真空
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高輝度放射光X線用多層膜フレネルゾーンプレートの開発
田村 繁治安本 正人上條 長生鈴木 芳生淡路 晃弘竹内 晃久高野 秀和香村 芳樹半田 克己
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2001 年 44 巻 9 号 p. 815-821

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抄録

X線集光素子の1つである多層膜フレネルゾーンプレート (FZP) の作製方法, 開発したFZPを利用した集光実験の成果および関連分野の世界の研究動向を紹介した.大型放射光施設SPring-8における集光実験ではトップレベルのデータが得られ, 多層膜FZPは特に高エネルギー領域 (>25keV) の集光にも有効であることがわかった.FZPは連続100時間以上の使用の間, 放射線損傷は観察されなかった.このことから, 高輝度放射光を利用した硬X線顕微鏡の実用化に大きく前進したと言える.測定された性能値を理論値に限りなく近づけるためには, 成膜工程を中心に一層の工夫が必要である.今後, ゾーン (多層膜界面) の平滑性を改善するために成膜条件の検討, 成膜装置の改良を引き続き行うと共に, 多層膜FZPの結像特性の理論的考察も行いたい.また, マイクロビームを利用して微小領域の元素マッピング, 化学状態のイメージングなどを行う予定である.
本報告で紹介した以外にも注目すべき新しい硬X線領域用の集光素子が最近相次いで発表され, 今後の進展が期待される.
集光テストを行ったSPring-8での利用研究課題の課題番号は, 1999A0091-NM-np, 1999B0080-CM-np, 1999B0103-NM-np, 2000AO160-NM-npである.

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