水資源・環境研究
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論文(論説)
  • ―滋賀県発ローカルSDGs「マザーレイクゴールズ(MLGs)」を事例として―
    法理 樹里, 平山 奈央子, 佐藤 祐一
    2024 年 37 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2024/07/24
    公開日: 2024/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
     滋賀県では2030年に向けて琵琶湖と琵琶湖に根ざす持続可能な暮らしのあり方を目指すためのマザーレイクゴールズ(以下、MLGs)が設定されている。MLGsとして掲げられている13のゴールの推進に向けた、環境配慮行動の意欲(MLGsの活動意欲)と実践(MLGsの活動実践)に、人々の幼少期の体験と環境保全に関する意識がどのように影響をおよぼすのか検討することを目的として、滋賀県在住者1,080名にアンケートを実施した。解析の結果、幼少期の体験として「学び」と「自然体験」が、「地域に対する関心」および「環境保全に対する関心」につながり,環境配慮行動としてのMLGsの活動意欲と活動実践につながる一連の行動モデルが明らかとなった。その中でも、「地域に対する関心」が、最も強く環境配慮行動の活動意欲に影響を与えていることが示された。さらに、「幼少期の自然体験」は、単体では環境配慮行動にマイナスの影響をおよぼすことも明らかとなった。
  • −琵琶湖と瀬田川洗堰の治水機能−
    中川 晃成
    2024 年 37 巻 1 号 p. 9-20
    発行日: 2024/07/24
    公開日: 2024/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    淀川水系の治水原理のひとつに、淀川本川の洪水防御のため、瀬田川洗堰の操作により、本川の流量ピーク時には琵琶湖に降雨を一旦貯留させ、この貯留水の放流を本川の流量低下後に行うとする考え方がある。そこでは、降雨時に琵琶湖の水位ピークが淀川本川の流量ピークに遅れるとする「淀川水系の特性」の存在が前提となっている。ここにおける琵琶湖・淀川水系の出水時の水理の理解には問題があり、また実際の水理のあり方とも相違することを指摘した。すなわち、実測された水文データからは、大規模出水時に琵琶湖水位の上昇の主要部分は淀川本川の流量ピークにむしろ先んじていることが確認できる。出水時の湖水位上昇が本川流量ピークに遅れて本格化するとの錯誤は、淀川水系流域委員会第1回琵琶湖部会(2001年5月11日)で河川管理者が提示する資料において認められ、そのまま現行の河川整備計画にも引き継がれている。
研究ノート
  • 50余年の業績を辿る
    梶原 健嗣
    2024 年 37 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2024/07/24
    公開日: 2024/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿は、水問題研究家・嶋津暉之の歩みを検討するものである。衛生工学を専攻した嶋津の研究は、工業用水に始まる。嶋津は工場における工業用水使用量の平均をベースに水需要予測を行うことを『工業統計表』に基づき批判し、石油危機以前から、工業用水の節水の余地・可能性が大きいことを示していた。そうした分析をもとに、嶋津は1980年代以降、渇水の人為的側面―ダム放流ルールの合理性への懐疑を主張していくようになる。  日本全国のダム開発をめぐる反対運動において、嶋津は数えられないほど多くの関わりを残した。そのなかでも、嶋津が最も深く関わったのは八ッ場ダムであろう。八ッ場ダム建設をめぐっても、嶋津は利水・治水双方で鋭い分析・批判を展開し続けた。    晩年の嶋津が繰り返し主張したのは、科学的で民主的な河川行政への転換の必要性である。合理的な根拠に基づき、透明性を確保し、公正な河川行政が展開されることを嶋津は求め続けた。嶋津は、戦後日本で最高峰の河川行政批判者である。
  • ―NPO法人「びわこ豊穣の郷」の会員アンケート調査の結果から―
    山添 史郎, 野田 浩資
    2024 年 37 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2024/07/24
    公開日: 2024/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、滋賀県守山市のNPO法人「びわこ豊穣の郷」を事例として、地域環境NPOの会員が、活動の持続のために何を重視するかという「活動持続の志向性」に基づく会員層の特性を明らかにし、地域環境NPOの活動の持続に向けたアプローチについて検討を試みる。 「びわこ豊穣の郷」の会員アンケート調査の結果について、会員の「活動持続の志向性」に基づき会員層を区分した結果、会員層は「活動発信重視層」「地域連携重視層」「世代継承重視層」に区分された。地域環境NPOにおいては、活動の持続に向けた課題を的確に把握し、「活動発信アプローチ」「地域連携アプローチ」「世代継承アプローチ」という3つのアプローチに取り組むととともに、これらのアプローチを一体的に進めていくことによって、水環境保全活動を持続的に発展させていくことができるであろう。
  • −江蘇省江蘇市の緑色江南を事例に
    呉 文睿, 平山 奈央子
    2024 年 37 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2024/07/24
    公開日: 2024/07/24
    ジャーナル オープンアクセス
    中国では、水資源の稀少化に加えて、工業化や都市化の進展に伴う水質汚染が深刻化している。このような状況を受け、中国政府は様々な施策を実施するとともに、行政以外の主体との連携も重視するよう変わりつつある。しかし、住民との管理権の共有を望まない地方自治体の姿勢は、環境団体の発展や独立性を阻害していることなどが課題として指摘されている(鄧ほか2023、相川2012)。本研究では、中国国内で最も長期間、工場排出汚染物質のモニタリング活動に取り組む社会組織である緑色江南に着目し、その活動概要と行政などとの関係性を明らかにすることを目的としてインタビュー調査を行った。その結果、緑色江南は一定の独立性を持って活動し、各地域の住民から信頼を得て中国全土で住民参加を拡大し、企業(工場)の持続可能な発展を促進していることが示唆された。さらに、行政との関係性は対立から協力に変化し、現在、地方自治体・企業(工場)・住民との信頼関係および互恵的な協力関係を構築していると考えられる。
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