抄録
1985年10月及び1987年5月に, 1と畜場に搬入されたウシ161頭の扁桃からブドウ球菌の分離を試みるとともに, 分離菌のファージ型について調べた. 121例 (75.2%) からブドウ球菌が分離された. 分離菌は計15菌種で, うち10菌種はノボビオシン感受性のものであった. 最も分離頻度の高かった菌種はS. simulans79.3%, ついでS. aureus20.7%, S. chromogenes10.7%, S. epidermidis8.3%の順であり, その他11菌種では0.8%~5.8%の割合で分離された. 同定不能株は26例 (21.5%) から分離された. 62例 (51.2%) の同一扁桃からは2~5種類のブドウ球菌が同時に分離され, 他の59例 (48.8%) では1菌種のみが生息していた. 菌種の組み合わせで最も多くみられたのはS. simulansと他菌種 (1~4菌種) のもので, 約41%を占めた. 分離菌種の主要ファージ型は, S. aureusでは119と116であり, コアグラーゼ陰性ブドウ球菌ではPh5/Ph9/Ph10/Ph12/Ph13/U4/U14/U16/U20/U46であった. 以上の成績から, ウシの扁桃にはブドウ球菌が高率に保菌されていること, またその大多数はノボビオシン感受性の菌種であることが明らかにされた.