真空
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マイクロ波プラズマ化学気相成長による燃料電池用マグネシア安定化ジルコニア薄膜の作製
岡山 英夫久保 吏望月 則孝長田 昭義伊佐 弘
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1997 年 40 巻 8 号 p. 660-663

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抄録
有機金属化合物を用いたPECVDによって, SOFC用電解質の主材料であるジルコニア膜および安定化固溶材料であるマグネシア膜さらにMSZ膜を作製し, その結晶構造および膜組成について調べた結果, 以下のことが明らかになった.
(1) PECVD膜は熱CVD膜よりも, プラズマによる原料錯体の脱離・吸着反応の促進によって, 低温度で空隙のない緻密膜となり膜中への炭化物などの残留不純物のない膜であることが確認できた.
(2) 成膜圧力を0.067Paで基板温度を400℃としてPECVDによるMSZ膜を生成した結果, 均質で緻密な柱状構造をもつMSZ膜が得られた.生成膜を1000℃でアニールしても, 相転移のない正方晶と立方晶構造の混在した部分安定化ジルコニア (PSZ) 構造であった.しかしながら, MSZ膜はジルコニア膜中へのマグネシア含有量が45mol%とかなり多く固溶されていた.結果として, MSZ膜はPSZ構造の膜であったが, 高温度においても相転移することのない安定な結晶構造を有しているので, SOFC用電解質として充分に使用できるものと期待できる.
(3) 今後は, PECVDによるMSZ膜生成におけるマグネシア固溶含有量の最適化を図り, MSZ膜のイオン導電率とSOFCの発電特性との関連性について明らかにする.
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© 日本真空協会
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