1990 年 52 巻 1 号 p. 145-154
帝王切開, 人工哺育で作出されたSPFビーグルの繁殖コロニーで, 4腹の新生仔19匹中9匹が生後10~17日で死亡あるいは瀕死期殺された. 剖検所見では腎臓の包膜下に小出血斑が密在し, 割面で楔型の出血斑が認められた. また, 肺のうっ血水腫, 肝臓のうっ血および脾腫がみられた. 肺, 肝臓および腎臓から分離された細胞病原性因子はイヌヘルペスウイルスと同定された. 飼育室内のビーグルは, 感染を境にして分離ウイルスに対する中和抗体が陽転した. 病理組織所見は全身諸臓器の多発性巣状壊死および出血として特徴づけられた本症の所見に一致した. これらの所見に加えて腎臓の楔型の壊死巣内を走行する動脈壁に類線維素壊死がみられ, この血管壁の変性と特徴的な楔型の壊死巣形成との関連性が注目された. コロニー内ではその後同様な疾病の発生はなく, 本症の発生は一過性であった.