液中50Cr濃度(濃度法)および51Cr/59Fe放射能比率(比率法)を中性子放射化法で測定し, 希釈割合から血液量を算定した. 両方法で求めた血液量は高い相関(r=0.97)を示し, ほぼ一致した測定値が得られた. 比率法は試料重量の測定, 照射中の熱中性子束密度の変動の補正が不要であるため, 濃度法より簡便であると考えられた. また50Cr法と従来臨床領域で用いられてきたエバンスブルー法で求めた単位体重あたりの平均血液量は, それぞれ89.8±6.8ml/kg, 98.9±10.6ml/kgであり, この差は有意であった. しかし, 血液量値の計算に用いたヘマトクリット値を0.97の係数で補正した結果, 両方法で求めた値は, ほほ一致した. 今回使用した実験系では, 50Crの検出限界は血液1mlあたり0.1ngであった. 50Crの添加量を血液1mlあたり5μgとし, 50Cr標識血液注入量を体重500kgあたり50mlとすれば, 大動物の血液量測定にも適用可能であることが明らかにされた.
  • 山手 丈至, 田島 正典, 東郷 正治, 渋谷 延子, 渋谷 一元, 工藤 悟
    1989 年 51 巻 5 号 p. 861-869
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ラットの可移植性悪性線維性組織球腫(MFH-MT)に由来する in vitro継代細胞(MT-P)の特徴を形態学的及び機能的に検討した. MT-Pには紡錘形細胞, 多角形細胞及び巨細胞が区別された. 電子顕微鏡的に, 多角形細胞及び巨細胞は多くのリソソームを含む豊富な細胞質と細胞突起を有していた. 一方, 紡錘形細胞は平滑な細胞表面を持ち細胞質にわずかのリソソームが認められた. 10-20%のMT-PにFc及びC3細胞表面リセプターに対するロゼット形成能及び貪食能が証明された. MT-Pは酸性フォスファターゼ, 非特異的エステラーゼ及びアルカリフォスファターゼに対し陽性反応を示した. MT-P 100個の細胞のクロモゾーム数は32から100の間に分布し, 64と76に二つのピークを示した. MT-Pを接種された同種ラットに出現した腫瘍の組織像は多彩で, 一部には組織球様細胞がシート状に密に配列した. また線維芽細胞様細胞がしばしばstoriform状に配列し, 時に粘液基質によって支持されていた. さらに, 骨肉腫様構造が散見された. これらの成績からMFH-MTは組織球の性質を有する細胞から成るが, 多彩な特徴を有する腫瘍であることが示唆された.
  • 筒井 敏彦, 佐藤 政範, 黒沢 紀子, 服部 郁子, 松永 秀夫, 村尾 育子, Stabenfeldt George H.
    1989 年 51 巻 5 号 p. 871-877
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    非繁殖期の猫22頭に豚下垂体製剤(FSH-P)を用いて発情誘起を行い, 胚移植の可能性を検討した. 胚は交尾後6-8日の5頭について子宮角から回収した結果, 4頭から拡張胚盤胞が回収出来た. これをHCGで排卵誘起した6頭のrecipientの子宮角に1頭あたり1-19個移植した. donorとrecipient間の排卵日の差は0.5日早い例が2頭, 1日遅い例が3頭, 残り1頭は同じであった. その結果, 6頭全例で受胎が認められ, 移植胚に対する胎子数は1/1, 1/2, 2/3, 2/6, 4/7, 2/19であった. 黄体機能低下を予想してprogeoterone投与を行った1頭を除く5頭では, 3頭は妊娠35日前後で流産した. 2頭は妊娠22, 25日に胎子が死亡したが, 胎盤のみで妊娠様状態を維持し, 36, 56日に娩出した. progesterone投与を行った例は, 妊娠66日に帝王切開で生存子猫を取り出した. 以上のように猫において非繁殖期にFSH-Pによって誘発した発情, 排卵で胚移植が可能であることが明らかとなった.
  • 瀧本 良幸, 菱沼 貢, 高橋 芳幸, 金川 弘司
    1989 年 51 巻 5 号 p. 879-885
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    マウスの早期妊娠因子(EPF)検出に及ぼす過剰排卵処置の影響を調べるために, 自然排卵および過剰排卵マウスについて妊娠中のロゼット抑制力価(RIT)の変動を比較した. どちらのマウスでも, 妊娠2日目にはRITが上昇しており, 妊娠15日目までその値は維持された. その後, RITは非妊娠域まで低下し, 再び上昇することはなかった. 妊娠2~15日目までの期間の平均RITについて, 自然排卵および過剰排卵マウス間で有意差は認められなかった. これらの結果から, 過剰排卵処置がその後の妊娠中のEPF検出およびその消長に及ほす影響はないと考えられた. 次いで, 受精の進行状態とEPF出現時期との関係を調べるために, 妊娠1日目の過剰排卵マウスについてRITの測定と卵子の検査を行った. その結果, 前核期卵子を有するマウスのRITは精子侵入卵子を有するマウスのRITに対して有意に高い値を示した(p<0.01). よってEPFは交配後, 前核期より母体血中に出現すると考えられた.
