我が国の古建築に多く見られる斗栱は,柱頭と丸桁の間に設置されるブラケットの役割を果たす部材であり,その地震時挙動は明らかになっていない.そこで,古建築の地震時挙動を明らかにすることを目的として斗栱の動的加力試験をおこなった.動的加力試験において,変位計で挙動を把握することは,変位計同士の接触など配置的な問題から困難である.そこで,本実験ではモーションキャプチャを用いて斗栱の挙動を可視化した.併せて,同仕様・同寸法のヒノキで新築した斗栱を用いた動的加力実験の結果と比較をおこなうことで,古建築の持つサステナビリティについて考察をおこなった.実験の結果,斗栱は,約150年の年月を経ても新築した斗栱と同等の特性を有することが確認された.斗栱は,主たる成分が摩擦抵抗となるディテールとすることで,木材の経年変化の影響を受けにくくしていることが推察された.
本研究の目的は,介護現場でも活用可能でかつ正確なデータが得られる計測の仕組みの提案と,その使用経験について報告することである.介護現場での使用を想定し,本研究では2名の地域在住高齢者を対象として実験を実施した.計測機器にはスマートフォン3台(iPhone, Apple社製)とノートパソコン1台で構成されるマーカレスモーションキャプチャーシステムOpenCapと,慣性センサーのORPHE CORE(オルフェ社製)を用いた.本研究では,OpenCapで計測されたデータを,筋骨格モデリングソフトANYBODY(テラバイト社製)を用いて解析することで,筋に生じる負担や関節に生じる負担の分析を可能にした.本研究ではこれらの計測機器を組み合わせることで,介護現場でも活用可能でかつ正確なデータが得られる計測の仕組みとして活用することにした.2つの計測機器を用いた歩行の計測方法については簡便かつ短時間で実施することができ,介護現場においても十分活用可能であると考えられた.
超高齢社会における健康寿命の延伸に、口腔の審美意識が関与するという仮説のもと、多施設による調査を実施した。一般社団法人日本歯科審美学会会員の所属する病院および歯科医院に通院している60歳以上の患者で調査の主旨に同意が得られた192名を対象に20項目の質問票ならびに口腔内所見、全身状態の関連をAIにより解析した。
サポートベクターマシンによる教師あり学習の解析結果をもとに、再帰的特徴量削減により特徴量を最適化した結果、「歯・口元の見た目に関心がありますか」という質問の回答予測に関わる因子として、「食事の中断」、「歯科の問題」といった口腔内の問題以外に「心疾患」、「脂質異常症」が挙げられた。このことから、口元の審美意識が高いことが口腔内のみならず全身への影響があることが考えられる。今後、前向きに調査を継続する予定である。
血液透析治療で作成されるシャント(動静脈吻合)部は狭窄の頻発部位である.狭窄の治療にはその早期発見が重要となるため,非侵襲かつ簡便な狭窄検査法の開発に向けて,シャント音(血流音)が検査指標として着目されてきた.しかし,これまでの検査法研究開発においては,実用化に十分な検出精度が達成されていない.そこで本研究では,シャント音を用いる狭窄検査法の開発に向けた,シャント音の発生機序の解明を目的とし,シャント血管モデル内流れを粒子画像流速測定法によって調べた.シャント音源候補として着目した渦度強度変動の計測結果をスペクトル解析した結果,狭窄によって400 Hz以上の高周波スペクトルが,3~5 dB/Hz程度増大することが分かった.狭窄によって高周波スペクトルが増大する点について,渦度強度変動とシャント音響に同様の傾向が認められたことから,狭窄下流の渦度変動がシャント音の発生に寄与することが示唆された.
地球上に4億年以上存続し、100万種にまで進化した昆虫は、種の存続に優れた生物である。ヒト社会を持続可能にするうえで、彼らから学べることがあるかもしれない。彼らの進化的繫栄は翅による飛翔機能の獲得が大きいとされる。この飛翔機能を保つ仕組みが、翅脈という脈状構造のネットワークによる体液輸送である。しかし、流体力学的にはヒトの毛髪よりも細い内径を持つ翅脈による体液輸送ネットワークシステムでは、管内摩擦に起因する圧力損失が課となる。この翅の機能性維持システムを持続可能にするためには、圧力損失を低減し、必要なポンプ動力を低減する必要がある。この課題を解決するメカニズムは、マイクロ流路を用いた化学センサーや熱制御装置から送電・送液ネットワークのような現代技術を省エネルギー化できる可能性がある。本稿では、ハエの翅脈ネットワーク構造による体液輸送の圧力損失低減について、我々が行った研究を示しながら述べる。