真空技術
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研究室用真空炉 附.真空熔融法による金属中の酸素分析装置
村松 宏司
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1954 年 5 巻 4 号 p. 349-368

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抄録

高真空を始めとする不活性又は還元零囲気を使用して、且つ又各種の加熱法によつて, 金属及び合金を熔解する研究は今尚必要なこととして残されている。筆者は、酸素含有量の極めて少い特種金属及び合金等特電子工業特種金属材料, 耐熱性金属材料の製法の研究並びに小試作を行うことを目的として, 各種文献を参考にすることにより, 試験研究に適すると信ぜられる研究室用真空炉並びにその附属装置を設計試作した。
この炉は実験用であるため, その構成は複雑となり、加熱法の種類としては, 部品の簡単なる取換えにより, 誘導, 抵抗, 電弧による熔解又は高温処理を可能ならしめるようにし, 雰囲気としては, 10-5mmHgの範囲迄の真空操作が出来, 水素, アルゴン等のガスは任意の圧力及び流速をもって真空槽中を流れるようにし, 熔解容量としては, 誘導加熱熔解の場合は通常ニツケルで約2Kg, 電弧熔融の場合は内径50mmの水冷銅鋳型によって行うようにしてある。第1図及び第3図は夫々この炉の誘導熔解及び電弧熔解の場合における装置の外観の写真で.第2図及び第4図は夫々これらの場合の内部の模様を概略図をもつて示したものである。
又, この炉の附属装置の一つである金属中のガス成分分析装置は, 金属又は合金中にあってその特性を微妙に左右していると思われる酸素を主として定量し, この真空炉によって得られた金属又は合金を始め其他の場合のものも評価するために, この炉と同時に試作して来たもので, 欧米の諸処の研究室において夫々の目的のために作られてきたものに僅かの改変を加えたに過ぎないものである。これは, 真空熔融法によるガス分折装置の典型的形である。ガスを発生せしめる小真空熔融炉, ガス抽出並びに測定部, 抽出ガス分析部の三部分より成り, これらの部分は総て硬質ガラス製で, グリース, ゴム, 油は一切使用されず, ボンプ、カツトオフは総て水銀により, 炉の底部以外には擦り合せ部を全く使用しないようにして漏洩及び放出ガスを防止したもので, 試料熔融用小黒鉛坩堝は約2500℃位の温度で脱ガス出来るようにした装置である。第5図はこの装置の外観の写真で, 第6図はそれを解り易く示した図である。
以下研究室用真空炉につき, その構成, 試験結果の概略を記述し, 金属中の酸素分析装置については極く簡単に附記するに止めようと思う。

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