  • 親松 静江, 越 宏坤, 菊池 直哉, 平棟 孝志
    1989 年 51 巻 5 号 p. 887-891
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    北海道各地で飼育されている見かけ上健康な羊1,186頭の Corynebacterium pseudotuberculosisに対する抗体をELISAおよび免疫拡散法(ID)により調査した. ELISA陽性の羊は466頭(39.3%), また, ID陽性のそれは330頭(27.8%)で, 本菌感染羊が道内に高率に存在することが示唆された. IDはELISAよりも抗体検出感度がやや劣るが, 非特異反応が認められないこと, および簡便さの点で実用的な診断法と思われた. 多数を飼育している1牧場の758頭の羊の年齢と抗体陽性率の関係をみたところ, 抗体陽性率は, 1歳未満では低率であったが, 1歳で有意に急上昇し, 以後, 4-5歳まで加齢とともに上昇した.
  • 谷口 和之, 金崎 彩織, 見上 晋一
    1989 年 51 巻 5 号 p. 893-903
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ゴールデン・ハムスターの下垂体前葉の6種類の細胞型について, 周生期から老齢期まで免疫細胞化学と形態計測学の手法を併用して検討した. GH細胞は胎齢15日では前葉全体のうちごく僅かの面積を占めるに過ぎなかったが, 出生後急激に増加して若い成体で最大となり, 以後やや減少した. PRL細胞は生後3日に初めて出現し, その後急激に増加して前葉全体に分布し, 生後3週齢以降では常に雌で雄より大きな面積比を示した. ACTH細胞は前葉辺縁部に分布し, 胎齢15日で各細胞型中最大の面積比を示したが, それ以後相対的に減少して細胞型として2番目以下となった. LH細胞とFSH細胞はその約70%が両方の抗血清に反応したが, その面積比は常にLH細胞の方が大きかった. TSH細胞は胎齢15日には各細胞型中2番目の面積比を示したが, それ以後相対的に減少し, 3週齢以降では常に各細胞型中最小の面積比を示した. 下垂体前葉を構成する各細胞型における面積比の経時的変化は各段階におけるこれらの細胞型の活性を反映するものと思われた.
  • 林谷 秀樹, 近江 佳郎, 小川 益男, 福富 和夫
    1989 年 51 巻 5 号 p. 905-908
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1981年6月から1982年5月までの1年間に関東地方で死亡し, 動物霊園に埋葬された猫3936頭の死亡データを用いて, Chiangの生命表作成法に従って, 猫の生命表を作成した. これは家庭飼育猫について作成された最初の生命表と思われる. 生命表から算出された猫の平均余命は, 0歳で4.2歳, 1歳で5.0歳, 4歳で5.4歳, 5歳で5.3歳, 10歳で3.5歳, 15歳で2.2歳で, 最高死亡年齢は22歳であった. 猫の死亡確率は犬に比べ, 0歳から5歳にわたる幅広い年齢で著しく高かったが, 6歳以上においてはほぼ等しく, 犬と同様にGomperzの法則に従うように思われた. このように調査時点では猫の死亡確率の基本パターンは犬のものと著しく異なっていたが, 今後0~5歳の低年齢における死亡確率が減少した場合には, 両者のパターンは近似すると思われた. 1歳の平均余命(e1)は, 品種間(雑種, 純血種に大別)では差が見られなかったが, 地域間ではA地域(人口密度1万人以上)はB地域(1万人未満)に比べ有意に長かった. このことから, 犬の場合と同様, B地域ではA地域に比べ猫の平均余命を短くするような要因がより強く作用していることがうかがわれた.
  • 竹花 一成, 阿部 光雄, 岩佐 憲二, 平賀 武夫
    1989 年 51 巻 5 号 p. 909-915
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウマ十二指腸腺は2種類の細胞により構成されていた. 一つは終末部の大部分に存在する粘液細胞で他は幽門より後方約10cm付近までの終末部にしか存在しない漿液細胞であった. 粘液細胞の細胞質には, 種々の中性および酸性複合糖質を含んでおり漿液細胞には消化酵素の一種類であるlipaseも存在していた.
