可視化情報学会誌
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液滴蒸発と熱流動現象:赤外線カメラによるアプローチ
喜多 由拓
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2022 年 42 巻 163 号 p. 7-10

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抄録

数多くの産業プロセスにおける素過程である液滴蒸発は,物質移動,伝熱,対流および濡れといった様々な熱流体現象が連成しており,適切な方法を用いることでその複雑かつ美しい現象を見て学ぶことができる.赤外線(IR)サーモグラフィは温度場や流れ場を乱すことなく液滴の温度分布情報を得ることができるので,この10年で使用が広がっている.しかし,IRカメラから直接得られた温度画像にはあまり意味がない場合がある.有意な温度情報を得るには,計測対象の赤外放射特性を考慮したデータ処理が必要である.本稿では,IR画像から液滴の気液界面温度を算出する方法を紹介する.これによって湿度環境下で蒸発するエタノール液滴の表面では,周囲の水蒸気が凝縮することが明らかになった.また,水滴を局所加熱することで発生させた熱毛管対流現象をIRカメラで詳細に観察することにも成功した.この現象は,微小量液体の混合・撹拌技術への応用が期待される.

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© 2022 社団法人 可視化情報学会
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