抄録
宮崎では冬期の粗飼料としてエンバク, イタリアンライグラスが栽培されているが, 両草種の乾物生産過程はかなり異なることが知られている。本研究では秋から冬にいたるまでの両草種の生育を成長解析法により比較した。
エンバク (Avena satiua L.前進) およびイタリアンライグラス (Lolium multiflorum Lam.コモン, タキイ種苗) を1990年9月8日に圃場に条播した。10月以降毎月掘り取り調査を行い, 以下の結果を得た。
1.両草種の生育の相違
茎数は1月下旬にはエンバクは5本イタリァンライグラスは11本となる。平均茎長は12月下旬にはエンバクはイタリアンライグラスより20cm大きくなった。
葉面積および乾物重はエンバクでは10月下旬以降に, イタリアンライグラスは11月下旬以降に増加率が大きくなり, 1月下旬にはエンバクはイタリアンライグラスの2倍となった。葉面積密度 (葉面積/平均茎長) が両草種ともイネに比べて節間伸長開始後も減少しない理由は, この時期にも葉面積の拡大が維持されているためと考えられる。
2.NAR, RGRと気象要因との関係
エンバクは温度および日射量の増加に比例してNARおよびRGRとも増加するが, イタリアンライグラスではNARは約18℃を最大としてそれよりも高くても, 低くても減少する。また, イタリアンライグラスのNARは日射量と負の相関関係があり, RGRは約12MJ/m2/日を最大として, それよりも大きくても小さくても減少する。
3.重回帰分析法によるNAR, RGRに対する気象要因の寄与率
エンバクのNAR, RGRに対する寄与率は温度が大きく, 日射量は小さい。イタリアンライグラスでは温度よりも日射量の方が大きい。
4.宮崎における両草種の生育
NAR, RGRと温度および日射量との関係からみると, エンバクの生育には宮崎の9月から12月の温度, 日射量は好適である。イタリアンライグラスの生育の好適な温度, 日射量の範囲が狭いが, 9月下旬から12月下旬までの期間, とくに、日射量が比較的好適な範囲で推移するので宮崎は栽培地として適していると考えられる。