  • 辻 美保, 後飯塚 僚, 廣田 好和, 長谷川 篤彦
    1989 年 51 巻 5 号 p. 917-923
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコ伝染性腹膜炎(FIP)罹患ネコの末梢血好中球(PBN)および腹腔浸出細胞(PEC)の遊走能について, ザイモザン活性化血清(ZAS)およびPEC培養上清を用いて検討した. FIP罹患ネコPBNの10%ZASに対する遊走は健常ネコPBNのそれに比較し低下していた. そこでPBNの遊走能をZAS濃度を変えて検討したところ, FIP罹患ネコPBNの最大遊走を認めるZAS濃度は健常ネコのそれと比較して高い傾向を示した. このことからFIP, 罹患ネコPBNはZASに対する感受性が低下していることが示唆された. 一方, PEC培養上清に対する遊走はFIP罹患ネコPBNと健常ネコPBNの間で有意な差は認められなかった. FIP, 罹患ネコのPECはZASおよびPEC培養上清に対して遊走を示したが, PBNのそれと比較してZASに対しては感受性が高く, PEC培養上清に対しては低い傾向にあった. これらの所見から, FIP, 罹患ネコにおける好中球の化学遊走因子に対する反応は変化しているものと考えられた.
  • 前田 博之, 森 千恵子, 黒川 美千子, 湯浅 亮
    1989 年 51 巻 5 号 p. 925-933
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    と殺豚に, 褐色し脂質含量の増加した肝臓(肝臓変性)がしばしば見られる. 黒っぽく硬く乾いた感じのDFD肉は, 高い最終pHを特徴とし, 品質低下が指摘されている. 肝臓変性とDFD肉の発現要因は, と殺前の豚の消耗疲労という点でよく類似している. そこで, 両者の関連を調査検討した. 正常肝の総脂質量は6.0%以下であった. 正常肝を有すると殺豚では, 枝肉の最終pHは5.7付近まで低下し, 肉色は淡赤色で, と殺後24時間の筋肉組織では筋線維の萎縮が認められた. 肝臓変性肝の総脂質量は6.6%以上であった. 肝臓変性肝を有すると殺豚では, 枝肉は早い死後硬直を示し, ATPの分解を示す筋肉のR値は高かった. この枝肉77例中65例は6.0以上の高い最終pHを示し, 肉色は暗赤色で, 乾いた感じであり, と殺後24時間でも筋線維の萎縮は少なかった. これらのことは, 肝臓変性豚の枝肉には高率にDFD肉が発現することを示している. 53時間の絶食と筋肉運動を実験的に負荷した豚では, 肝臓は褐色し脂質含量は高かった. 枝肉の早い死後硬直と筋肉の高いR値が認められ, 5例中4例にDFD肉が発現した. このことから, と殺前の長時間の絶食やストレスを伴う激しい筋肉運動による消耗疲労は, 肝臓変性とDFD肉の両方を惹起する原因となることが示された.
  • 村田 浩一
    1989 年 51 巻 5 号 p. 935-940
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    動物園の飼育動物, ならびに動物園周辺で保護もしくは捕獲されたネコ, ネズミ, ドバトについて, ラテックス凝集反応によるトキソプラズマ(Tp)抗体保有調査を行った. 調査対象である動物園動物360個体のうちTp抗体価64倍以上を示したものは, ホ乳類10目28科中5%(9/181), 鳥類15目22科中6.7%(12/179)であった. ネコ43個体, ネズミ55個体, ハト82個体の陽性率は各々, 9.3%, 0%, 4.9%であった. これらの他の報告に比べて低い抗体保有率は, 動物園施設の衛生的改善や飼育動物中に占める野生捕獲動物数の減少によるものと考えられた. しかし, ベニイロフラミンゴやチンパンジーに認められた高い抗体価(1:8192と1:1024)と他の動物園内繁殖動物7個体にみられた64倍から512倍の抗体保有, さらに園内で捕獲されたネコ4個体における128倍から512倍の抗体価の存在から, 低率ではあるが動物園内におけるTp感染の成立が疑われた. このことから, 野生動物の取扱い, ならびにネコによる動物舎周辺の土壌汚染については, 動物の健康管理面のみならず公衆衛生面からも更に注意を続ける必要が示唆された.
