真空
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プラズマCVD技術
坂井 秀男吉見 武夫
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1988 年 31 巻 4 号 p. 265-270

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抄録

半導体集積回路は, LSI (Large Scale Integration) から超LSIへと進歩してきた.集積度でメガビット, 微細加工レベルでサブミクロン時代に突入し, これを実現するためには, デバイス技術, プロセス技術で今までにも増しての技術革新が不可欠とされている.反面, 高集積化, 高機能化が進むと信頼性を確保することが難かしくなる.LSI 製造プロセスにおいては, 高集積, 高機能化と信頼性を両立させる事が重要課題であり, 結晶技術, 酸化・拡散技術, 薄膜形成技術, 微細加工技術と言った各要素技術とも, それぞれ努力が続けられている.
薄膜形成技術の代表として CVD (Chemical Vapor Deposition) 法がある.反応室に導入した材料ガスの化学反応により薄膜を形成させるもので, 材料, 装置, 条件によって各種の薄膜形成が可能であり最も有効な薄膜形成技術のひとつである.表1には, LSI製造に用いられている絶縁膜の種類と用途を示すが, CVD法はこの絶縁膜形成に利用される場合が多い.CVD法は, 膜生成時の雰囲気, 化学反応を起こさせるエネルギーの供給方法等により常圧 CVD, 低圧 CVD, プラズマCVD, 光CVD などに分類される.
プラズマCVD法がLSI製造プロセスとして登場したのは1970年代後半であり, CVD 法の中では比較的歴史は新しい.プラズマ放電を利用した膜形成法について, 1960年代には半導体デバイスへの適用可能性が理解されていたが, 現象が複雑であり, 適当な量産装置もなく実用化には至らなかった.このプラズマCVD 法がLSIの舞台へ登場するきっかけとなったのは高信頼チップパッシベーション膜の要求であった.従来の常圧CVD 法や低圧CVD法では出来なかった耐湿性, 耐汚染性, 機械的強度に優れるシリコン窒化膜の低温生成を可能とし注目を集め, 以後積極的に採用され適用範囲が拡大されていった.現在では, プラズマCVD 法はCVD 技術の分野で重要な地位を占めるまでになった.
ここでは, LSI製造プロセスを対象として, プラズマCVD技術について, 膜生成, 膜特性, 及び装置面から最近の話題も含めて述べる.

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