抄録
真空熔解の意義は一般にもよく知られているように、熔融金属と空気中の酸素窒素等との反応を避けることはいうまでもなく、さらに熔融金属中のガス成分や蒸気圧の高い不純物をできるだけ低減せしめ、その結果かなり純粋な金属または組成の確実な合金を得ることにあるのであるが、取扱う金属または合金の種類によつては、単なる真空のみの使用では折角の真空もその効果を充分発揮するにいたらなく、場合によつては真空は大して意義がないというような極論さえ生ずることもある。ここに改めて真空熔解における真空の用法を採りあげたのも、真空に対する不信等が起らないことを願うゆえにほかならなく、以下筆者の多少の経験と一般理論とにもとずき、真空が効果を発揮する条件または限界を考察することによつて金属熔解における真空の用法一般を検討し、併せて誘導熔解の実際問題にも言及したいと思う。