  • 村上 隆宏, 三宅 陽一, 金田 義宏
    1989 年 51 巻 5 号 p. 941-945
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    不妊を主徴とする18頭の未経産牛(症例1~18)について染色体の分析を行った結果, 3頭にそれぞれ60, XY(症例1), 60, XX/60, XY (症例2), 61, XX, +20 (症例3)の染色体異常が認められた。症例3の母牛および症例1と3の半きょうだい雌牛, 症例2と全きようだいであることが疑われた雄子牛の染色体にはいずれも異常は認められなかった。
  • 高島 郁夫, 橋本 信夫, 渡辺 卓俊, Rosen Leon
    1989 年 51 巻 5 号 p. 947-953
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    北海道における日本脳炎(JE)ウイルスの媒介蚊を推定するために1985年と1986年に蚊の採集調査を行った. コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)の採集数はJEの異常産の発生した4養豚場のいずれでも極めて少なかった. 札幌近郊の1養豚場では, 1985年の7月から10月の採集期間に510匹の蚊が採集されたが, コガタアカイエカはわずか1匹のみであった. 上磯町の1養豚場では, 流産の発生している期間に987匹の蚊が採集されたが, コガタアカイエカは全く認められなかった. アカイエカ(Culex pipiens pallens), ハマダラカ種(Anopheles species), キンイロヤブカ(Aedes vexans nippoii), とヤマトヤブカ(Ae japonicus)がコガタアカイエカより優勢な蚊種であった. コガタアカイエカは, 日本において主なJE媒介蚊とざれているが, 北海道においては多分JE媒介蚊ではないと考えられた. 採集蚊(1985年の2,332匹と1986年の1,403匹)からウイルス分離を試みたが, JEウイルスを分離できなかった. JEウイルス分布の北限地域である北海道におけるJEウイルスの媒介蚊種を明らかにするためには, 今後より広範な疫学調査が必要とされる.
  • 早崎 峯夫, 大石 勇
    1989 年 51 巻 5 号 p. 955-960
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    宿主(犬)の免疫防御能による犬糸状虫感染防御効果を検討するために2種類の免疫抑制剤を用いて, 犬糸状虫感染実験を行った. アザチオプリン(AZP)投与群の3頭は, 家験感染前3日より感染後7日までAZP 1mg/kgを, 8日以後は投与量を増加(最大10mg/kg), 減少あるいは休薬しながら連続経口投与した. プレドニゾロン(PDS)投与群の2頭は実験感染前3日より感染後15日の17日間に10mg/kgを, 60日-70日までの11日間は8.3mgまたは5mg/kgを連日皮下注射した. 犬糸状虫特異抗体産生の推移は間接赤血球凝集反応により観察した. AZP投与群では実験期間を通じて確実に抑制され, PDS投与群では32日まで確実に抑制されたが以後抗体産生がみられた. 実験犬は感染後145-148日に剖検し虫体回収率を比較したが, 両投与群とも対照群2頭との間に有意差は認められなかった.
  • 細見 修, 竹屋 章
    1989 年 51 巻 5 号 p. 961-968
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    我々は, ウシ(ジャージ種)初乳中に初めて水溶性の(α1-3)ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を見出だし, ρ-ニトロフェニル-β-ラクトシドを受溶体に用いることで容易に検出できることを明らかにした. アイソトープラベルした酵素反応生成物は, α-ガラクトシダーゼによってのみ分解され, 又, メチル化, 加水分解, 薄層クロマトグラフィーによって, ガラクトースがρ-ニトロフェニル-β-ラクトシドの非還元末端側ガラクトースのC-3にα-結合していることが明らかになった. 更に, この酵素は, Mn2+イオンを必要とし, 至適pHは, 6.5から7.5であった. しかし, この酵素は, ヒ卜のO型赤血球をB型活性血球に変換することは出来ず, ヒト血液型のB合成酵素とは異なるものであることが明らかになった.
  • 渡辺 清隆, 蘇原 正, 武田 美和, 上野 究, 鈴村 直広, 六朗田 靖, 六朗田 巌, 山本 晋二
    1989 年 51 巻 5 号 p. 969-974
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    馬血清トランスフェリン(Tf)の5つの遺伝的変異型(D, F, H, O, R)は, ポリアクリルアミドゲル等電点電気泳動(PAGIEF)においてそれれぞれ主要な2本のバンドを与え, より陽極側に泳動するバンド(成分a)は, より陰極側に泳動するバンド(成分b)より濃く染色された. TfO変異型の成分a及びbは, 二重免疫拡散法により免疫学的に互いに区別できなかった. それぞれの変異型の成分a/成分b比を測定した結果, 変異型は3.4~4.0の範囲の比較的高い成分比を有する変異型D, F, Hのグループと1.8~2.3の比較的低い成分比を有する変異型O, Rのグループに分類された. 以上の結果及びすでに報告されている成分a及びbの糖質組成のデータから, これら2つのグループの間には糖鎖形成の相違があると考えられる.
