日本胸部疾患学会雑誌
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Human Chorionic Gonadotropin 産生肺癌の1例
二宮 清重松 信昭田中 健蔵
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1985 年 23 巻 5 号 p. 599-604

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抄録
従来より肺癌に内分泌産生腫瘍の存在することが知られている. 今回我々は異所性 human chorionic gonadotropin (HCG) 産生肺癌の1例を経験したので報告する. 症例は, 39歳の男性, 胸部レ線像にて右上肺野に air-fluid level を伴うレントゲン透過性低下の濃い陰影と両肺野の多発腫瘤影を認めた. 入院中 gynecomastia の出現を認めたため精査を行ない, その結果血中 HCG, HCG-beta, placental-alkaline phosphatase (placental-ALP), estradiol, estrone, progesterone の上昇を認めた.死後の検索により, 肺原発の大細胞未分化癌であった. 腫瘍組織描出液中においてもHCG, HCG-beta, placental-ALP, estradiol, estrone, progesterone は著明な高値を呈し, 更に酵素抗体法により腫瘍細胞にHCGの局在を証明した. これらの観察より, 我々は腫瘍細胞がHCGを産生することを示すとともに非内分泌腺由来の腫瘍による Steroid hormones 産生の可能性を示した. 更に現在までの報告例をもとに本症の治療と予後について若干の文献的考察を加えた.
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