2018 年 31 巻 1 号 p. 53-57
木曽川水系河川整備基本方針では、木曽川の河川維持流量として成戸地点50m³/sを設定している。これは先行農業用水に加えて、新規水利の制限流量となっていて、ダム開発の根拠になっている。その策定において木曽三川協議会が木曽三川水資源開発計画をまとめたときに下流の漁業に配慮して成戸地点基準流量50m³/sを設定したと説明され、利水の歴史を踏まえ上記河川維持流量が設定された。しかし、この説明の根拠資料はなかった。その後に発見された木曽三川水資源開発計画の資料によれば、上記成戸地点基準流量は舟航用水や工場排水による汚濁を希釈するためのもので、現在では河川維持流量の根拠にならないものであった。利水の歴史を踏まえて設定されたという上記河川維持流量は、水田面積の大幅減少により必要水量が減少している先行農業用水とともに、根拠不十分なものであった。