  • 武石 昌敬, 柴田 真, 津曲 茂久
    1989 年 51 巻 5 号 p. 975-980
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    牛胎子の妊娠5~9ヶ月および新生子の出生直後と5日目の血中ACTHとコルチゾール値について検討した. その結果, 牛胎子血中ACTHは妊娠5~7ヶ月で60.8±17.8pg/mlから71.3±19.7pg/mlの範囲で推移したが, 8ヶ月で239.2±261.5pg/ml, 9ヶ月では406.9±409.4pg/ml上昇した. 出生直後の新生子では, 182.3±110.7pg/mlに低下した. 牛胎子血中コルチゾール値は妊娠5~8ヶ月で3.23±2.12ng/mlから3.85±2.52ng/mlの範囲で推移したが, 9ヶ月でやや上昇し, 新生子の出生直後で88.35±42.78ng/mlと急増した. 胎子期の5~7ヶ月におけるACTHとコルチゾール値との間には相関性は見られなかったが, 8~9ヶ月および新生子においては有意な正の相関が見られた. しかし, 出生直後の血中コルチゾール値が急増したのに対しACTH値の同期的増加は見られなかった. このことより牛胎子の下垂体一副腎皮質系は妊娠末期に成熟し, 胎子副腎のACTHに対する感受性の増加が分娩誘発の引金となることが示唆された.
  • 大場 茂夫, 鳥海 弘, 武石 昌敬, 野田 亮二
    1989 年 51 巻 5 号 p. 981-985
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    豚穿孔ヒゼンダニに罹患している母豚を対象に, 体重kg当り75μg, 150μgおよび300μgのイベルメクチンをー回頚部皮下注射し, 投薬時, 投薬後1週目, 2週目および4週目に虫体数および虫卵数を算定し, イベルメクチンの豚穿孔ヒゼンダニに対する効果を調べた. イベルメクチン投与の3群に対照群に比較して, 投薬後顕著に虫体数および虫卵数は減少した. 特にイベルメクチン体重kg当り300μg投与では, 投薬後1週目よりほほ完全に虫体および虫卵が認められなくなり, 非常に効果のあることが確認された.
  • 田村 啓二, 谷津 寿郎, 伊藤 博, 元井 葭子
    1989 年 51 巻 5 号 p. 987-994
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ウシ血清より急性期反応蛋白の一つであるα1AGの精製を試みた. ウシ血清α1AGは分子量42,000±2,000, 糖合量26.6%で極めて酸性の等電点(pI.3.2-3.7)を有し, α1-グロブリン領域に泳動された. 抗ウシα1AG血清を用いた免疫拡散法で健康ホルスタイン(年齢1~12歳; 雄95例, 雌57例)の血清α1AGを測定したところ, 283.2±82.3μg/ml(平均値±標準偏差)であった. この結果から正常値の上限を450μg/mlと定め, 451μg/ml以上を異常値とした. 次いで疾病牛の血清α1AGを測定したところ, 異常値を示したのは創傷性心膜炎で100%(9/9例), 関節炎で100%(8/8例), 乳房炎で91%(20/22例), 肺炎で70%(7/10例), 腸間膜脂肪壊死症で43%(3/7例)であった.
  • 高橋 雄二, 飯田 正明, 西田 由美, 城戸 靖雅
    1989 年 51 巻 5 号 p. 995-1001
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    アンピシリン(ABPC)水性懸濁液(200mg力価/ml) 5m1を8頭の子牛(体重50-150kg)の左右の臀部および大腿部に筋肉内注射し, 1時間後に屠殺解剖して薬剤の投与部位を確認した. その結果, 薬剤を確実に筋肉内投与するためには, 長さ15mmの注射針を用いて(1)臀部の中心部と寛結節を結んだ線上の中間部, (2)臀部中心部と坐骨結節の線上の中間部(M-CTo)および(3)大腿部の半腱様筋中心部(CF)に注射する方法が推奨された. ABPC水性懸濁液5mlを7頭の子牛(体重130-150kg)の左右のM-CToおよびCFに筋肉注射し, 1時間後(4頭)および3日後(3頭)に屠殺解剖した. 筋肉内に投与されたABPCは筋線維の走行に添って拡散するが, 放射線方向にはほとんど拡散しなかった. 3日後では, ABPCは注射部位筋肉内にのみ検出され, 隣接した別の筋肉内には認められなかった. 注射部位筋肉内のABPC濃度は部位により大きく異なっていた. 以上の結果から, 残留試験における注射部位筋肉の採材法として, 注射点を中心に約100gの筋肉を薬剤の拡散形に則して採材するとともに, その周囲の筋肉を約200g採材する方法が考えられた.
