日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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ウシの胃, 腸および付属リンパ節における免疫グロブリン保有細胞の分布比較
佐藤 繁扇元 敬司中井 裕
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1990 年 52 巻 1 号 p. 63-70

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抄録

ウシの前胃においてルーメン細菌に対する免疫応答が存在するか否かを検討する目的で, 健康な黒毛和種の子牛, 成牛およびその胎児の胃と腸粘膜および付属リンパ節における免疫グロブリン(Ig)保有細胞を免疫組織化学的に検索し, その分布を比較した. その結果, 1~90日齢の子牛10例中4例(32, 37および90日齢)および5~7歳の成牛5例全ての前胃粘膜固有層において, IgG保有細胞が検出されたが, IgAおよびIgM保有細胞は全く認められなかった. 前胃付属リンパ節においては, いずれのIg保有細胞も検出されなった. 一方, 子牛5例および成牛全例の第四胃, 小腸および盲腸粘膜固有層, また, 子牛6例および成牛全例の腸間膜リンパ節において, IgG, IgAあるいはIgM保有細胞が検出されたが, いずれもIgG保有細胞が多数認められた. 6~8力月齢の胎児5例では, いずれの組織においてもIg保有細胞が全く検出されなかった. これらのことから, 子牛および成牛の前胃において粘膜免疫機構が存在すると考えられたが, その機構は腸管に比べ極めて貧弱であることが示唆された.

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