水資源・環境研究
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選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集
  • 〜コモンズのガバナンス〜
    原田 禎夫
    2024 年 37 巻 2 号 p. 42-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/06
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  • 松田 治
    2024 年 37 巻 2 号 p. 43-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/06
    ジャーナル オープンアクセス
    里海という言葉と概念が、初めて提唱されたのは1998年である。その後、現在までの20数年間に、里海づくりの実践活動は日本全国に広まり、里海の考え方が多くの国内政策に取入れられたのみならず、日本発の新たな沿岸域管理手法Satoumiとして、国際的にも注目されている。里海の当初の定義は、「人手が加わることにより生物生産性と生物多様性が高くなった沿岸海域」であったが、近年では、「人が自然と調和的に暮らしている沿岸海域」などと解釈されている。しかし、人と海との距離は、埋立てなどの沿岸開発や社会の変化で物理的にも心理的にも遠くなり、人々の「海離れ」は大きな課題である。  瀬戸内海では、人々が最も海に親しみやすいコモンズとしての自然海浜は、開発で大幅に失われ、多くの人が暮らす都市域では極めて稀なものとなった。近年の多くの里海づくりでは、産・官・学・民など多様な連携による自然再生や地域振興が推奨されている。この背景には自然共生サイトや地域循環共生圏の構築もあるので、里海づくりは、沿岸域コモンズの復活に寄与することが十分に期待できる。
  • 三輪 信哉
    2024 年 37 巻 2 号 p. 48-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/06
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    沖縄県八重山列島の中心島である人口約5万人の石垣島(1島1市)の南東部に人口約1,600人の白保集落がある。白保集落地先には広大なサンゴ礁が広がり、そこに今から45年前、1979年に大型旅客機が離発着できる新空港建設の問題が起きた。その後、20年近く空港建設地を巡って混乱が続き、ようやく2000年に内陸部に建設地が確定、2013年に大都市圏や離島を結ぶ新空港が開港した。  白保の海は、集落の人々が生態系サービスを得る場であり、建設問題を契機にサンゴ礁は里海・コモンズとして捉え直されるようになった。そこに専門家が居住し、長年関わることで、サンゴ礁と社会が一つになった順応的管理が形成されてきた。本稿ではその過程を検討することで、人間−生態系が一つとなった順応的管理のあり方について考察した。
論文(論説)
  • キューバの水ガバナンスを事例に
    加治 貴, Fermín E Sarduy Quintanilla , 井上 真, 山根 春夫
    2024 年 37 巻 2 号 p. 54-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/06
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    本稿では、中央集権的な特徴のある水ガバナンスでのボトムアップアプローチ促進のための流域管理組織の機能について検討した。事例としてキューバのアルテミサ県とマヤベケ県の水ガバナンスおよびマヤベケ県流域委員会を取り上げた。同国ではボトムアップ促進の基礎となる制度があるが、加えて県流域委員会がその機能であるモニタリングと評価、調整、市民参加、知識生産を強化、実施することが重要である。モニタリングと評価は関係者の共通認識の醸成に必要である。県と市流域委員会がモニタリングと評価を基に共通認識を持ち調整を図ることで、市レベルからの参加を促進できる。流域の観点からの情報共有は市民参加の底上げにつながる。これらの実践とその振り返り、改善は知識生産の機会となり、組織としての社会的学習により機能が強化される。ボトムアップアプローチの普及には時間が必要だが、流域管理組織の機能強化はその促進のために必要不可欠である。
  • 巨椋池の遊水機能とヲ丶フルラート堤
    中川 晃成
    2024 年 37 巻 2 号 p. 65-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/06
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    デ=レーケは、来日後3年に満たない1876(明治9)年7月に「宇治川修繕目論見」とする巨椋池を含む宇治川水域の改修計画を立案した。その文面は『淀川百年史』にも翻刻され既知であったが、そこに言及されるもののこれまで不詳であった付図を、淀川資料館が所蔵する河川図のうちに見出した。このことにより、当該目論見の提案がより具体的に判明する。デ=レーケの改修計画は、当時実施していた測量と水文観測に基づき宇治川水域における巨椋池の構造と機能を認識した上で、それを治水に充当しようとするものであった。すなわち、「ノードペール(最極水量)」と呼ぶ河水位を定め、これを超えない出水は宇治川河道で全量流下させ、それ以上であれば超過分だけを新たに設ける「ヲ丶フルラート(越流堤)」を通し巨椋池に一時貯留させる計画である。しかし、この目論見は実現されることなく、逆に、1896(明治29)年からの淀川改良工事においては巨椋池の遊水機能の排除を目的とする河道改変が施工された。
研究ノート
  • NPO法人「びわこ豊穣の郷」の会員アンケート調査の結果から
    山添 史郎, 野田 浩資
    2024 年 37 巻 2 号 p. 74-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/06
    ジャーナル オープンアクセス
    地域環境NPOにおいては、担い手の確保と世代交代が課題となっている。本稿では、滋賀県守山市のNPO法人「びわこ豊穣の郷」を事例として、地域環境NPOの会員を活動への参加の程度に基づき、「中心層」「活動参加層」「活動支援層」に区分し、地域環境NPOの会員の入会理由がどのように変化してきたかを明らかにし、担い手の確保と世代継承の方向性について検討する。  1999年、2007年、2015年、2023年の4時点で実施した「びわこ豊穣の郷」の会員アンケート調査の結果について、会員層ごとに入会理由の変化を分析した結果、すべての会員層において、「びわ湖の水質と環境への関心」が共通する基底的関心となっていた。また、2023年調査では、「ホタルなど水辺の生き物への関心」が大きく増加していた。「中心層」「活動参加層」においては、「地域の身近な川や水路の環境への関心」が高く、「ホタルなど水辺の生き物への関心」が特に高くなっており、会員全体や「活動支援層」においては、「住民主体の環境保全活動への関心」が増加傾向にあった。
  • 河川行政との対峙の記録
    梶原 健嗣
    2024 年 37 巻 2 号 p. 81-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/06
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    本稿は、水問題研究家・嶋津暉之の歩みのなかで、その運動的な側面を振り返るものである。衛生工学者・嶋津暉之が工場用水について研究する時、そこには、「本当に工場用水が要るのか。水源開発は必要なのか」という問いが貼り付いていた。すなわち、嶋津の問い・考察はすぐれて実践的なものである。  衛生工学者・嶋津の予想どおり、石油危機以後の水源開発には「過剰開発」という問いがちらついていた。そうした全国各地の水源開発と嶋津の関わりは、琵琶湖総合開発の差し止め請求を皮切りに、亡くなる直前まで多数に及んだ。裁判における専門家証人となったものでも、琵琶湖総合開発のほか、徳山ダム、八ッ場ダムなど多数に及ぶ。また裁判外の関わりでも、渡良瀬遊水池、倉渕ダム等多数に及ぶ。法定の内外における嶋津の戦いもまた、戦後河川行政史を裏面から浮かび上がらせるものである。
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