  • 磯貝 浩, 磯貝 恵美子, 藤井 暢弘, 小熊 恵二, 張 国利, 出日 英三郎, 高野 一雄, 林 正信, 波岡 茂郎
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1003-1010
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Achromobacter stenohalis由来のリポ多糖(A-LPS)の生物活性を調べた. A-LPSは典型的なりポ多糖とは構造が異なっでいた. A-LPSを投与されたマウスはエンドトキシンショックを起こさなかった. A-LPSはin vitroにおいてマウスおよびヒ卜のマクロファージおよびBリンパ球に対し強い活性を示した. すなわちA-LPSでマクロファージを刺激したところ, IL-1分泌, IFNの産生および化学発光が誘導された. A-LPSは脾臓Bリンパ球に対し強いマイトジェン活性を有していた. しかし, Tリンパ球におけるIL-2分泌の誘導は観察されなかった. A-LPSのIL-2以外のこれらの活性は腸内細菌由来のLPSよりも高かった.
  • 平賀 武夫, 阿部 光雄, 岩佐 憲二, 竹花 一成, 手塚 誠
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1011-1015
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    7本の足をもった1例のホルスタイン種雄子ウシを肉眼的およびX線学的に観察した. 外観上, 2本の正常な前肢, 2本の正常な外側後肢, 2本の発達の悪い内側後肢および1本の殿部に付着する過剰前肢がみられた. この過剰前肢は発達の悪い上腕骨, 重複した尺骨, 数個の手根骨, 部分的に重複した中手骨および3個の蹄をもった3列の指骨から構成されていた. この肢は, 痕跡的な脊柱および肋骨と考えられる不規則な形をした骨を介して寛骨に付着していた. 寛骨は2組存在していた. 陰茎, 陰嚢は重複しており, 腎臓と精巣は3個認められた. 本例は寄生性殿結合体と二殿体の合併したウシの初めての報告である. この極めて珍らしい先天異常の発生機序を簡潔に考察した.
  • 渋谷 一元, 田島 正典, 山手 丈至, 伊原 三重子, 工藤 悟
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1017-1024
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    コレステロール投与によって誘発された高脂血症及び加齢がFischer344ラットにおける肺泡沫細胞(PFCs)の発生に及ほす影響を調べた. 雌雄ラットに1000mg/kg/dayのコレステロールを30日間, 6週齢から10週齢まであるいは33週齢から37週齢まで, 経口投与した. 対照ラットには懸濁用媒体のみを同様の方法で投与した. 37週齢時の対照群及びコレステロール投与群における総コレステロール, リン脂質, トリグリセリド(TG), β-リポ蛋白(β-LP), 及びカルシウムの血漿中濃度は, 10週齢時よりも高かった. コレステロール投与群におけるβ-LPとTG濃度は, 10及び37週齢時において対照群よりも有意に高いか, あるいは高い傾向を示した. 投与群の雄ラットは37週齢時に最高のβ-LP濃度を示し, これは同群における最高のPFCsの発生率と相関した. PFCsは単独で, あるいは小集塊を形成して気管支周囲及び胸膜下に出現した. PFCsは中性脂肪とコレステロールを含む多数の微細空胞を充満した豊富な細胞質を有した. PFCsはPASで陽性に染まり, 免疫組織化学的に抗ラット単球/マクロファージ単クローン抗体及び抗リゾチーム抗体に染色された. 中等度に腫大し, 泡沫状外観をもつマクロファージが肺の血管周囲結合組織に観察され, これらの細胞はPFCs発生の初期段階を示すものと考えられた. これらの観察は, ラットにおいてコレステロ-ル投与及び加齢の結果として発生する高脂血状態, 特に高β-リポ蛋白血症が, PFCsの発生に関与する事を示唆する.
  • 堀本 泰介, Limcumpao Joselito A., 遠矢 幸伸, 高橋 英司, 見上 彪
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1025-1027
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    FHV-1感染における血清試験法として用いられる中和試験において, 感作反応時にモルモット新鮮血清を添加することにより, 無添加時あるいは非働化モルモット血清添加時に比べ8倍から32倍の中和抗体価の上昇が実験感染猫血清において認められた. また野外血清でも, 2倍から16倍の上昇が見られた. これらの成績は, 抗FHV-1血清中に補体の添加により活性上昇を示す中和抗体が存在すること, ならびに補体添加マイクロ中和試験が血清試験法として有用であることを示唆する.
  • 菊川 馨一朗, 亀井 孝幸, 鈴木 勝士
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1029-1031
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    軟骨の細胞外基質とグリコサミノグリカン(GAG)の減少が特徴的な, ocd/ocdラットの約50%に尿管の拡張, 小腎臓, 腎欠損, 癒合腎, 種々の腎臓の位置異常など, 類似疾患には報告されていない異常で, 後腎の発生異常や移動の異常により説明される多様な形態異常が認められた. これらの多様性は, 後腎の発生およびその後の移動にはGAGの代謝に関与する遺伝子を含め多数の遺伝子が関与していることを示唆している.
