種々な毒性試験に使用されたビーグル犬925例中17例に組織学的な偶発性限局性汎動脈炎が認められた. 動脈炎は心筋外および心筋内冠状動脈, ならびに骨髄, 脊髄髄膜, 延髄髄膜および精巣上体白膜内動脈の小型および中型動脈に弧在性に分布していた. 病変は動脈全層に亘る種々な過程の炎症性変化から構成されており, 急性期の症例では内膜の類線維素性壊死, 慢性期の症例では内膜の線維性肥厚を特徴とし, いずれの症例にも動脈全層に亘って種々な割合で構成される炎症細胞の浸潤を伴っていた. 炎症細胞は形質細胞, リンパ球, 大喰細胞および好中球から構成されており罹患動脈周囲に分布する炎症細胞内にはIgGあるいはIgMが認められた. 自然発生および薬物誘発性動脈病変は形態学的に類似しており, 種々な薬物の血管毒性の評価に混乱を招来する可能性がある. ビーグル犬に自然発生した動脈病変の形態ならびに, その分布の特徴は薬物の安全性評価, 特に血管毒性評価をする上で極めて重要と思われる.