木材保存
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研究論文
脂肪酸亜鉛を浸潤標識剤とする深浸潤処理材の呈色方法の改良
池田 学栗﨑 宏茂山 知己須貝 与志明
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2016 年 42 巻 5 号 p. 259-266

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抄録

アゾール・非エステルピレスロイド化合物系油溶性薬剤(AZE)の深浸潤処理材の浸潤度試験では,浸潤標識剤として添加している亜鉛化合物を0.1%のジチゾンで赤く呈色させることによって浸潤領域を判別している。しかし,処理材の養生時間が2週間を超えた場合,経時的に浸潤領域の呈色が不確実になる場合がある。本研究では,AZE の深浸潤処理材の浸潤度試験方法の改善を図った。画像解析処理と蛍光X 線分析の結果,養生により発色が不鮮明になった部分にも亜鉛は存在していることが確認された。溶液での発色試験の結果,過剰量のジチゾンはジチゾン-亜鉛錯体の赤色の発色を不鮮明にすることが明らかになった。これらの結果をもとに,異なる濃度のジチゾン溶液を用いた呈色試験を実施した結果,0.02~0.05%のジチゾン溶液は,不鮮明になった薬剤浸潤領域を鮮明に呈色できることを明かにした。また,0.1%ジチゾン溶液を塗布した場合は,直後に水を塗布することにより発色を鮮明にすることができた。これらの方法により,AZE の深浸潤処理材の浸潤度をより正確に測定することが可能となった。

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© 2016 公益社団法人 日本木材保存協会
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