  • 林 一彦, 木場 秀夫
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1033-1035
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコ前臼歯エナメル質の微小硬度値(V.H.N.)は表層部337.0, 中層部307.0, 深層部273.5で, 表層から深層に向かうにしたがって, 次第に硬度が低くなっていた. 象牙質においても同様な傾向が認められ, 表層部(エナメル象牙境付近)で75.9, 中層部は64.7, 深層部(歯髄腔付近)では41.1となっていた.
  • 林 良博, 西田 隆雄, 庄武 孝義, 川本 芳
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1037-1039
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネパールにおいてヤク5頭の頭蓋計測をおこない, アジア在来牛6集団および野生バンテンと多変量解析法を用いて比較した. その結果, ヤクはアジアの野生および在来牛と著しく異なる形態の頭蓋を有することが示された.
  • 鈴木 利行, 佐藤 繁, 大島 寛一
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1041-1043
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    黒毛和種, 11才の雌牛にみられた盲腸腺癌の症例を検索した. 盲腸に原発病巣を認め, 大網および十二指腸をはじめ腹腔内各所漿膜面に播種性転移が認められた. 腫瘍細胞の配列は腺管状構造を呈し, その核は, 明調で円形ないし類円形, 細胞質は比較的豊富で弱好酸性を示した.
  • 佐藤 英明
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1045-1047
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    タバコ(Nicotiana tabacum)の髄からエタノールで抽出し, ダウエックス(Dowex 1-x8)のカラムにかけ, 0.1N塩酸で溶出する分画を得たが, 本分画にマウス卵母細胞の体外培養下での卵核胞崩壊やブタ精子の運動性を抑制する作用を認めた. また本分画の抑制作用はサイクリックAMP誘導体の共存下で顕著に増強し, cAMPと共通の作用機序をもつと推察された.
  • 萩尾 光美, 村上 隆之, 大塚 宏光
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1049-1053
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    左心室型単心室の症例(ホルスタイン種, 雌, 9日齢)に系統的な断層心エコー図診断を実施し, 生前に確定診断を得ることができた. カラードプラ法では, 主心室腔(左室)から, 心室間交通路を経て痕跡的心室腔(右室)ヘ至る収縮期および拡張期の一方向性・2相性の短絡血流が観察された. 断層およびドプラ心エコー図法は本奇形のような複雑心奇形の診断・血行動態の分析に有用であると考えられた.
  • 宇塚 雄次, 中畑 功一郎, 竹田 良子, 後藤 直彰
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1055-1058
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    発作を主訴とする犬の脳波検査を実施したところ, 6Hz陽性棘波群が右前頭部に出現した. この異常脳波はヒトでもその臨床的意義が明らかとなっていないが, 患犬の病理学的検査では, 右側側脳室の片側性拡張と, 異常脳波出現部位の皮質で非化膿性髄膜炎の存在が実証された. 従って, 6Hz陽性棘波群は, 犬においても中枢神経系の異常を示す一つの診断基準と成りうることが示唆された.
  • 中村 政幸, Istiyaningsih , 中島 直彦, 梶 隆, 佐藤 静夫
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1059-1061
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    インドネシアの健康な牛, 豚の糞便から分離したサルモネラの血清型は, 牛ではS. newport, S. dublin, 豚ではS paratyphi-Bが多く, 他にS. lexington(牛, 豚), S. typhimunun(豚), S. enteritidis(豚)等も分離された. これらの分離株はすべて薬剤感受性であり, プラスミドはS. typhimurium, S. dublin, S. enteritidis等において検出された.
  • 中島 永昭, 大石 英司, 岡部 達二, 岩本 市蔵, 佐々木 文存
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1063-1066
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    BHV-1感染牛精巣細胞可溶化抗原より精製した糖蛋白(GP)及び蛋白(P)抗原についてELISAを試み, 細胞可溶化抗原と比較した. その結果, 細胞可溶化抗原の有する特異反応は主としてGP抗原によることが明らかとなった. 更に, 細胞可溶化抗原を用いた場合より中和抗体と良好に相関するELISA抗体が得られたことから, 本GP抗原を用いたELISAは, BHV-1の血清学的診断に有効であると考えられた.
  • 小野 憲一郎, 長谷川 貴史, 長谷川 篤彦, 友田 勇
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1067-1069
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    糖尿病牛の膵島細胞構成について免疫組織化学的に検討したところ, インスリン含有細胞の著明な減少, グルカゴンおよびソマトスタチン含有細胞の増加が観察された. これらの所見はヒ卜のインスリン依存性糖尿病のそれと類似しており, 本例に認められた低インスリン血症や高グルカゴン血症などの病態をうらづけるものであった.
