乳腺上皮細胞の増殖状態とその細胞形態を研究するための一助として, 正常ネコ乳腺組織およびその乳汁由来細胞の培養を試みた. 乳腺組織からの上皮細胞の分離は平塚らの方法に準じて行い良好な結果を得た. 増殖した細胞のうち多型細胞と大型紡錘型細胞は免疫組織化学的にケラチンおよびアクチンに陽性を示し, 上皮細胞の特徴である敷石状の配列を示しながら増殖した. 退行期の組織からはおもに小型紡錘型細胞が増殖し, これは抗ケラチン抗体に陰性であり, 線維芽細胞と考えられた. ネコの乳腺腫瘍に特徴的に出現するケラチン抗体陰性, アクチン抗体陽性を示すと考えられる筋線維芽細胞は今回の正常乳腺の検索では観察できなかった. 乳汁由来の細胞は培養皿に接着して小さいコロニーを形成したが, 数日で剥離した. これは培養時の細胞数が少なかったためと考えられる.