速度をもった流体が小孔(スリット,ノズル)から空間中に噴出する現象,いわゆる噴流現象は,自然界及び各種の広範な産業分野でみることができる.噴流現象は一見簡単な事象のようにみえるが流体力学の本質的な事象,すなわち自由,及び壁面せん断(境界層)流れやそれに伴う大規模渦構造の生成・盛衰,流れの付着やはく離現象,振動現象,流体騒音,など多くの事項を含みそれらの特性を明らかにすることは流体工学,熱工学の観点から重要である.本稿では,それらの内の幾つかすなわち,噴流現象の基礎的な事項として二次元及び三次元円形乱流自由噴流のフローパターンと速度分布,ノズル形状が噴流の流動特性に及ぼす影響,噴流における渦の生成と盛衰,などを示し,噴流の隣接壁面への付着現象(コアンダ効果)について述べる.次いで噴流現象の応用の幾つかについて,境界層制御,NOTARヘリコプター,超音速噴流のベクトル制御,などを取り上げて示す.
長方形噴流は非円形噴流の一つであり,楕円形噴流の長軸・短軸の長さの比であるアスペクト比の特徴と正方形噴流の角部の特徴を有する噴流である.長方形噴流内の渦輪において,ノズル角部から発生した渦糸は,その非一様曲率に伴う自己誘起速度の不均一性によって噴流断面の長軸と短軸が入れ替わる軸スイッチング現象が生じ,長方形噴流の広がりは円形噴流よりも大きくなる.そこで,長方形噴流の広がりを省エネの観点から受動的に制御を行う方法として,2枚の板をノズル内に挿入して噴出前に速度分布を有した噴流を形成させる「偏向板をノズル内に挿入する方法」、長方形ノズルの各辺から縦渦を形成させるための鋸歯状タブを設置した「鋸歯状タブをノズル出口に設置する方法」、ノズル角部付近の速度を増減させるノズル四隅に板を挿入した「テーパ三角形管をノズル角部に挿入する方法」による噴流の広がり抑制の可能性について本稿で紹介した.
噴流は様々工学的応用においてみられる現象であり,高性能な流体デバイスを実現するための噴流制御手法や技術を提案することは非常に重要である.噴流においては,初期流速分布の制御が最も一般的な手法である.ここで考慮されるパラメータは速度の絶対値と噴出角度であるが,工学的実現可能性を考慮すると,噴出角成分の最適化の影響と重要性を明確にすることは不可欠である.そこで本研究では,深層強化学習と流体シミュレーションを用いて,初期速度の噴出角成分の最適化がもたらす影響について調べた.その結果,噴出角成分を含めた最適化は,制御目的が巻き込み抑制に関連する場合においては顕著な改善をもたらすことが明らかとなった.一方で,制御目的が巻き込み促進に関連する場合では,噴出角成分は最適化において大きな影響を与えないことがわかった.
本稿では,古くから研究がなされてきたフリップフロップジェットノズルの純流体素子部分をマイクロアクチュエータである小型スピーカに置換した能動的フルイディックノズルを用いた噴流の偏向および伝熱特性の同時制御例について紹介した.主に,対向設置されたサブスロットのアクチュエータの振動位相差を利用した噴流の偏向角度と偏向された噴流の伝熱特性の同時制御の可能性について議論した.具体的には,噴流の偏向角度に及ぼすサブスロットのアクチュエータ間の位相差や振動数の影響について,二次元の粒子画像流速測定法による流れの可視化結果を基に解説した.さらに,衝突偏向噴流の伝熱特性について,赤外線カメラを用いた可視化実験を行い,その結果についても示した.
本研究では,カムテール翼型を縮流ノズル内に配置することで,噴流の中心軸上における流速を持続させ,気流の到達距離を延伸させる新たな気流制御手法を提案した.実験の結果,翼後端での剥離により後流に負圧領域が形成され,流れが中心方向に収束し,ブースト効果によって中心軸流速が増幅されることが確認された.この知見をもとに,医療用卓上型エアカーテン装置を開発し,PIVおよび熱線流速計により遮断性能を検証した.その結果,装置は人体から放出される呼気エアロゾルを効果的に遮断する性能を有することが示された.本装置は,問診や採血など対面距離が短い医療場面において,有効な感染対策装置としての応用が期待される.