  • 小野寺 節, 谷口 稔明, 吉原 一浩, 佐藤 真澄, 本間 惣太
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1071-1074
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    2型レオウイルスBN-77株を接種された2-3日齢NCマウスでは, 胸腺および膵臓におけるウイルスの増殖は観察されなかったが, 膵臓においてはウイルス増殖がみられ, 105pfu/膵に達した. 膵島には膵島炎がみられたが, 外分泌細胞の変化は観察されなかった. 軽度の肝炎, 肺炎および心筋炎と, 全身リンパ組織における重度の萎縮が観察された.
  • 清宮 幸男, 伊藤 博, 大島 寛一
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1075-1077
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    6歳齢の去勢羊が起立不能, 視力障害, 間欠性痙攣を示し死亡した. 肉眼的に, 大脳皮質領域に巣状の帯黄色病巣の多発が両側性に観察された. 組織学的に, 大脳皮質領域に神経細胞の乏血性変化, 血管および神経細胞周囲の水腫性拡張および神経網の疎性化が認められた. 発症までの3か月に行われた頻繁な飼料の切り替えが本症発生にかかわっていたのではないかと疑われた.
  • 播陳 眞眞, 藤原 公策
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1079-1082
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    チンチラの大腸上皮細胞を透過および走査電子顕微鏡で検査した. 上皮細胞の微細構造は部位によって違いを示し, 盲腸および大結腸の吸収上皮細胞はグリコゲン顆粒と基底陥入を持っていたが, 小結腸には見られなかった. また, 大腸の杯細胞, 内分泌細胞, AFE細胞などにもグリコゲン顆粒や基底陥入は認められなかった.
  • 宇塚 雄次, 松波 健二, 徳力 幹彦, 土井 章三, 増田 千佳, 河原 貴子, 松本 治康, 田中 幹郎
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1083-1086
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    1歳齢のシェルテイと3.5力月齢のミニダックス犬に対し, 聴性脳幹誘発反応を適用して, 聴覚障害を客観的に評価することができた. 前者では左右の片側刺激でどちらでも誘発反応がI波から消失しており, 両側性の聴覚欠損が存在することが確認された. 後者では左側刺激に対してのみ反応が生じ, 右側刺激では波形は現れなかった. この検査結果から, 獣医学領域でも聴性脳幹誘発反応の有用性の確認ができたと考えられた.
  • 濱田 彰子, 菊川 馨一郎, 鈴木 勝士, 本好 茂一
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1087-1090
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    遺伝的に水腎症を発症するラットにおいて, 尿管の筋電図を吸引電極法により, 腎孟側(p), 中央部(m)および膀胱側(d)の3部位で同時記録した. 水腎症側の尿管では腎孟側の放電の振幅が小さく, p→m→dにおいて必ずしも1:1:1の割合で伝播しなかったことから, 尿管の尿輸送機能の低下が腎孟尿の貯留を進行させる可能性が示唆された.
  • 木村 順平, 松本 好弘, 月瀬 東, 岡野 真臣
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1091-1094
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    ネコの卵胞内卵ならびに卵管内卵に対して, レクチン法を含む糖検出のための諸染色を適用し検討した. 透明帯は中性および酸性糖質を多く含み, またこれらの物質は卵胞内卵よりも卵管内卵透明帯のほうに多く含まれ, また, D-GlcNAcなどの糖残基も卵管内透明帯で多く局在し, 卵管上皮由来の糖タンパク質が新たに付加されることが示唆された.
  • 磯貝 浩, 磯貝 恵美子, 脇坂 仁美, 三浦 宏子, 高野 一雄, 林 正信, 波岡 茂郎
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1095-1097
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    Bacteroides gingivalisリポ多糖(B-LPS)を歯肉炎自然発症ラット(SUS)および対照ラット(RES)の静脈内に投与した. B-LPSのLD50はSUSおよびRESでそれぞれ42.4および18.5μg/gであった. LPS投与ラットには出血壊死病変を認めた. B-LPSに対するSUSのマクロファージ応答性はRESのそれと同程度であったが, 好中球応答性は著明に低かった. このことは, SUSのB-LPSに対する感受性がRESに比べて低いことに関連していることを示唆した.
  • 佐藤 宏, 神谷 正男
    1989 年 51 巻 5 号 p. 1099-1101
    発行日: 1989/10/15
    公開日: 2008/02/13
    ジャーナル フリー
    宿主(スナネズミ)のプレドニゾン処置・週齢・性別が, 経口投与したTaenia crassicepsシスティセルクスの初期定着に及ほす影響を検討した. スナネズミの週齢・性別によっては小腸内での定着数に有意差は認められなかったが, 感染以前からのプレドニゾロン処置により定着数は減少する傾向があった. 成個体と比べると, 幼若個体では小腸から腹腔内ヘ移行する虫体が著しく多く, 総回収数にも有意差が認められた.
feedback
Top