日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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肺動脈に寄生する犬糸状虫の肺高血圧に及ぼす影響
北川 均佐々木 栄英石原 勝也平野 勇二
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1990 年 52 巻 6 号 p. 1211-1217

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抄録

肺動脈に寄生する犬糸状虫が肺高血圧に直接関与するかどうかを検討する目的で, 肺動脈から犬糸状虫を摘出する前後と肺動脈へ犬糸状虫を挿入する前後に肺動脈圧等を測定した. 8から46匹の犬糸状虫が摘出された10例の犬糸状虫寄生犬では, 平均肺動脈圧は, 犬糸状虫摘出前の24.5±7.9mmHgから摘出直後には16.3±4.9mmHgに下降した. 右心拍出量は7例で減少し, 総肺血管抵抗及び右心仕事量も有意に減少した. 犬糸状虫摘出24時間後, 生きた状態で保存した犬糸状虫をもとの実験犬の肺動脈に挿入した. 犬糸状虫挿入直後, 平均肺動脈圧は有意に上昇した. 右心拍量は7例でさらに減少したが, 総肺血管抵抗及び右室仕事量は増加した. 一方, 12から42匹の犬糸状虫を肺動脈に挿入した5例の非寄生犬では, 挿入直後に肺動脈圧は有意の変化を示さなかったが, 1回拍出量は減少し, 総肺血管抵抗は増加した. これらの結果は, 犬糸状虫の存在と肺の病変が複雑に関与するが, 肺動脈に寄生する犬糸状虫が肺高血圧に直接関与することを示唆する.

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