抄録
持続感染牛17頭および粘膜病牛12頭から最近分離した牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルスの抗原性状を既知のウイルス株と比較した. 既知のウイルス株は, 交差中和試験により2群(N, K群と仮称)に大別された. 野外分離株の抗原性状は, ウイルス分離材料の由来により異なっていた. 持続感染牛から分離した17株のうち12および2株がそれぞれK群, N群ウイルスと類似した抗原性状を示し, 残りの3株は分類不能であった. 一方, 粘膜病由来ウイルスのうち10株がN群ウイルスと見なされ, 2株はいずれの群にも属さなかった. 粘膜病由来ウイルスの中にK群ウイルスと見なされるウイルスはなかった. 1974~1988年に北海道内で採取した牛血清713について, 両群ウイルスに対する抗体調査を行った. その結果, 1981年以前にはK群ウイルス以外の感染が多く, K群ウイルスの感染が示唆される牛は存在しなかった. K群ウイルスの感染が疑われる牛は1982年に初めて出現し, 最近は同ウイルスによる感染が増加傾向にあることが明かとなった. 以上の成績から野外には様々な抗原性状を有する牛ウイルス性下痢・粘膜病ウイルスが流行していること, また同ウイルスの病原性と抗原性状が関連する可能性が示唆された.